2010年12月26日日曜日

癖になる

NBCでやっている30 RockをiPodで見ていたのですが、最初はなにが面白いかわからなかったのが、だんだんと慣れて面白くなっていくのがわかりました。ただ、慣れて面白くなるというのは、少し違うというか、やはり、Burn Noticeとか、White CollarとかLeverageは最初から面白かったわけで、それはNCISやMentalistも同様で、それを考えると、ちょっとどうかいなあーとも思っています、30 Rockの古いやつ買うの…。Weedsも面白そうですよね。主演の女優さん(West Wingで一時期ジョッシュのガール・フレンド役だった人ですよね?)もいいし、シリーズ6くらいまで行っているんでしたっけ? デス妻はちょっと下品になったので、第2シリーズの途中から敬遠してますが…。

こんなに間を空けて

 あまりブログとしての機能を果たしていませんね…。Twitterにはたまに書いているのですが…。

 宣伝ですが、専門分野の中でも特に専門としているところの、ある程度専門家向け書籍を出版していただくことになりました。一般受けする分野ではなく、単価も高いのですが、たまにはこういう仕事もしたいものです。

 住宅分野が続いていた一般向け書籍も、今度はコンビニ展開も視野に入れた経営分析本を出してもらえることになりました。こちらは一般受けも狙っていますので、よければ読んでみてください。

2010年11月28日日曜日

LOST

毎朝・毎夕、電車の中でiPodを使ってロストを見ているわけですが、やっとシーズン6に突入しました。だんだんと話が素っ頓狂になってきて、キャラクターの面白さに依存する話になってきたような気はしますが、ま、それはそれでよしということなのでしょう。ジョッシュ・ホロウェーはこんどジェームス・ボンドものに出るんでしたっけ? マシュー・フォックスとかもそうですが、40代前半ってまだまだ若いですよね。頑張んなきゃ…。

すっかり更新をさぼってしまい

 ま、いろいろと言い訳はあるわけですが、サボっていたのは事実でして。

 それにしても、業者って業法にはそれなりに目ざといものの、民法の不法行為責任には無頓着ですよね、ほんと。どの業界もそうだと思いますし、日本はアメリカと違って「まず訴える、それから話し合う」というカルチャーもないので、その分、消費者の立場は当局が守るというほうが制度的には適しているのでしょう。しかし、結局それって裁量行政になっているわけで、でも一方で消費者がないがしろにされていいわけでもなく、悩みは深いです。

 消費者金融問題とも絡むのですが、訴訟を起こしやすくする、あと、自己破産・個人民事再生のトラウマを軽くする、これを政策課題として真剣に考えてほしいと思っています。

2010年10月28日木曜日

日銀の資産買い取り

 格付けをアテにするのは時代に逆行しているのでは?という揚げ足取りはさておき…。
 1年から2年の債券を購入することで、本当にリスク・プレミアムの縮小に寄与するのかは、正直、疑問と言わざるを得ないでしょう。トリプルBまで降りていることは評価すべきなのでしょうが、実際には、トリプルB格で1年から2年の債券となると、リスク・プレミアムがほとんどないか、もしくは、リスク・プレミアムがべらぼうに高い、つまり、格付けを市場が信じていない銘柄かのどちらかである可能性が高いのではないかと思います。
 やはり、本質的には日銀が別途ノンバンクを設立して、一律に中小企業に融資をするというのが、いちばん趣旨に沿っているんですよね。それができないのは日銀さんのせいではなくて、政府の問題だと思いますが…。

消費者金融ABS

 ムーディーズさんが、個人向け無担保融資ABSへの総量規制・武富士倒産への影響についてコメントを発表しています。折り返しに応じない例が増えているので、今後のデフォルト上昇に要注意というのが簡単なまとめになります。実際、武富士さんの会社更生手続き開始申立てによって、過払い、もしくは、過払いには至らなくても実際の元本はもっと小さいということに気付いた人たちは多いわけで、ABSにまったく影響がないというのはムシがいいはなしなのではと思う一方で、興味半分ならともかく、実際に、ABSの投資家に影響が出るような法律構成ができるのかどうか、それはそれで疑問だわいなと思ったりもします。
 実際、利息制限法を越える部分のおカネについては、信用度の分析上は見ていないだけであって、おカネに色はないわけで、実際には、ABSの投資家にも回っているはずです。おカネに色はないので、過払いで持ち出しになっていない限り大丈夫という話もあって、それはそれで正しいのですが、となると、実は、過払いが発生しない債務者が集団で元本引き直しを要求してくる方が怖いんですよね。
 結局、弁護士のかたがたもおカネのためにやっているわけで、単なる引き直し計算は手数料が稼げないので受任しないのでしょう。しかし、正義のためなら、そちらを手掛ける弁護士の人がいても面白いんですけどね。

2010年10月22日金曜日

銀行資産の証券化(米国)

 米国では銀行が破たんするとFDIC(連邦預金準備公社)が管財人として入っていくのですが、日本と違って「更生法」とか「再生法」とは別の枠で運営されるんですね。で、銀行が資産を証券化した場合に、果たしてFDICが否認をするかどうかがキーになります。
 最近、FDICが発表したセーフ・ハーバーのルールがあって、S&Pがそれを解説したのを読んでいたのですが、要するに:

1) 会計上の消滅の認識があって、証券化ルールにも合致 → 否認しない
2) 会計上の消滅の認識はあるが、証券化ルールに合致しない → 否認しにいく
3) 会計上の消滅の認識はないが、証券化ルールに合致 → 担保付債権者として保護
4) 会計上の消滅の認識はなく、証券化ルールに合致 → 単なる担保付債権者として扱う(保護しない)

ということのようです。証券化ルールにはドッド・フランク法で定められたリスク保持のほか、情報公開、個別資産レベルの情報管理といったものが含まれます。

2010年10月13日水曜日

不動産

 新生銀行の本店ビルはモルガン・スタンレーのファンドが所有していて、来年のなるとローンの期限が到来するそうですし、銀座のティファニー・ビルについては、既にゴールドマンのファンドが諦めたとFTに出ていますね。リファイナンスの怖さよりも「期間の短いローンは安全」という、金融の基本からは誤った認識を持ったローンが多いことが原因のようですが…。
 記事も「日本で不動産の投げ売り期待高まる」と書いてある一方で、実際には、銀行が競売しないし、市況は底打ち感が出ているので誰も投げ売りはしないかもという、内容的にはバランスのとれたものではあります。ま、どうなることやら…。

2010年10月9日土曜日

倒産の定義

 一般のかたがたは〝倒産〟って聞くと、会社がなくなってしまうと思うのでしょうね。でも、会社更生法や民事再生法が倒産手続きであることも一般用語としては正しいはずで、そうでない限り、帝国データバンクや東京商工リサーチの〝倒産速報〟も意味がないですよね。しかも、民事再生法のおかげで、最近の倒産はほとんどが民事再生であって、会社が簡単に破産はしないで、存続することが多いと思います。
 ま、倒産という言葉が刺激的なのは分かるので〝法的手続きの下で経営再建中〟とでも言うのでしょうか? でも倒産なんて、〝敗戦〟ぐらいの意味しかなくて、巨人が3位になってしまったとか、その手のレベルの話でしかないとも思いますが…。

2010年10月7日木曜日

ノーベル賞

 これだけノーベル賞受賞者を輩出している国なのに、その受賞者の方が「若者よ、海外に出ろ」とおっしゃるというのは、いったいどんな国なんでしょう。この国をよくするために、もっと、私たちみんなで真剣に考えたほうがいいですよね。
 金融的には、確かに、人口減少局面にある中で高度成長が見込めないのは分かるのですが、大人の国になるということは、若い国に資本を輸出する義務があると思うのです。中間業者の変な思惑で、為替で妙に遊ぶのではなく、そのような国の現地通貨建ての株式に正々堂々と胸を張って個人投資家が投資できるようなプラットフォームを作ることが、今、金融業界に求められていることなのではないでしょうか。
 もちろん、政治家に、もっとデフレ退治の重要性を分かってもらうことも必要なのですが…。

実質実効為替レート

 実質実効為替レートの議論のうち、貿易量で加重平均するというところは、なんとなかみなさんすぐに分かると思います。よく分からないのは〝実質〟つまりインフレ率の影響のところでしょう。
 日本と米国の2国しかないとして、1ドル=100円であったとします。1年後やはり1ドル=100円であったら、名目実効為替レートは1ドル=100円のままです。(いま、日本と米国しかないので、貿易相手は米国しかいません)。
 ここで、同じ時期に、日本が2%のデフレ(年間2%物価が下落)、米国が2%のインフレ(年間2%物価が上昇)したとしましょう。日本では、100円だったものが98円になります。一方、米国では1ドルだったものが1ドル2セントになります。その結果、インフレ率を加味すると、本来は1ドル=96円07銭になっていて、実質の為替レートは均衡します。円の購買力が上がっているからです。
 ところが、上で見たとおり、為替レートは1ドル=100円のままです。つまり、本来1ドル=96円07銭になっていなくてはならないのに1ドル=100円になっていますから、円は過小評価されているのです。指数化すれば、実質実効為替レートは100から96.07に下がっている(これは下がっているから円が弱くなっている)ことになるのです。
 何度か申し上げていますが、私は、政策目標はデフレ退治にすべきだと思います。日銀さんがこのことを声を大きくして言えないのであれば、政治家が言わなきゃいけないのではないでしょうか。もちろん、私が間違っている可能性はありますが、デフレを解決すれば、景気は自然によくなると思っているのは私だけではないはずです。

2010年10月6日水曜日

金利の変動

 たまたまなのですが、先月と今月とで長期・固定の住宅金利を比較する機会があり(って、自分で借りるわけではないのですが)、今月は先月と比較すると0.2%くらい住宅ローン金利上昇しているんですよね、長いほうは。ところが、昨日・今日でJGBの利回りは急低下…。借りる人は来月借りたいでしょうね。ま、今から申し込めば来月以降になるということなのでしょうけれど。
 近著(扶桑社さんの「家を買う時必ず!買う本」)にも書きましたが、変動金利で借りて、手前の金利が安い分、一所懸命貯金して内入れをする。これにますます最適な環境になってきたとも言えそうです。インフレ率が安定して1%になるまで、そして、瞬間風速では2%も許容するといいながら、ゼロ金利を継続すると日銀さんおっしゃっているわけで、そりゃ、変動金利型で借りてても、しばらくは金利あがりませんよね。ただ〝しばらくは〟という表現がポイントなのも確かです。将来の負担を避けるためには、仮に金利が上がりそうになくても、やっぱり内入れに励みましょう。

