2014年10月28日火曜日

金利オンリー住宅ローン

正しい借金があるのだとすると、借りたお金を使うアテがまともで、その「使うアテ」の対象を楽しむ期間と返済期間がマッチしていて、かつ、返済が平準化しているというものでしょうね。典型は住宅ローンで、一部の分割払いはそれに近い性質を持っているのかもしれません。

ということは、資産価格が上昇する(あるいは下がらない)ことを前提におカネを借り、元本が減らないというのは相当避けるべきということになります。もちろん程度問題ではあるのですが、そのような借り方はたいていの場合トラブルの元であって、それはLBOであっても、不動産担保融資であっても同じです。

という話を、FT紙のこの記事を見ていて思いました。話としては住宅ローンで金利オンリーのものがそれなりに広まっている話なのですが、見ていてすごいなと思うのは、一部の債務者は、自分の借りている住宅ローンが金利オンリーであることに気づいていなかったというところでしょうか。

集中か多角化か

会社って難しいですよね。いろいろなことをやっているほうが株主にとってリスクは小さくなるものの、評価が難しくなって価値が下がるということもあり得るんでしょうね。多角化がもてはやされたのって20~30年前でしょうか…。時代は機敏さを求めているということなのかもしれません。

NYT紙のディールブック・コラムによると、マジソン・スクエア・ガーデン社がスポーツ・チーム(バスケット・ボールのニックスとアイス・ホッケーのレンジャーズ)部門を分社化することを検討中とか。日本のいろいろな会社も見習ってほしいと思ったりもしますが、もともと日本の株主は企業価値の向上とかほとんど興味がないので、こんなことはなかなかおこるまいという気もいたします。

2014年10月25日土曜日

プライベート・エクイティ・ファンドと流動性

プライベート・エクイティ・ファンドは「ファンド」という名前はついていますが、実際には投資組合であって、かつ、組合出資は「確約ベース」、つまり、必要なときに必要な金額を(上限に達するまでは)払ってねというやつです。発想自体は、株式の「引き受け」と出資の履行と同じ感覚ではあるのですが、投資組合の場合は確約(引き受け)期間が長いんですね。なので、通常の「投資」という感覚には馴染まないのはもちろん、投資家の側では、形式的なだけではなく、実質的にも管理が難しいという点があります。それもあって、米国で401K(確定拠出型ですね)の対象にはなりにくいと。

で、スイスのパートナーズ・グループっちゅうところが、それを打ち破ろうと。具体的には、四半期ごとに換金できるPEファンドと、上場PEファンドを中心に投資するそうです

ただ、結局、流動性と長期的なリターンは基本的には反比例するわけで、そんなに流動性がほしければPEに投資するなというか、流動性を求めたら上場株式と同じリターンに収束するのでは?という気もいたします。ま、それだけPEっていう世界が謎に包まれていて、みんなが投資したがっているということなのかもしれませんけれど。

恥知らずな宣伝

こんな本出しました。

http://www.kunimoto.co.jp/contents/accounting/s_lawyers.html

買ってください。

「借金返しまへん」宣言

私も、基本的にはデフォルトは早くすべきだという考えなので、このような考えには大賛成です。

ABSなのに、実質はオリジネーターの担保付社債

ムーディーズが「消費者ローン債権 ABS の格付手法」というレポートを出していて、そこには「非リボルビング型消費者ローン債権を裏付けとする証券化商品に対する、ムーディーズのグローバルなアプローチについて解説するもの」と書いてあるのですが、なぜか「付録 4: 日本の個品割賦債権案件のキャンセルリスクおよび既払金返還リスク」というのと「付録 5:日本の消費者ローン債権 ABSにおける過払金返還請求リスク」というのがありました。

付録4のほうはさして面白くなかったのすが、付録5のほうは、結局、過払いの可能性がある債権を対象に証券化したら、そのABSの格付けはオリジネーターの格付けに拘束されるという趣旨でした。カバード・ボンドっていうことですよね…。ま、当然といえば当然の反応なのでしょうけれど。

2014年10月24日金曜日

市場変動そのものが資産クラス?