日銀さんの仕事ではないのでは

 昨日からいろいろ考えているのですが、日銀さんがご苦労なさって、おやりになろうとしていることは、本来的には財政政策の役割のような気がします。今日、不動産関連株が上がっているとか、REITがこれで活性化するとかという話は、結局一部の人の損失が先送りされる、あるいは、これまでたまたま我慢できた人が得をするということになって、なんか不公平感があるんですよね。
 私たちひとりひとりが消費をしない限り、景気なんてよくならないと思いますし、仮に日銀さんの政策が有効で〝商業用(賃貸用)〟あるいは事業会社が保有する不動産価格が上昇すれば、確かに究極的には国民にはプラスになるかもしれませんが、本当の意味で景気がよくなるというか、そういうのとは違うと思うのです。
 住宅ローンを減税や補助金で実質マイナス金利にする、あるいは、マイナス金利で公的金融機関が融資をするというのもひとつの手ですよね。あと、やはり逆消費税というか全品目エコポイント(といったら〝エコ〟の意味はないですが)で、消費に奨励金を出すとか…。財源ですか? それを考えると苦しいですよね。となると、反対方向の預金税・現金税になるのですが…。
 ま、結果として景気がよくなれば多少の歪みはやむを得ないと思うのかもしれません。いずれにせよ、日銀さんが思い切ったことをなさったのは確かなんですし。

資産価格の上昇

 それにしても、日銀さんが資産価格の上昇を意識するというのは、結構画期的ですよね。財政政策と金融政策とがかみ合っていないのが不安は不安ですが。
 たとえば、資産のリスク・プレミアムを下げるというのは、資産保有コストを下げるのと、マクロ的には同じというか、結局はアナウンスメント効果でしかない(日銀が日本中の不動産・株・住宅ローンをすべて買うわけにはいかない)ので、であれば、たとえば固定資産税の撤廃、株式保有に対する補助金、住宅ローン減税の大幅拡大で実質マイナス金利にする、というのと、実際の効果は同じわけです。
 ただ、よーく考えてみると、資産価格の上昇というのはインフレと同じわけで、インフレを起こしたいんですよということがポイントですよね。ですから、実質的なインフレ・ターゲット導入である1%というところの意味が大きいと思うのです。
 それにしても、資産価格が上昇するというのは資産を持っている人にとってはプラスですが、そうでない人にとってはあまり恩恵はなく、景気が好くなることによる間接的なメリットしかないんですよね。ま、しょうがないのかもしれませんが。ただ、であれば、やはりインフレを目標にすべきで、そうであれば、すくなくとも(消費者金融を含め)借金をしている人の実質的負担が減りますよね。

リスク・プレミアムへの働きかけ

 名目金利をこれ以上下げられないので(←私には異論がありますが、それはさておき)、リスク・プレミアムを下げることで景気を刺激したいというのは、分からない理屈ではありません。ただ、物品税同様、資源の偏在を招くおそれがあり、それを、選挙で選ばれていない中央銀行がどこまでやるのかという点については慎重さが欲しいとは思います。もちろん、なにもやらないのよりはいいという気持ちには変わりありませんが。
 たとえばREITを購入するという話ですが、ただでさえ私募ファンドの受け皿で市場実勢よりも高く購入している物件が多い可能性のあるREITの価格を上昇させようというのは、正直違和感があります。ABSの購入にしても、ABSを発行している人たちはいいですが、そうではない人たちの資金調達に波及するのかというと、私は懐疑的なのです。ETFの購入にしても同じで、ま、TOPIXや日経平均のETFであれば、ETF自体にはあまり恣意性はなかろうと思っていますが、じゃあ、非上場企業の株式に対するリスク・プレミアムはどうしてくれるの?という疑問は払拭できません。
 結局、完璧な答などないことはよく分かっていますし、カネを世の中に流したい(中央〝銀行〟ですから)という気持ちもよく分かりますが、リスク・プレミアムに働きかけるのであれば、J-REIT指数デリバティブの買い、TOPIXの先物買いのほか、なんらかの基準(おそらくは現在のバランス・シートの規模=資本金+借入金の額)に連動した一律の中小企業向け融資、などが目的にかなってるはずです。
 ま、私の思いつくことなど、当然日銀さんも分かっているでしょうが…。

金融政策

 日銀さんについては、失敗したときの批判が怖くてなにもなさっていないのではないかというのが私の個人的な感想だったので、その意味では、日銀さんとしては今回のは踏み込んだ政策なんだろうと思います。個別には言いたいことはいろいろありますし、日銀さんがご自身で思ってらっしゃるほど画期的だとは私は思わないのですが、「なにかをやらなくてはならない」という危機感があるのはいいことだと思います。
 今回、あまり画期的だとは言われていないけれども実は画期的ではないかと私が思っているのは、実質的にインフレ・ターゲットを導入したことでしょうか? 期待インフレ率が上がればその分実質金利が下がって景気刺激策になりますから、もっと「1%」という数字を表にだしてもいいんだと思いますよね。だって、物価上昇率が1%で名目ゼロ金利だったら、実質金利はマイナス1%ですから。個人的には(以前AERAのアンケートにもそう答えましたが)日銀当座の管理料を含め、固定資産税と同様の現金・預金税を導入すべきだと思いますが…。

2010年9月27日月曜日

消費者金融最大手

 報道が事実だとすると、会社更生法ですか。メインバンクがなかっただけに資金調達で、証券化・社債などいろいろな権利関係が錯綜していそうですね。
 過払い関係もどうなるのか興味があるところです。業界最大手だったわけで、過去の、たとえば完済し終わった人がみんな請求したら大変なことになりますよね。一般論としては、返済に困った人が過払い請求をすると思われていますから、報道のとおり、その債権がカットされることはいかがなものかという議論があるのですが、完済した人たちは、なんぼかでも戻ってくれば儲けものですから、債権カットされてもへいちゃらなのではないでしょうか…。
 まだ公式のニュースは出ていないようですが、注目です。内田有紀さんも債権者だったりして…。

2010年9月23日木曜日

暑さ寒さも

 ほんとうにお彼岸までだといいのですが…。毎日書くつもりだったのですが、遅めの夏バテに長いこと苛まれ、単行本をやっつけるのがやっとの日々が続いておりまして…。
 KKRが社債を発行して、シングルAとかの格付けが付くようです。KKRのファンドが融資を受けるのではなくて、ファンドの運用会社のところでの借り入れですが、ざっと見たところ、将来の投資回収資金を、先に現金化してしまおうということのようです。上場していますから、配当するための現金にしたいのかもしれません。

2010年9月10日金曜日

ペイオフ

 当局としては取り組みやすい先だったことは間違いないですね、初のペイオフとしては。6000億円があまり影響ないと言われると、じゃあ国民銀行はなんだったんだとか、そもそもの90年代の金融危機を誘発した信組破たんは、という気もしますが、あのときはあのとき、今は今なのかもしれません。
 最近は、銀行危ないランキングも流行りませんから、10数年前のように、一部の銀行から預金流出の危機にはならないとは思うのですが、一方、10数年前は信組だったことを考えると、予断は許さないということですね。
 それにしても、民事再生法がここまでポピュラーな法律になるとは…。

2010年9月9日木曜日

投機的格付け企業のデフォルト率低下

 昨日付けのムーディーズの発表によると、ヨーロッパの投機的格付け企業のデフォルト率(直近12か月で集計)は8月に4.8%と、前月の6.2%、昨年同月の9.6%から大きく下がっています。世界的にも、8月は5%と7月の5.5%、1年前の12.3%からすさまじく下がっているようです。

2010年9月8日水曜日

ファイナンス・リース

 今日、ムーディーズから予備格付けが附与された「トラスト・モミジ」では、対象債権は「メンテナンス特約付きのファイナンス・リースのうちのファイナンス・リース部分」という読みかたをするようです。メンテナンス特約の履行義務を信託に移転することは、技術的には不可能ではないものの実際には難しいわけで、無理やり「ファイナンス・リース部分」と「メンテナンス特約部分」とを切り離すという考えかたをしているのでしょう。
 講学上、オリジネーターであるリース会社が倒産し、メンテナンス義務を果たせなくなると、その反対給付としてのリース料支払いをしなくてよくなる、つまり、倒産隔離ができなくなるという考えかたもありますが、自動車のメンテナンスが一般的に提供されているサービスなのであれば、その心配は不要というか、ユーザーの側でも、自動車の価格の分と、メンテナンス義務の分を合理的に区別しているということになるでしょう。
 実際には、メンテナンス義務の承継者も、バック・アップ・サービサーを見つけるトリガーにひっかかってからではあるようですが、見つけるみたいですし、実務的には大丈夫なんでしょう。
 しかし、コントロールド・アモチって、最近珍しくないですか? 投資家誰なんでしょう?

2010年9月7日火曜日

船舶融資のファンドブリーフ

 ドイツのDVB銀行が、船舶融資を担保としたファンドブリーフを発行するそうです。もともとの格付けがA1で、それがAa3になったところでどれほどの意味があるんだろうとは思いますが…。DVBというと、98年に長銀さんからトランスポーテション資産を購入した人たちですよね
 DVBだけだろうと思ったら、過去にはHSHノルドバンクの発行実績があるんですね。

2010年9月3日金曜日

機構RMBS

 S&Pの先月31日発表のレポートによると(遅ればせながら、さきほど入手しました)、住宅金融支援機構のRMBSで裏付け資産のパフォーマンスが悪化しているそうです。
 裏付け資産の内容を見ると、LTVやDTIが高くなっていて、かつ、給与所得者・公務員〝以外〟(ノン・コンフォーミングですな)の比率が上がっているそうです。
 コンベンショナル・ウィズダムは、意外と正しいということなのでしょうか…。

APRS

 オークション・レート証券って、ヨーロッパの銀行が80年代後半から90年代の初頭に発行していたVRNの原型です。オークションで金利を決めて、一定水準より内側であればいつでもパーで売却できるし、オークションに失敗したら高めの金利を支払うという。ブラックスワンの典型みたいのものと言ってしまうとそれまでですが、デットは多かれ少なかれブラックスワンですから。
 米国では、クローズド・エンド(解約できない)ファンド(投資信託)がレバレッジをかけるのに発行する証券がオークション・レート型になっているケースがあって、最近の動向についてフィッチがレポートを出してます。VRNときと同じで、上限の金利に張り付いても困らないというのが味噌なわけで、困っていないというのが結論のようですが。

2010年9月1日水曜日

FCレジデンシャル

 FCレジデンシャルっていうREITの増資が東京地裁で差し止められたとき、差し止めの裏側にいる投資家が誰だかよく分からなかったんですが、たまたまシティがアンギラのリゾート向け債権をスターウッドに売却したという報道の裏を取ろうと思ってスターウッドのホームページに言ったら、FCレジデンシャルに〝長期間投資している〟って書いてありました。そうだったのか…。

マウイとアンギラ

 私自身はマウイ島には行ったことがないのですが、ゴルフをなさる方に言わせると、結構タマらん場所らしいです。
 WSJ紙に報道されていたので見てみたのですが、旧マウイ・プリンスをAREAプロパティ・パートナーズが取得したそうです。劣後ローンを持っていて、競売手続の中で取得したみたいですね。AREAはアポロ・リアル・エステート・アドバイザーズだった人たちだそうです。
 ハワイ不動産も、一時期日系ばかりでしたが、今でも日本人が持っているとこってどこなんでしょうかね? DFSの裏のオハナ? グアムはケン・コーポレーションさんがかなり精力的みたいですが…。

New Month Resolution

 今月は、1日に1本のペースで更新したいと思います。8月はなぜかネタがなくて…というのは言い訳で、単行本にエネルギーを吸い取られていたのですが、今月は頑張ります。

2010年8月30日月曜日

手詰まり

 6か月物金利を直接いじりにいくというのも、確かに思い切った手であることは確かですね。ただ、そこまでくると完全に市場金利なので、実際にどこまで影響を与えられるのか…。
 あと、金利が下がったからといって投資や消費が刺激されるのかというと、やはり、期待実質金利がプラスである限り、なかなか、カネが消費には向かっていかないですよね。
 私が答を持っているわけではないのですが、やはり、影響は限定的なのでしょう。少なくともデフレ対策の妙手は、世界中で誰ももっていないことは間違いないようです。
 嬉しそうに不動産担保にカネを貸していていいのか?という気はいたしますが…。

2010年8月25日水曜日

ノン・リコース・ローンとストラテジック・デフォルト

 今日のWSJ紙に、米大手不動産会社/ファンドが、ノン・リコース融資を借り換えたり、条件変更しないで、デフォルトを選択する例が増えているという記事が出ています。
 経済的にはあたりまえで、100億円の借金返すのに、80億円の不動産渡せば済むのであれば、借金返す(借り換えるのも同じです)ほうがおかしいわけで(EB債と同じですな)、借り換える唯一の理由は、この段階で損失が実現(表面化)する格好悪さを隠すのと、将来の不動産価格上昇への期待です。
 しかし、実際には、100億円のローンをデフォルトした上で、80億円で競落すればいいわけで、そちらのほうがよほど賢いのが理屈です。
 確かに、銀行相手だとこの戦略は取りにくいですが、WSJ紙が指摘する通り、CMBSになっちゃってるなら簡単ですね。

非因習的

 Unconventionalとbeaurocraticとは反意語では? 今までと同じ枠組みでしか政策を考えられない人たちでは、今の状況を脱却できないのではないかと思います。頭がいい人がやっていればうまくいくのであれば、こんな状況が15年も20年も続いているわけがないので。
 確かに、マイナス幅を大きくすることに対する責任というのはあるのでしょうし、この国の国民性が失敗者に対して異常に冷たいので、躊躇する気持ちも分かるのですが…。
 しかし、そう考えてみると、これって私たち国民性のツケなのかもしれません。出るものは打たれる、失敗者を冷遇する、チャンレンジそのものに対する評価が低いといった。今必要なのは、頭のいい人ではなく、型破りで失敗を恐れない人ですよね。

2010年8月24日火曜日

実質金利

 さすがに、これだけ円高・株安が進んでくると、みなさん、いろんなところに火が付きますよね。景気を好くするためには実質金利をネガティブにするしかないわけで、GDPデフレーターでみるとマイナス4%の国が実質金利をネガティブにするためには、名目金利を、そうですねー、マイナス5%にしますか。
 実際問題として名目金利をマイナスにすることは、金融機関のシステム対応ができずに極めて難しいのですが、一方で、日本にマイナス金利を導入したほうがいいという議論は10年前にもあったわけで、作為的無作為ですよね。責任者でてこいという感じもいたします。
 こうなると、反対は必至ですが、現金税・預金税をかけて、実質的にマイナス金利を作り出すしかないでしょう。ついでに納税者番号制も導入すべきだと思いますが、それはさておき、フィックスト・インカム性のある資産すべてに年率5%の税を掛け、現金化した際には、投資・消費したことを証明しない限り、現金化税(預金を降ろす、債券を売却する)を課すと。現金化税はごまかすのが簡単なので、おそらくは源泉徴収にした上で、還付とすべきでしょう。
 効果としては、逆消費税(消費した金額に応じて減税あるいは税還付を行う)と同じですし、脱税のために現金をため込んでいる人たちが、(バレない限り)一層得をするというのは癪ですが…。

2010年8月18日水曜日

本当の影響は〝土地活用〟屋さんたち

 実際に影響が一番大きそうなのは、土地活用屋さんたちですよね。
 典型的なのは、借上げ契約で有名なアパート・メーカーさん(特に大手2社でしょう)ですか。あと、ビジネス・ホテルの大手のみなさんですよね。これまでは長期借り上げが負債計上されていませんでしたが、一気に負債計上されると大変そうですね。資産側には負債と同額が計上されるということですから、そこだけで債務超過になることはありませんが、減損処理があるので、そこで痛い目に遭うということなのでしょう。
 賃料は固定費なので、固定費が高いという点で見た目のバランス・シートが軽くなっていても同じは同じなのですが、自己資本比率という分かりやすい数字が大幅に悪化するのは必至なわけで、その上、今後減損処理が絡んでくると、予断を許さないですね。
 外食は直営があまりないから関係ないのかなぁーとも思いますが、ファミレスはフランチャイズではないですよね。

不動産業界への影響は?

 新リース会計が導入されると、不動産業界はどうなるでしょう?
 会計的には、賃貸期間の分は所有権が及ばなくなるわけで、その分は資産が軽くなる一方で、賃貸料収入を長期間受ける権利が資産化されますから、結局はニュートラルなはずですね。また、投資用不動産は公正価値で評価するのでしょうから、リース会計の影響は受けないというのが建前ですね。これは私募ファンドもREITも同じはずです。
 気がかりなのは、オン・バランス化させられる、特に、長期賃借をしてしまうと、バランス・シート上のインパクトが取得と同じになる場合に、賃借人が賃借を選択するのかという点でしょう。倉庫とか小売用の施設とかは、結構長期間な賃貸借契約が結ばれることが多いのですが、賃借人の側で所有しているのと同じ、つまり、金融取引をしたのと結果としては会計上のインパクトが変わらないのだとすると、資金調達能力がある人は賃借を選択しないことになります。
 ま、このことはファイナンス・リースでも同じですし、もっというと、会計上のインパクトとは関係なく経済合理性だけを考える人もいるのでしょうから、大きな要因にはならないのかもしれませんが、注目は注目ですね。

賃借のオン・バランス化

 よく考えてみれば、賃借とは、「期間の限定された所有権」のようなものなので、資産性があるのは当然ですし、それにたいして支払いをするということは負債性を帯びているのも自明です。私自身はあまり自己資本比率にこだわるほうではないので、企業分析上、貸借対照表が重くなることは重要視せず、むしろ、フリー・キャッシュ・フローにどう利いてくるかを中心にいろいろなものを見る傾向があるので、その意味では、今般のIFRS/FASリース新会計についても、違和感はないですし、考えかたとしては拙著「女房を質に…」で家を購入するのと賃貸にすむのとどちらがいいのか的なところでも書いているつもりです。
 バランスシートに与える影響というよりも、FT紙指摘の通り「比較の容易さが増す」という点が重要なのは確かで、同業他社比較をする上で自己資本比率(負債の多さ)を見るのが重要なのは確かですから、賃借義務を負債に反映させたほうが分かりやすいことは確かですね。ま、それも、結局は利払いと同じ意味で固定費であるとも言え、FCFをきちんと分析していれば関係ないと言えなくもないですが…。
 実際問題として考えられる影響は、賃借が多い業界で、やはり小売ですかね。原状回復費用で特損出させられている人たちがいっぱいいるのに、泣きっ面に蜂?かもしれません。あと、倉庫を借りている人たちも結構なインパクトを受けるのではないかと思います。
 ざっと見た感じ()では、オフィスビルの賃貸借での日本の慣行(2年契約で、賃借人が出ていくのは自由)をどのように盛り込むのかが難しそうです。おそらくは、2年の契約期間にとらわれず、合理的に見積もられる入居期間を基に計算するのでしょうけれど。
 賃借権の資産性(裏側のリース料支払いの負債性)がきちんと認識されると、EBITDAではなくてEBITDARがもっと注視されるのでしょうね。
 ま、適用はまだ先みたいですけど。

2010年8月17日火曜日

すべては幻想

 あまり哲学ぶるつもりはないのですが、インフレとか景気というのは、たぶんにイリュージョンの世界だと思うことがあります。皆がインフレになると思えば自然にインフレになるし、皆が景気が好くなると思えば、自然に景気は好くなるものです。
 という観点からGDP統計を見ると、日本で実質GDPを見てももう意味がないと思います。確かに、インフレ率が年数%以上ある国であれば、インフレの影響を除いて実際はどうだったかを顧みる機会は必要だと思いますが、デフレの国で実質成長率を見ても、誰も好景気の印象を持っていない中では笑い話でしかありません。
 実際には無理なことは分かりますが、名目GDPを主要統計として皆が認識しない限り、ことの重要性が分からない人たちがまだ多いのではという危惧をしています。私たち人間はあまり賢くないので、イリュージョンが必要ですが、イリュージョンというのはそう思えないところには存在しません。名目GDPは実感ですが、実質GDPは単なる統計上の数字であって、実感のないところで景気が悪くなってないと言われてもしょうがないんですよね。
 日本は、GDPが年率3.7%で縮小している国である。このことを直視しなくてはいけません。

2010年8月16日月曜日

知的財産と動産

 知的財産権を利用したファイナンスについては、(一部の)金融機関と行政がかなり力を入れているのですが、なかなかうまくいった前例がなく、金額も極めて小さいものにとどまっているようです。いろいろと調べものをしていておもったのですが、結局、価値があることはわかっても、価格が付けられないというところに、難しさがあって、エクイティ型、つまりファンドであれば価値が分からないことはマイナスにはならない(オプション・バリューの分が増えたりします)ものの、デット型だとつらいということですね。確実に今後もキャッシュ・フローを生み続ける知財があるかと言われると、確かに・・・ですね。
 知的財産権についても財務構成要素というか、著作権はいくつものパーツから成り立っていますし、譲渡という意味ではもう少し広まってもいい側面というのはあると思っていまして、ネーミング・ライツもその意味では知財なんでしょうね。ただ、ネーミング・ライツを譲渡・質入れできるのかどうかは分かりませんが…。
 価値があることは分かっても・・・という議論は動産担保と同じですね。動産担保が実質的に機能するのは、おそらく、たばこ、アルコール飲料の一部、宝飾品、といったごく一部のものに限られるはずで、その理由は、あまりにも価格が読めなさすぎることです。