先週、米国債利回り(≒価格)が大きく変動したことを米投資銀行業界が問題にしていて、その背景には規制が強化されていることがあると主張しているようですが、それはちゃうんじゃないのというがFT紙のアルファビル欄に出てました。要は、米国債なんてもともとすごい流動性が高いんだし、電子取引も以前からあるんだからということのようですね。

同じアルファビル欄に「今や、世の中みんながボラティリティの売り手」という話も出ていて、これは非常に好感度が高いというか、要するに、ボラティリティが上がると困る人というのが世の中にたくさんいて、それを意識するか否かはともかくとして結果としてボラティリティの売り手になっている人がたくさんいるということです。たとえば、日本で盛んに売られている仕組債はオプションの売りが組み込まれているという意味で直接ボラティリティの売りですし、カバード・コール投信も「カバード・コール戦略」とは言えオプションの売りをしているわけですから、やはりボラティリティの売り手に回っているわけです。

さらに言えば、ジャンク債投信やバンク・ローン投信も同じで、クレジットという資産クラスはもともとボラティリティの売りという性質を持っている(儲けは少し、損は大きいというのはオプションの売りの性格)んですよね。オプションの売りは危険だというのが最高裁H17判決の意味なんだとすると、みんなダメじゃん、ということにもなりかねませんが。

2014年10月23日木曜日

ファンド・マネージャーの腕

ファンド・マネージャーに銘柄選択や、特別な運用手法の腕などあるはずがないというのが私の基本的な考えなのですが、FT紙に面白い記事が出ていました。

それによると、本当に腕のいいファンド・マネージャーがいたら、皆がその運用手法を真似するはずであり、そんなファンド・マネージャーがいないということ自体、運用の腕などないという証拠だというのです。なるほどですね。

ただ、毎月分配型とか、バンクローン投信とか、カバードコール投信とか、運用の腕とは関係ないものの、つねにコピーキャットが出てくる日本の業界はどう考えるのでしょうか…。FT紙が日本の投信業界に興味がないことは明らかなので、追加の記事を書いてくれという気はいたしませんが。

2014年10月19日日曜日

有権者身分証明書

アメリカで、投票に際して身分証明書を提示せよというとき、写真付きのちゃんとしたやつじゃなきゃだめよん!というのを共和党側が押していて、それは形を変えた差別だ!というのが民主党側の一般的な主張らしいのです。なぜなら、ちゃんとした身分証明書を持っているのは金持ちが多く、黒人やスペイン系の住民は相対的にそのような身分証明書を持っていないケースが多いからだとか。

11月の中間選挙でテキサス州が身分証明書の提示を義務付けることにしたのに対して連邦政府側が抗議していたらしいのですが、結局、連邦最高裁が当面の続行を認めたそうです。3人が反対ということは、通常の5人対4人とは異なるんですね。

2014年10月18日土曜日

嗚 ジャンク債

FT紙を見ていたら、株式だけでなくて、ジャンク債も結構売られたというが出ていました。われわれからすると、株式とジャンク債がある程度連動して動くというのは常識の範疇なのですが、ジャンク債投信とか買っている日本の投資家さんはどこまでご存じなんですかね。

そういえば、最近あまり話題にならなくなりましたが、バンクローン投信の投資先って、ジャンク債の発行会社と基本的に同じなんですよね。ま、それ自体も、我々プロにとっては常識、素人さんにとっては聞いてびっくりという話なのかもしれませんが…。

2014年10月1日水曜日

ABS 購入と中央銀行

-- Asset-backed securities: Back from disgrace - http://www.ft.com/cms/s/0/7d9d25f0-4729-11e4-ba74-00144feab7de.html

日本で同じような話があったときも思ったのですが、そんなまどろっこしいことしないで、銀行つくっちゃえばいいんですよね。で、銀行からすべての資産を10%ずつ買うとか。変な仕組みを作ると必ずレギュラトリー・アービトラージが出てきますし、また、フェアな資産買い取りとか債務者審査はありえませんから。

本質的には、資本注入や保証でも同じことですが…。あとは、企業と名が付けば、バランスシートの規模に応じて低利で政府が融資するぐらいですかね。

自分で自分の…

-- Private equity managers face growing competition for deals - http://www.ft.com/cms/s/0/8d29f282-47b5-11e4-be7b-00144feab7de.html

プライベート・エクイティの大手投資家が、ファンドを通さず、直接投資しているという話。フィーが高いという理屈はわからないわけではないものの、本文にもあるとおり、自分で自分の投資対象を狭めているという感もありですね。