2010年8月12日木曜日

デフレ対策

 人類はインフレは過去に何度も経験し、その怖さも充分に分かっている一方、ある程度、インフレ対策については経験則もあります。
 一方、デフレはなかなか経験がなく、怖さも充分に伝わっていないうえに、対策について経験則もありません。
 日銀の過去の政策に対して他国の中央銀行が冷徹なのはそこにあって、過去に人類がほとんど経験したことのない経済の対策に、〝頭のいい人たち〟(定義として、過去のことをよく知っている人たち)があたったため、常軌を逸した政策がとれなかったわけです。
 常軌を逸することが重要なのは過去に例がないことに対応するためには当然なのですが、頭がよければよいほど、常軌を逸することができないんですね。
 現在世界中で起きている各国のデフレ政策は、その意味、すべて手さぐりでしかありません。常軌を逸しても成功する保証がないのに常軌を逸することができるはずはないというエリートの発想が、どこまで持つのか、日本の問題としてではなく、先進国全体の問題として注目されているんだと思います。

2010年8月9日月曜日

情けない話

 ファイナンス・リースのユーザーが更生手続きに入った場合、リース会社は勝手にモノを引き揚げられず、更生手続きに巻き込まれるというのは、ストラクチャード・ファイナンス業界では著名な判決だと思います(平成7年4月14日最高裁判所第二小法廷判決・民集第49巻4号1063頁)。で、あの判決の読みかたとして、『会社更生や民事再生に入ったら賃貸借を解約する』という特約は無効、というのがあると思っていたのですが、なぜかこれがなかなか周囲の人に受け容れられず、どうやったら分かってもらえるのかしらとずうっと悩んでいたのです。
 しかし、今日たまたま調べものをしてたら、民事再生法で最高裁判決が出ているんですね(平成20年12月16日最高裁判所第三小法廷判決・民集第62巻10号2561頁)。最高裁の判例チェック不足とは情けない限りなのですが、ま、Better late than neverということで…。

2010年8月4日水曜日

格付け会社の格付け その2

 昨日付けで、ムーディーズに対してBBB+をS&Pが附与しています。見通しは安定的だそうです。米国の金融改革法成立で事業リスクの高まりは見られるものの、世界的な格付け会社としての規模と、ブランド力という力強さがあり、市場の地位を維持しようと。
 こないだの格下げ(短期をA-1からA-2)のときは少し嗤わせてもらいましたが、今回は、ま、そうですかという感じですね。

エンジェル・ファンド

 アメリカっていう国は羨ましいなーと思うのはこういうときですね。カリフォルニア州のアーバイン(オレンジ郡にあるらしいです)に、エンジェル投資家の親睦団体があって、その人たちがファンドを組成したそうです。別にファンド運営で儲けたいというよりも、スタートアップに早く資金が行き渡るようにしたいという動機のほうが強いみたいです。
 日本にもエンジェルっていいないわけではないんでしょうけれど、なんか、深さが違いますよね。それとも、こちらがそのサークルに入っていないし、報道もされないだけで、実はネットワークがあったりするのでしょうか?

2010年8月2日月曜日

FCFとEBITDA

 FTのLexコラムに「フリー・キャッシュ・フローに気を付けろ」というのが出ています。ポイントは2つで、ひとつは、CapExを節約するとFCFが出ること、もうひとつは、運転資金の増減によるFCF創出は永続しないというものです。どちらも当たり前ですよね。
 本当は、修正EBITDAというか、EBITDAから実力の税金部分と、恒常的なCapExを控除したものが一番正確な指標なのですが、これには当然主観が入ってくるわけで。
 ま、だから企業分析って面白いんですけどね。

2010年8月1日日曜日

サラ金証券化と格付け

 最近、ムーディーズさんが、サービサー法上のサービサーはサラ金ABSのバック・アップ・サービサーとしては危険だというレポートを出していますね。サービサー法上のサービサーは法務省の管轄にあって、以前から、グレーゾーンについては引き直しが原則だったのですが、今後は、単なる「お支払いのご案内」であっても、引き直し計算をしなくては引き受けてはいけないんだとか。不良債権にならない限りは、附随業務に該当するのですが、そんなことしたら大変なことになりますよね。試算してみたことあるんですけど、ちょっと古い債権だと、知らず知らずの間に過払いの再生産が進んでいますから、すぐに元本がなくなってしまうわけです。
 S&Pさんが最近出していた「オリジネーターの倒産に学ぶ」というやつも、基本的にはサラ金ネタだったので興味を持って読み始めたのですが、結局、オリジネーターがトロいやつだと、バック・アップ・サービサーへの移行がうまくいかないことがあるので気を付けようという内容でした。ふむむ・・・

2010年7月26日月曜日

金融ビジネス休刊

http://www.toyokeizai.net/shop/magazine/kinbi/docs/oshirase/9915141004.html

 残念です。1998年の三和銀行/東京相和銀行の住宅ローン問題の頃から拝読しており、01年のマイカルの件以降はたまに執筆もさせていただいたご縁がありましたので。年1の発行は続くようで、雑誌としての名称は残ることだけはいいニュースですね。

2010年7月24日土曜日

民法

◯ 私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ → 私権は、公共の福祉に適合しなければならない
◯ 権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス → 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない
◯ 権利ノ濫用ハ之ヲ許サス → 権利の濫用は、これを許さない
◯ 本法ハ個人ノ尊厳ト両性ノ本質的平等トヲ旨トシテ之ヲ解釈スヘシ → この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を旨として、解釈しなければならない

 なーんか、口語化によって、荘厳さが薄れてませんかね? でも、法律って、たまに原文を読むと身が引き締まりますよね。「私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ」んだし、「権利ノ行使…ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス」るんですよ。
 しかも、結構、日本も法律はそれなりにリベラルなんですよね。民法っていう、根本中の根本の法律に「個人ノ尊厳ト両性ノ本質的平等」って書いてあるわけですから。弁護士の中に崇高な精神を持った人がたまにいるのもわかるような気がします。

2010年7月23日金曜日

不思議な国、イギリス

 もともとはイングランドもスコットランドもカトリックの国、つまり、ローマ法王のご寵愛があった国だったんですよね。ところが、あの名高きヘンリー8世が、離婚・再婚をするために英国国教会を設立してカトリックから離れてプロテスタントの国となったわけです。ま、イギリスの宗教改革をすべてそのせいにするわけには行かないのでしょうし、当然、他の社会的要因もあったのでしょうけど、すごいです。
 で、あれだけ男の子の跡継ぎが欲しかったヘンリー8世ですが、死後即位した息子さんも早逝しちゃうんですよね。で、登場するのが悪名高きブラッディ・マリー(メアリー1世)。イングランド女王になったときにはいったんカトリックに戻ったのですが、その際に次から次へとプロテスタントの人たちを処刑したとか。
 その後、異母妹のエリザベス(1世ですね)がイングランド女王になって、再びカトリックに戻しました。その際、スコットランド女王で従妹のメアリーを捕囚とし、ロンドンで処刑しています。
 もっとも、エリザベス1世には後継ぎがおらず、結局、スコットランド国王であったメアリーの息子ジェームズ6世をスコットランドから呼んできてイングランドの国王(イングランドではジェームズ1世)にするというオチ付きではありますが。なんか、ジェームズ1世って自分で本書いていて、そこで王権神授説を唱えているらしいです。エジンバラを離れてロンドンに行ってからは1度しか帰郷しなかったらしいですが、やっぱり、寒くて暗い土地は苦手だったのかしら…

日本国憲法

 憲法を自分の都合よく解釈しようとすると、前文はこう読むのでは:

 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために…自由のもたらす恵沢を確保し、…ここに主権が国民に存することを宣言…する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であ…る。
 日本国民は…、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する…。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、…政治道徳の法則は、普遍的なものであ…ると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

不交付団体の一覧

 転落団体、不交付団体の一覧はこちら(http://www.soumu.go.jp/main_content/000075077.pdf)ですが、不交付団体で面白いのは:

・ 青森県六ケ所村(なるほど)
・ 茨城県東海村(なるほど)
・ 埼玉県は、戸田市、朝霞市、和光市が入ってます
・ 千葉県は、市川、成田、市原、君津、浦安、袖ケ浦の各市
・ 東京都は、立川、武蔵野、三鷹、府中、調布、小金井、多摩の各市と瑞穂町
・ やはり愛知県が群を抜いて多く、わが大府市をはじめ、東海市のほか、碧南、刈谷、安城など三河地域だけでなく、西尾や小牧といった尾張のほうも入ってます

 もっとも、転落団体が圧倒的に多いのも愛知県というオチが付いてはいるのですが…。

交付団体〝転落〟一覧

 総務省の「平成22年度普通交付税の算定結果等」によると、転落団体は:

・ 青森県の東通村
・ 福島県の西郷村・広野町
・ 茨城県のつくば市・ひたちなか市・守谷市
・ 群馬県の太田市
・ 埼玉県のさいたま市・川越市・川口市・所沢市・狭山市・入間市
・ 千葉県の千葉市・船橋市・八千代市・富津市・印西市・芝山町
・ 東京都の八王子市・昭島市・町田市・小平市・日野市・国分寺市・国立市・羽村市
・ 神奈川県の横浜市・相模原市・平塚市・小田原市・茅ヶ崎市・大和市・伊勢原市・南足柄市・綾瀬市・大井町・開成町
・ 福井県の敦賀市・おおい町
・ 山梨県の忍野村・山中湖村
・ 岐阜県の岐南町
・ 静岡県の沼津市・御殿場市・小山町・吉田町
・ 愛知県の名古屋市・豊橋市・岡崎市・半田市・春日井市・豊川市・常滑市・稲沢市・春日井市・豊川市・常滑市・稲沢市・清須市・北名古屋市・弥富市・東郷町・東浦町(弥富って昔から市でしたっけ?)
・ 三重県の四日市市
・ 滋賀県の栗東市・竜王町
・ 大阪府の吹田市・茨木市・泉佐野市・箕面市
・ 広島県の府中町

だそうです。国立もですか…。

アステンベック

 ファイブロって、もともと、ソロモン・ブラザーズの親会社だったんですが、名前的にはソロモンのほうが有名になったので、一部のコモディティおタク以外はあまり注目していない名前でした。その後、ソロモンの名前にひかれた買収が続き、トラベラーズ、そしてシティ・グループの傘下となったのですが、シティでは、自己勘定の商品取引を持ちきれなくなったんでしょうね、昨年10月にオクシデンタル・ペトロリアムに買収されています。ま、シティが持ちこたえらなくなった原因は、ファイブロで自己勘定取引を担当していたアンドリュー・ホール氏にもあって、シティ・グループが米政府の公的資金注入を受けた後でも1億ドルのボーナスを受ける権利があったとして注目を浴びてしまったわけです。
 同氏が運用するアステンベック・オフショア・コモディティーズ・ファンド(ケイマン籍)が先月21日に米SECに登録した書面によれば、投資家37人から約11億ドルの資金を調達していることがわかります。
 とこのあたりまでは順風満帆に見えたのですが、この直後、同ファンドが5月に10%損したという報道が出ていました。もっとも、その後の報道がないことを見ると、実はまた回復していたりするんでしょうね。このあたり、報道の偏向と言うと言いすぎですが、やっぱり、他人の成功よりも失敗のほうがニュースになるということなのでしょう。

2010年7月22日木曜日

ブラックストーン

 ブラックストーンがモルガン・スタンレーから1000億円規模の不動産ノン・リコース・ローンを購入するとか…。公開されている情報から見ると:

・ 07年6月にLP持分(有限責任組合員としての地位)を上場
・ ヒルトン(07年)やユナイテッド・ビスケット(06年)に投資
・ 今年3月末の預かり資産残高は約1045億ドル(10兆円弱)
・ プライベート・エクイティが約280億ドル、不動産が218億ドル、クレジット投資およびヘッジ・ファンド投資で546億ドル
・ PEのネットIRRは一昨年が-30%、昨年+9%で、今年Q1も+15%
・ 不動産投資ファンドのネットIRRは一昨年が-38%、昨年-35%、今年Q1は+10%
・ 不動産関連債権投資(おそらくモルガン・スタンレーとの取引はここに入るのでしょう)のネットIRRは一昨年-9%、昨年+21%、今年Q1も+9%
・ ヘッジ・ファンド系のネットIRRは一昨年の-20%、昨年は+16%、今年のQ1も+3%

ということだそうです。KKRがモルガン・スタンレーのMSREFを狙っている話もあるし、まだまだ目が離せませんね、不動産金融も。

2010年7月21日水曜日

リースというストラクチャード・ファイナンス

 確かに、会計上の賃貸借性が否定されるようになってからファイナンス・リースのまやかし存在意義はなくなったんだと思いますが、当局を含めて皆が一所懸命やろうとしていてなかなか根付かない〝動産担保融資〟として捉えてみると、なかなか、まだまだリースも捨てたものではありませんよね。
 それにしても、リースの本質とはなにかを説明しようとすると、賃貸借という概念、売買という概念、所有と占有の違い、担保の概念など、ストラクチャード・ファイナンスの世界で生きていこうという人たちが知っておいたほうがよいコンセプトが盛りだくさんですね。
 もっとも、結局は銀行の別働隊でしかないわけで、そのあたりは不幸だと考えるしかないのでしょうけれど。

2010年7月19日月曜日

格付け屋さん相手の訴訟

 米国の金融制度改革法案中、格付け会社を訴えるのが楽になったというのが、S&Pがムーディーズの格付けを下げた(短期債務をA-1からA-2へ)理由なわけですが、でも、格付けが「間違っている」というのはそもそもどういうことかしら?と考えると不思議ですよね。
 というのも、確かにAAA/Aaaは「まず潰れません」という記号なわけですが、ということは、他の記号は〝程度の差こそあれ〟潰れる可能性があるという意見にほかなりません。しかし、実際には多くの会社は倒産しません。
 「お前がシングルB(例えばですが)と言ったからつぶれる可能性があるとおもってこの社債には投資しなかったのに、結局つぶれなかったじゃないか」とか「お前がトリプルCaaなんて格付けを付けるから転売できなかったけど、結局潰れなかったじゃないか」といった訴訟も、同じように起こせるのでしょうか? 事実の確認を怠ったことが訴訟提起の要件なのであれば、潰れる要素を見逃すのと同じように、潰れない要素も見逃してはいけないのでは?
 なーんてことばかり言っていると揚げ足取りみたいですが、格付けの本質を考えるとありな議論だと思いました。もっとも、格付けが間違えることもあるということを皆が知っていれば今のような問題にはならないわけで、それを知らない人が多い弊害をどうするかというのが制度改革のひとつの趣旨であることは理解しているつもりです。

2010年7月18日日曜日

借り換えの呪縛

 借り換えって、困ったことのある人にしか、怖さが分からないんですよね。でも、企業の倒産の99%(統計をとったわけではないので〝たぶん〟ですが)は借り換えができないから起きているわけです。借金が怖いのは、利息が固定費化するからでもありますが、もっと怖いのは、返さなくてはならないから、つまり、返さないと潰されるからです。
 ということを考えていて、やはり日本は怖いんですよね。借金がゼロの先進国などありえないので、別にゼロにする必要はないのですが、毎年の借り換えプレッシャーが強すぎるんです。やっぱり払い下げかなぁー。
 近所に市職員住宅があってテニスコートが併設されているのですが、あれも民営化してほしいです、はい。

2010年7月17日土曜日

CDOの消却

 ムーディーズのCLO Interestという出版の7月号を見ていたら、面白い記事が出てました。CDOのメザニンとエクイティを同じ人が持っている場合、メザニンをゼロ円で消却させてCDOの超過担保テストを合格させ、その結果、エクイティに回ってくる資金を増やすという作戦です。
 メザニンが存在していると超過担保テストを失格する可能性があり、それによって利金のキャッシュ・フローがシニア債の元本償還に回りますが、それを防ぐためとか。で、シニア債の投資家が「そんなことは許さん」と訴訟を提起したのだけれど、結局、デラウェア州の裁判所で消却が認められたんだそうです。
 こういう、知的好奇心を刺激される事柄があるから、なかなか、金融の世界から離れられないんですよね。
 CLO Interestはこちら(読者登録が必要かと思います)(http://v3.moodys.com/researchdocumentcontentpage.aspx?docid=PBS_SF210409)、裁判所の意見はこちら(http://www.delawarelitigation.com/uploads/file/int19%281%29.pdf)です

2010年7月14日水曜日

不動産の流通市場を確立するには

 日本の住宅の問題点は、中古の一戸建てがほとんど流通しないことですよね。理由はいくつかあるのでしょうが、画一化ができていなさすぎることがひとつの要因ではないかと思うのです。イギリスにいくと、似たような家が何軒も何軒も並んでいるのを目にしますが、あれだと、どの家を買っても同じなので、あとは場所だけ、そう、日本の中古マンションみたいになるような気がするのです。
 ま、石(ま、レンガですか)でできている家と木でできている家の根本的な違いがあることは分かるのですが…。

対プロ向け融資姿勢調査

 米連銀が20金融機関に聴き取り調査をおこなったそうです。それによると、5月末までの3か月間で:

・ 他の金融機関や証券会社に対する融資残高の管理に割く経営資源が増加した
・ ヘッジ・ファンドを含めた重要な顧客に対する取引条件を緩和した;顧客の側からも条件緩和圧力が強まった
・ 店頭デリバティブ取引では、単純か複雑かにかかわらず、価格面以外の経済条件はほとんど変化なかった
・ 格付けの高い社債、株、エージェンシーMBS、他のABSを担保とした借入の要請が増えた
・ 値洗いに際しての価格・担保価値についての意見の相違件数に変化はなかった
・ 06年末と比較すると、すべての面で融資条件は厳しくなった

だとか。だからなに?と言われるとそれまでですが。

2010年7月12日月曜日

選挙のたびに思うこと

 日本の政治が何流なのかはわかりませんが、少なくとも英米独仏豪加といった国と比較すると、同じ程度に洗練されているようには見えないというか、外国がうらやましく思えることがあります。もちろん、すべての国のすべての候補者、すべての選挙区について知っているわけではないので、単なる印象でしかないのですが、片山氏、佐藤氏、猪口氏が参院で当選するという姿があまり格好よく思えないのはなぜでしょう。あるいは、柔道選手や体操選手、元プロ野球選手、タレントがこれだけ出馬するのも…。
 横山ノック氏、青島幸男氏が、それぞれ大阪府、東京都の知事に当選したときにも思ったのですが、政治家を選ぶのは有権者なわけで、有権者は直観的に、自分たちにふさわしい政治家を選んでいるのでしょう。つまり、政治を憂うのは自分たちの不徳さを憂うのと同じであり、本来的には政治・政治家を憂うのは筋違いであると。
 ま、米国ではプロレスラーが州知事になった例(ミネソタ州)、俳優が州知事になった例(カリフォルニア州)、俳優が大統領になった例もあるわけで…。でもやっぱりちょっと違うと思うんですよね。

2010年7月10日土曜日

裏は取れないものの…

 政局が安定し、法制度、特に所有権の概念が確立している国への不動産の投資は、多額の資金を運用しなくてはならない年金基金やソブリン・ウェルス・ファンドにとって分散投資上の効果が高いことが知られています。日本にいると不動産に所有権があるのは当然だと思うでしょうが、これって、意外と、ちゃんとした国でないと決してそうではないのです。また、そもそも土地はすべて国のものであって、所有権は建物にしか存在しないという概念も決して稀ではなく、地上権を物権と考えられればともかく、借地権であると理解するとそれはそれで面倒ですね。
 なので、ロンドンの不動産に対して中東のソブリン・ウェルス・ファンドが多額の資金を投入しているのはその一例と言えます。
 最近は韓国の投資家の動きが派手みたいですね。オフィシャルなプレス・リリースとかがないので、報道を真実と推定するしかないのですが、韓国の国民年金公団は、昨年11月にロンドンのカナリー・ウォーフ地区にあるHSBC本社ビルを約1000億円で、また、今年の1月にはシドニーのオーロラ・プレース(中国の中央銀行である人民銀行など多数の金融機関が入居するオフィスビル)を約600億円で購入していまして、さらに5月にはベルリンのソニー・センターをMSREF(モルガン・スタンレー・リアル・エステート・ファンド)から約640億円で購入するなど海外不動産投資を活発化させているようです。また、韓国教員信用組合と韓国信用協同組合連合会は、今年の6月に、ウェルズ・ファーゴ銀が入居するサンフランシスコのオフィスビルを約300億円で買収しています。
 国民年金公団は日本でも昨年7月、豊洲のKDXビルを買収しているほか、横浜の不動産も買っているらしいです。中国だけかと思っていたら、実は、韓国もすごいんですね。

2010年7月8日木曜日

国債

 日本の財政の問題点は、累積赤字そのものではなく、このままだと借り換えができなくなることだと常々思っているわけですが、今まで(個人的には恥ずかしながらですが)ほとんど見ていなかった国庫短期証券の数字を見て、改めてこの思いを強くしました。
 昨年度を見ると、国庫短期証券の発行総額は388兆4607億円です。これは、年度内で返済されているものもあるので、金額で加重平均した償還期間を見てみると118.83日となります。つまり1年365日ですから3.07回転(2.07回借り換えをした)ことを意味しており、1回転あたりの金額は126兆4653億円となります。この金額を4か月に1回借り換えしているのと同じなんですね。
 今年度に償還される国債の借り換えだけで100兆円を越える国なのに、短期は短期でこんなことしていて、本当に大丈夫なんだろうか? なにか見落としているだけなのかもしれませんが、結構怖いです。

2010年7月6日火曜日

プライマリー・バランスの議論

 最近、プライマリー・バランスの議論が盛んですね。でも、プライマリー・バランスが黒字になったって、日本の財政赤字が深刻なのはなにも変わらないんですよね。だって、利払い費用がありますから。
 もちろん、財政健全化のためにはプライマリー・バランスがプラスになることがいいに決まっていますが、それによって財政再建となるというのは大間違いで、気休めにしかならない。ただ、気休めすらできないと、国民が国債を見離して大暴落が起き、借り換えができなくなって破たんするから、だからまずはプライマリー・バランスを目指すというわけですな。ま、誰も表立って「破たんしないためのアリバイ作りだ」とは言えませんわな。

投資用マンション

 ムーディーズが昨日のリリースで、投資用マンション取得用ローンは、〝巷で思われているのよりは〟安全だと言ってました。バブル期以降も融資を続けていた人たちにはノウハウが溜まっているとか。
 でも、バブル期以降も融資を続けていた人たちって、ジャックスと、東芝系のノンバンクと、あとオリックスだけですよね? ニューシティ(ベア・スターンズ)、日本橋住宅ローン(メリル・リンチ)、ジパング(モルガン・スタンレー)、リベルタス(リーマン)ってどうなんでしょう? スルガ銀行もか。

逆選好は終わらない

 逆選好…。若干難しい概念ですが、要するに、与えられた範囲の中で最悪の行動をすることです。BIS規制がいい例で、リスク・ウエイトを格付けで決めると、儲けなきゃいけない人たちは、特定の格付けの中で最も儲かる(=スプレッドが広い/利息が高い=リスクが高い)案件に手を出すようになり、本当はリスクを抑制するための制度が、逆に、「ルール上のリスクが低ければ実際のリスクは関係ない」となるのが逆選好です。
 フィッチが昨日発表したCDOの格付けクライテリアでは、一応逆選好の対策がなされていて、アウトルックがネガティブあるいはネガティブ方向のウォッチ銘柄については、CDSから逆算される想定格付けまで格付けが下がると考えるとか。
 でも、本当の逆選好は、アウトルックがステーブルのところで起きるんですけどね。でも、格付け会社としては、自分の格付けが間違っているとは言いづらいのでしょう。

バルチック海運指数

 バルチック海運指数が27日間連続で下がっているそうです。この指数が何を意味するのかは説明する人によって違うのですが、少なくとも船会社や、船を担保に融資をしている金融機関からすると辛いところですね。
 同じようにな輸送機であっても、航空機は (1) モデル数が少ない (2) 使っている人(航空会社)が多い、一方で船は (2) 個別性が強い (2) 使っている人(船会社)が実は少ない、という特徴があって、担保としての価値は大違いだとか。同じ不動産でも土地の担保価値のほうが高いというのと同じかもしれませんね。

2010年7月2日金曜日

地方財政

 調べてみると、印象と違って、すぐにでも潰れそうな地方公共団体は今のところないんですね。ただ、倒産法制がないことを考えると、清算・民事再生といった債権カットの仕組みが法的にはないわけで、となると、国が面倒見るんでしょうね、最終的には。
 もっとも、国は国で、財投債の残高は自分に関係ないと言いはるし、それはそれで不安だわ…。

年金

 確定拠出年金のネタは過去にしばしばあったので、なんとなく、年金は金融に近いことは理解していたのですが、最近改めて詳細を見る機会があって、ふむふむと思うことがいくつもありました。
 たとえば、100年後に均衡させるってどういう意味かということですが、日本の年金が積立方式でないことは知っていたものの、今平成117年(←それはそれでツッコミを入れたくなりますが)に向けて資金の積立の最中っていうことみたいですね。基礎年金の半分を税金で賄いながら100年進み、100年経ったら確定給付式の積立がバランスしていると。
 ま、そもそも論として、税金で埋めているということを知らなかったのもどうよ、と自分でも思いますが、だから国会で年金のことみんな騒ぐわけですな。妙に納得したのでした。

2010年6月30日水曜日

格付け会社の格付け

 S&Pが昨日、ムーディーズの短期格付けA-1を格下げ含みで見直すと発表しています。
 格付け分析に際して依拠した客観的事象・事由の正確性について、適切な検証をおこなわず、あるいは、独立の第三者による認証をしていないと投資家から訴訟を提起されるおそれがあり、コンプライアンスの費用が増える見込みとか。
 また、格付けを金融機関の資産査定に用いないというのも法案に盛り込まれており、こちらも業務上の影響がありうると考えているそうです。
 しかし、ムーディーズとS&Pは同じ業務やっているわけで、なかなか思い切ったレポートだわいなとも思いますな。

2010年6月28日月曜日

ドッド=フランク・ウォール・ストリート改革及び消費者保護法

 うーん、PDFで2,315ページですか…。降参です。
 中身を見たところ報道のとおりで、プロップ・トレードの禁止も、客ビジネスであればOKということですし、また、ヘッジ・ファンドやPEファンドへの投資も、全体の3%までで自己資本(ティア1)の3%まではOKということでしょうか。
 注目された修正案の中では、リンカーン修正案についてはまだ読み切れていないのですが、フランケン修正案は骨抜きにされたみたいです。とりあえず、指名制・持ち回り制についてSECが検証するにとどまることになりました。もっとも、格付け会社さんの受難は変わらずですね。日本の同等の法律よりは中身きついです。
 しかし、こんなもの全部読むのに何年かかるんだという気もいたしますが、今、グリシャムのThe Asssociateを読んでまして、でかい法律事務所だと、若手弁護士にメモつくらせるんでしょうね、きっと。

2010年6月25日金曜日

細かいこだわり

 民法175条『物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。』
 これがあるので、譲渡担保とか仮登記担保とか所有権留保というのは、担保権ではあっても担保物権ではないという理屈になるのでしょう(たぶん)。
 「物上代位性を有する担保物権」として譲渡担保が挙がっていない金融機関向けのテキストを見つけたのですが、それはどうですかね? 留置権に物上代位性がないことは有名な話だったらしいのですが、それはさておき、一般論として、譲渡担保に物上代位がありそうなことは感覚的には当然のような気がするのですが? 判例的にも(とはいっても、法学者ではないので自分の都合のいい結論しか見ていないきらいはありますが)物上代位性は認められているように思います。

2010年6月24日木曜日

上場PE会社のリストラ

 アメリカっていうのはすごい国だなぁというか、先進国の中では日本がとびっきり遅れているだけなのかもしれませんが、ニュースを見ていて、ナスダック上場のアメリカン・キャピタルという会社を見つけました。この会社は、MBOやEBOで共同投資をしたり、メザニンやシニア・ローンの形で投資をしたり、あるいは直接上場・非上場を問わず会社に出資をするだけではなく、第三者のための資金も運用するし、モーゲージREIT(エクイティREITが所有権を対象にするのに対し、不動産担保債権を運用対象にするREITですな)を上場もさせているしと、なかなか幅広くやってます。
 で、この会社が債務交換をやっていて、要は、カネ返せないから安く買戻しているということなのですが、なんかシュールだわ、と思います。
 投資先を見ても1社も知っている先がなくて、アメリカって奥が深いです。

<7月11日追記>
 アメリカン・キャピタルはどうもBDCらしいです

2010年6月23日水曜日

不動産特定共同事業

 日経朝刊に、国土交通省が不動産特定共同事業の改正を検討中と出てました。機関投資家の資金を集めやすくすることが目的とか。
 すでに不動産私募ファンドがあって、機関投資家のカネだって集まっているのになぜ?という気もしますが、理由は単純で、現在の私募ファンドは、取得する資産が不動産そのものではなくて不動産信託受益権であることがほとんどで、金融庁の管轄になってしまっているんですね。
 SPCを設立して、不動産で運用しようとすると、(1) 売買で宅建業法、(2) 匿名組合による出資の受け入れと利益分配が不動産特定共同事業、に該当する可能性があって、基本的には敬遠されます。現在の不動産特定共同事業法の枠組みだと、既存の不動産会社を営業者とする形が想定されているため、営業者の倒産の影響を受けますから、機関投資家は怖くて資金を出せないんですね。
 不動産の信託を利用するのは税金の問題とかもあるからですが、「信託、なんじゃそりゃ」という人(特に個人)が多いのも事実であって、不動産特定共同事業がきちんと活用されるのであれば、それはいい話だと思います。しかし、実際には省庁の権限拡大を狙った動きにも見えますね。
 それにしても、ツイッターにも書きましたが、どうやったらこの「国土交通省政策集2010」なるものの現物が見られるのでしょう? 不思議な国だ…。

2010年6月21日月曜日

人民元

 人民元のドル・ペッグ見直しについて、"head fake"(顔の向きを使ったフェイントですな)だという論調が支配的だったようですが、なんのなんの、結構上昇しているみたいです。中国からすると、元上昇(ドル下落)は、保有する米国債の価格下落につながるわけで、決して望ましいことではないのでしょうが、さすがに国際的プレッシャーには勝てなかったということなのでしょう。
 中国の輸出競争国の通貨も強くなっているみたいですね。いっやー、マーケット、深いです。

2010年6月19日土曜日

カタールとロンドン不動産

 カタールのロンドンでの投資が凄いことになっているようで。ハロッズの話は有名でしたが、オックスフォード・ストリートのパーク・ハウス開発計画を2.5億ポンドですか。カナリー・ウォーフのソングバードの株も狙っているようですし、それよりなにより、グロブナー・ハウスとサボイもターゲットに入っているとか…。
 そもそも中東マネーがアメリカ不動産にいかない理由があるにしても、やはり世界の首都なんですね、ロンドンは。日本はおいていかれるのかしら…。

変動利付国債

 なぜ、そしていつまで、日本の変動利付国債は10年国債利回りに連動するのでしょう? 記憶が正しければ、フランスが似たような国債をかつて発行していたはずですが、それ以外になにか適切な説明があるとは思えないのですが…。
 ということを、イタリアが変動利付国債の指標をEuriborに替えるというニュースを見て思いました。

2010年6月18日金曜日

BPの格付け

 フィッチの格下げのときはニュースになりましたが、S&P、ムーディーズはそうでもないですね。その理由のうち半分くらいは格下げの程度というか、ダブルAからシングルAというのは、さほどひどくないということでしょう。
 それにつけても、フィッチが無責任だとまでは言いませんが(R&Iのハンガリー格下げ含みのウォッチのほうが・・・ですよね)、なんか違和感を感じるのは私だけなのでしょうか。もちろん、今後ムーディーズもS&Pも、再度格付けを下げるかもしれませんが、なにかそういう問題ではないような気がするのです。格付けの利用者が求めているのは、ニー・ジャーク・リアクションというか「げっ、ヤベっ、格下げしなきゃ」ではなく、信用度がどうなって、また、どうなろうとしているのかについての判断であって、符号に落とさなきゃいけないのは分かるにしても、パニクっているような態度は見たくありません。
 きちんと見ているわけではないので、水準について申し上げられるような立場でないことは承知ですが、ニュースを見ている限り、感覚的にはシングルAで充分なんではないですか、フィッチさん。

2010年6月15日火曜日

フォワードというポジション

 日本では、フォワードというポジションが軽視されているような気がします。でも、ゲーム・メーカーが評価されすぎる社会って、もしかすると、官僚さまを無条件で尊敬するのと同じなのかもしれません。
 その意味、本田選手をなんの先入観もなく見て「フォワードって恰好いい」と思ってくれる子供が増えることを祈ります。本田選手が自分のチームではイングランドのランパードのような役割であっても、ルーニーのような選手に憧れを持つ子供が増えたほうが日本サッカーのためにはいいのではと。

世代交代

 どんな組織でも世代交代は難しいですね。しかし、岡田監督はその意味で勝負師というか、冷酷なのでしょう。12年前のカズ、北澤は非情ということだったのでしょうが、でも、楢崎や玉田、中村俊輔にとっても昨日は冷酷でしたよね。こうなってくると、川口を代表に招集した理由は、楢崎に引導を渡すためだったのではないかとうがった見方もしたくなります。
 でも勝負師監督、次はどうするんですかね。機能したように見える本田ですが、本職ではないわけで、かといってツキも持っていそうですし。
 もちろん、個人的には名古屋の選手、名古屋を卒業した選手は応援していますから、是非出てほしいですけれど、それとは別に、組織運営として興味あります。
 ま、巨人の原監督の凄さも相当なものがありますが

2010年6月12日土曜日

勉強不足

 米国のPE業界が広くて深いというのは知っているつもりでしがた、まぁー、知らない会社の多いこと多いこと。こないだTPGが買うことになったVertafore(ヴァータフォア)のオーナーだったヘルマン&フリードマンとか、JMIエクイティなんてこれまできいたことなかったですが、一旦名前を覚えてしまうと、前者はそれなりに出てくる名前ですし、後者はダブル・クリックに投資している反VCみたいな会社とか。
 さらにすごいのは、アメリカでは、銀行に投資するために銀行持株会社として規制されることを選択しているファンドがあるんですよね。それもひとつではなく…。キャップジェン・キャピタルはそれなりに有名みたいですが、今日、キャッスル・クリーク・キャピタルっていうのも見つけました。いや、さすがアメリカ。参ったっていう感じです。

EUの格付け

 EUがEUとして個々の国を助ける可能性があって、そのために発行するかもしれないMTNの枠を増額したわけですが、それに対してトリプルAの格付けが付いているニュース・リリースを見ました。世の中で、これだけ格付けの有用性(無用性?)の議論がされていて、また、誰が格付けの手数料を負担しているんだという議論が沸騰している中、ものすごーく違和感を感じませんか? しかも、今回の欧州債務危機のひとつのきっかけは格付けだと言われているのに…。
 こんな状況で、格付けの根本的な改革なんてできるわけはないと思うのは私だけなのでしょうか?

2010年6月11日金曜日

カレー屋さんと世界情勢

 インドはヒンズー教徒が多く、パキスタンはイスラム教徒が多い。だから、二つの国は分かれたというのは、知っている人であれば当然の話ですが、興味がない人にとってはなんの意味もない情報です。しかし、こんな単純なことを知らないと、トルコのEU加盟が遅れている理由の少なくとも一つが分かりませんし、アラブ諸国とイスラエルの争いの原因の一つもよく分からないはずです。
 ということを「インド・パキスタン料理」と書いてある看板を見る度に思います。もちろん、インドにもイスラム教徒の方はいらっしゃるわけでおかしくはないのですが、「Japanese and Korean Restaurant」と書いてあったらおののきませんか? あるいは「京都・大阪料理」とか? 同じ感覚ではないかと思うのです。
 もっとすごいのは、「インド・パキスタン料理」と書いておきながら、ポーク・カレー(イスラム教徒は豚は穢れているので食べない)やビーフ・カレー(ヒンズー教徒は牛は聖なる生き物なので食べない)とか出す店で、さすがにあまりないのですが、たまにあってびっくりします。
 もっとも、日本でインド料理やパキスタン料理と称するレストランで働いている人たちのほとんどはネパールかバングラデシュの方々のようです。今調べたら、ネパールは主としてヒンズー教、バングラデシュは主としてイスラム教とのことです。

ドイツにソブリン・リスクはあるのか

 ドイツのソブリンリスクは、直接ドイツの財政にあるのではなく、他のユーロ圏諸国を助けなきゃいけなくなるところにあるのではないかと思っています。その意味で、歳出削減という範を示して、スペインやイタリアに「財政赤字はこうやって減らすのよ」という先手を打ったというのが、今回のメルケル首相のやったことなのでしょう。
 ハンガリーは政治的にナイーブというか、ちょうどわが国の前首相みたいに、自分の発言の重さに気付いていなかっただけではないでしょうか。確かに、注目されていた国ではあるので、西欧銀行が貸している→ハンガリーが潰れたら銀行がまたヤバくなる→国家財政に負担がかかる、という理屈は成り立ちますが、実際は、そのような理論的な反応ではなくて、ハンガリーヤバい→ヨーロッパヤバイ、という短絡であったようで、市場のセンチメントの悪さを感じます。1週間経って落ち着きを取り戻しつつあるようですが。
 で、本来のソブリン危機は英米にあるという大筋は変わらないのですが、目先のヨーロッパで言うと、PIIGSの財政完全崩壊(ストライキなどによる政治的破綻がきっかけか?)とユーロ離脱・解体の脅しに対して独仏がどこまで抵抗するかがポイントかと。しかし、フランスだって決して楽ではないし、そろそろ市場ではベルギーをターゲットにする気配が見えます。
 個人的には独仏が財政赤字垂れ流してでもユーロを守ると思っていますが、確率を付けるということになると「現状のユーロ維持+周辺への拡大路線継続」はが50%、逆に、「完全崩壊して各国通貨に戻る」が20%くらいあるということでしょう。

2010年6月9日水曜日

第一種低層住居専用地域

 私たちが普通に住もうと思うようなところは〝用途地域〟なるものが指定されています。普段意識することはあまりありませんが、マンションや建売住宅のチラシなどのファイン・プリント(細かい字)を見ると、キチンと書いてあります。一応、その中でステータスが一番高いのは第一種低層住居専用地域、いわゆる〝一種低層〟で、ここであればマンションが目の前に建つ心配は普通はありません。
 もっとも、低層住宅しか作っていけないわけではありません。床面積の半分以上が住居になっていて、かつ50平米以下の広さの範囲であれば、事務所のほか、日用品の販売店舗、食堂、喫茶店、理髪店、美容院、クリーニング取次店、洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店、パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋、学習塾、華道教室、囲碁教室、アトリエ、工房などの商売をやってもいいことになっています。また、当たり前かもしれませんが、アパートも建てられるほか、教会や神社仏閣も一種低層に作ることができますし、銭湯、老人ホーム、診療所、保育所も大丈夫です。つまらんことですが、診療所とは、我々の感覚からすると「病院」なのですが、入院施設がない、あるいは19人までしか入院できないのが診療所、20人以上が入院できると「病院」という区別がありまして、一種低層では診療所はいいけど病院はダメというわけです。
 教会ができたりすると、ちょっと静かな住宅地とはイメージが違いますかね? また、深夜でなければ酒類の提供をする飲食店を営業してもよく、12時まで営業する、夫婦でやっているスナックというのは、一種低層でもありえます。
 こんなこと知っていてどうするんだととか、「どこが金融と関係あるんじゃい」という気もいたしますが、不動産はおカネが向かう先の一つですしね。個人向けの財務アドバイスでも不動産に関する知識って重要みたいですよ。

ビジネス・トラスト

カナダにしかないのかと思っていたら、シンガポールにもあるんですね、ビジネス・トラストって。日本語で言うと「事業信託の受益権」なんでしょう、信託ですから税制メリット(というかパス・スルー課税)にもなっていると思われ、投資法人とか、米国であればREIT/BDCに近い概念でしょうか。
なぜ気付いたかというと、S&Pがシンガポールの船舶ビジネス・トラストを格下げしていて、読んでみると、日本でアレスト(船舶差押)を食らっているんですね。一次傭船者がキプロスの会社で、こいつがちゃんと燃料とかを払っていないことが原因のようですが、船ってこれがあるから怖いですね。不動産だと、賃借人の未払いで賃借しているオフィス・ビル差し押さえないですわね、普通は。

バンク・オブ・ニュージーランドのカバード・ボンド

バンク・オブ・アメリカとか、バンク・オブ・スコットランドとかと同じように、別に中央銀行ではないのですが、ニュージーランドのバンク・オブ・ニュージーランドがカバードボンドを出すそうで、ムーディーズとフィッチがトリプルAを付けています。なぜS&Pが格付けを附与していないのかは想像でしかないのですが、おそらく、どこかの段階でトリプルAを付けないという結論を出して、それを発行体側が嫌ったということかと思われます。S&Pは「公開情報を基にした」コメントを発表していて、それによると、本件、発行体格付けを0~3ノッチしか上回らなかったろうとのことで、BNZがAAであることを考えると、おそらく、AAからAA+の格付けを附与しようとして、BNZから「そんなものは要らん」と言われたのでしょう。
11年前に、当時の東京相和銀行と三和銀行が日本初のRMBSを発行しようとしたとき、やはり、フィッチとムーディーズだけが格付けを附与していたのですが、その際、S&Pが似たようなコメント(「日本で住宅ローン証券化格付けをするには、かくかくしかじかの条件が揃った案件じゃないと…」みたいなノリ)を出していたのを思い出しました。

2010年6月8日火曜日

練馬区、杉並区、武蔵野市がくっついてるって知ってました?

練馬区と武蔵野市の境に練馬区立野町というところがあって、ここは東京女子大も近くてなかなかいい場所ではあるのですが、ここのマンションを売るときに、誰も「立野町のマンションです」という広告は出しません。「吉祥寺駅徒歩20分」のマンションと書くわけです。立野町の場合、練馬区でありながら、武蔵関や上石神井といった西武新宿線の駅からも遠く、確かに吉祥寺が一番便利な駅ではあるのですが、地籍が吉祥寺でないどころか23区内に逆戻りしているにもかかわらず、たまたま吉祥寺駅が最寄り駅になっている練馬区のマンションではなく、吉祥寺〝の〟マンションとして広告を出すんですね。ちなみに、市境で地価も違ってくるようです。
国立も同じで、国立市北というのは、そうは言ってもまだ国立市なので、国立市中や国立市南ではないにせよ、住所としても最寄駅としても国立のマンションのものもあります。しかし、国立駅の北口を少し北東に進むとすぐに国分寺市に入ります。しかし、国分寺市にあるマンションで、「たまたま最寄駅は国立」という広告は誰もしません。当然のように、国立のマンションとして広告が入ってくるわけです。
だいたい、上記のような例に限って、マンション名に「何とかハイツ吉祥寺」とか「かんとか国立レジデンス」とか付けるものです。ま、これは賃貸マンションやアパート、オフィスビルでも同じ傾向が見られますが。

地図上と説明とで最寄駅がちがう…

資料集めをしていたらすごいのを発見しました。
http://suumo.jp/mansion/__JJ_JJ010FJ100_arz1030z2bsz1010z2ncz166440216.html
これ、ぱっとみたら「国立駅徒歩19分」としか書いてないですし、マンション名も国立ですし、住所も国立市東4丁目だから、国立だと思いますよね? 地図みたら〝いわゆる国立〟ではないことは知っている人であれば分かりますが、当然、すぐに分かるようには書いていないわけで…。
で、このマンションの凄いのは、少し詳しく見ると、「交通 国立駅徒歩19分 谷保駅12分」と、わざわざ遠いほうの駅を先に書いているんです。そりゃ、国立と谷保とではイメージ違いすぎることは分かりますし、一般的には中央線のほうが南武線よりも便利なことも認めますが、それってひどくないですかね? もっとも、駅でSUUMOとかもらってきて見てみると、意外と、こういう例が多いのは確かですが。

アドレスは吉祥寺(最寄駅は西荻窪)

 吉祥寺というのは、中央線で新宿から15分くらいのところにある小さな街ですが、京王井の頭線の終点で渋谷ともつながっています。駅のすぐ南に井の頭公園という広い公園があり、また、立教女学院、東京女子大学も近く、各種調査でも常に「住みたい街」の上位にランクインしています。東京在住の方であれば、住めるのであれば吉祥寺に住みたいと思っている人は多いことでしょう。そうすると、「アドレスは吉祥寺」というマンションや建売住宅の広告が入っていたら、思わず見てしまいますね。モデルルームがあれば、見にいこうという気になるかもしれません。
 でもちょっと待ってください。確かに〝アドレス〟は吉祥寺かもしれませんが、事情を知っている人が、ほんとうにその場所を吉祥寺だと思うかどうかは別の問題です。
 吉祥寺は地籍としては東京都武蔵野市になります。関東圏以外のかたはご存じないかもしれませんが、東京には23区以外にも市町村が存在していまして、武蔵野市は杉並区や練馬区と接していますが、他の都道府県にある市と同じで、市役所もあれば市立小学校もある市です。で、武蔵野市には「吉祥寺」という地名そのものはありません。「吉祥寺本町」「吉祥寺南町」「吉祥寺北町」「吉祥寺東町」という町名があるだけなのです。
 このうち「街」としての吉祥寺は吉祥寺本町全域と吉祥寺南町の一部、高級住宅地としての吉祥寺は吉祥寺南町の大半です。逆に言うと、吉祥寺北町や吉祥寺東町は、確かに吉祥寺駅から歩ける距離ではありますが、いわゆる吉祥寺ではないのです。
 それでも、最寄駅が吉祥寺であれば、まだいいかもしれません。しかし、吉祥寺南町の一部、吉祥寺東町の一部は、駅としては中央線で東隣の西荻窪駅や、井の頭線で2つ渋谷よりの三鷹台という駅のほうがはるかに近くなっています。西荻窪は西荻窪でいいところだとは思いますが、一般に「吉祥寺」という言葉からイメージされる場所とかけ離れていることもまた確かです。「アドレスは吉祥寺」と大きく書いてある広告は、実は「最寄駅は西荻窪ですが…」というオチ付きだったわけです。

2010年6月7日月曜日

誰も気にしないから?

R&Iがハンガリーを格下げ含みの「レーティング・モニターに指定」したそうです。先週の新政権の発言を受けてのことということですが、そんなことでいちいち格付け動かしていたら、日本の格付けなんてどうなるんだろうという気もいたします。
思うに、ハンガリーが小国だからということで、ちょっとしたことで影響を受けやすいということはあるのでしょうが、実際には、ハンガリーの格付けをR&Iがやっていようがいまいが誰も関心を持たないので、R&Iとしても気楽に格付けをいじれるということなのでしょう。
実際には、市場が大きく動いたからこのような格付けアクションとなったことは明らかですが、そうであれば、株価が大きくぶれた会社の格付けはすべてレーティング・モニターにするのかしら?という気もいたします。
ちょっと大げさ・単純化し過ぎなのは承知ですが、あまりにもオポチュニスティックというか、無責任というのではなく、他人事ちっくというか、当事者意識があまり高くないように思えました。

前政権バッシング

ハンガリーの件は、今起きている、あるいは、今後しばらくの間に起きる悪いことはすべて前政権のせいで、今後起きるいいことはすべて新政権の政策の結果であるということを主張するためのものでしかない(と思う)わけで、そんなことは、少なくとも私が見ている限り、米国やオーストラリアなど比較的政治勢力が2大政党の間でバランスが変わりやすい国では日常茶飯事ですよね。
逆に言うと、ハンガリーがそんな国かどうかを調べる必要はあるのでしょうが、人間である限り、あまり変わらないのではないかと。大人げないと言ってしまえばそれまでで、英国ではあまりはやらないスタイルではありますが。
ま、それだけ金融市場が神経質になっているということなのでしょう。今週も心配だわ、いろいろ。

2010年6月4日金曜日

首相の出身大学

そりゃ、東大が一番多いのでしょうが、麻生さん(学習院)、福田さん(早稲田)、安倍さん(成蹊)、小泉さん(慶応)、森さん(早稲田)、小渕さん(早稲田)、橋本さん(慶応)、村山さん(明治)、羽田さん(成城)、細川さん(上智)って、鳩山さんの前は宮澤さんまで戻るんですか…。ま、こんだけいて私の出身大学がないのもご愛嬌ですが(まさか大平さん以降いないのでは…)。
菅さんは東工大ですよね、確か。史上初?

私は格付け擁護派

私は昔から格付け、もしくは格付け会社擁護派でして、あんなものは信じる奴が悪いか、信じているふりをして案件通そうとしてるだけの部下を見抜けない上司が悪いと思っているわけでして、現在問題になっている「発行体/投資銀行からフィーを得ている」という指摘も、知っていれば、それはそれで、そういうシステムということを分かった上で利用すればいいのではないかと思っています。
その考えは個人的に格付けをどのように捉えるかという点においては、変わらない、つまり、参考にはするがそれ以上でもそれ以下でもないというか、企業財務を信用度という点から分析するという意味では同志(といったおこがましすぎますが)だし、たまーにコンファレンス・コールなどを聞いていると、確かに参考になることも言っているんだと思います。
ものごと知らない客に嘘は言わないまでも適当なこと言って、投信や保険を売ることと比較すれば、格付けの罪など知れているということでしょうか…。
とは言え、今日みたいに、CMBSの格付けがBaa2からB1、A3からBa3とか見ると、なんか、サブプライム問題というかCDOスクエアードとか思いだしてしまって、投資家さん大丈夫かしら、という気がしてまいりますが…。

2010年6月3日木曜日

会社型投信(2)

浅学は自分を責めるしかないのですが、ベンチャー・リヴァイタライズなる〝証券投資法人〟もあるのですね。運用会社はSBIアセットマネジメント、投資口の27.3%はSBIホールディングスが保有しているそうで。借入がないという意味ではベンチャービジネス証券投資法人と同じで、時価評価とか解約請求に耐えられないということなのでしょうが。

2010年6月2日水曜日

会社型投信

調べてみるもんですね。ベンチャービジネス証券投資法人という〝会社型投信〟があるのは知っていたんですが、運用しているのは三井住友アセットマネジメント(三井と住友の生損保運用会社合体)で、かつ、現在、上場廃止の猶予期間中というのは、知りませんでした。
バランスシートを見ると、借入がほとんどなく、いわゆる会社型にするメリットはそこにはないようです。要するに、基準価額が計算できない非上場株ベンチャー投資を、そうは言っても個人投資家のカネを集めてやるために設立したビークルということなのでしょう。ヘッジ・ファンドでもそうですが、投資家にリクイディティを与えると、結局はファンキーなことができないというジレンマがあって、そのあたりがプライベート・エクイティと言われる人たちの強みではあるのでしょう。プライベート・エクイティの人達が、究極の長期資金である上場を目指すのも分かるような気はします。
KKRとアポロは今年中に上場できるのでしょうか? できないに1万ドラクマ!!!

格付け

「いまだに格付けを信じるやつの気がしれない」というコメントが、たまたまというか、今日(3日)の米国での公聴会を前に、複数のメディアに出ていました。ま、一方で、スペインをフィッチが格下げしたとかいうのがニュースになるわけで、それはそれでメディアの矛盾だわなと思いますが、それはさておきということなのでしょう。
今日、知人と話していて思ったのは、格付けは宗教であると。信じる人は信じるし、信じない人は信じなければいいというのでしょうか。人に押し付けもせず、逆に、信じるなと強制をする必要もないのかなぁーという気がいたしますが、その意味では現在米国で起きようとしていることは魔女狩りに近いのかしら…。
拠り所がないと生きていかれない機関投資家が世界中にいる中、どういう決着がつくのでしょうか。

この国の形

常々思っているのですが、政治や政治家の質は、有権者の質を越えることは絶対にありません。なので、政権のあり様や政治について嘆くときには、個人や政党ではなく、まず、有権者がなぜそのような事態を呼び起こしているのかを嘆く必要があると思っています。
その意味で今般の首相交代を見てみると:
  • 日本に健全な二大政党制が根付くためには、どこかの段階で、自民党以外の党による単独での衆議院過半数維持が必要であった
  • 民主党の政権能力が、少なくとも当初から自民党と同じはずはない
という意味で、悪い意味ではなくて起こるべくして起きたと思っていまして、もちろん、政権を批判するのがマスコミの仕事だということは分かるのですが、国民としては暖かい目で見る必要があるのではないかと。実際のところ、今回の辞任の大きなきっかけになった事象も、自民党だったら、根回しがうまかったり、米国との対応がそつなかったりするだけで、本質的になにかが変わっていたかどうかは疑問です。たまたま、誰かが責任を取らなくてはならない時期に、責任を取る立場にいたということなのではないでしょうか。
個人的な好みとは関係なく、立ち位置的には、管さん50%、岡田さん30%、前原さん20%という確率で首相になるのではないかと思っていますが、英米両国のリーダーが40代だということも考慮に入るといいなぁー。

2010年6月1日火曜日

複利至上主義

最近はデリバティブ、デリバティブと言わなくなったので、複利至上主義というのはなくなったのでしょうか? 一時期は、複利が理解できない奴は金融業界にいる資格はないばかりの勢いでしたが…。
「複利は難しいです」「電卓では計算できません」と放置することで、金融業界の側が優越感に浸っていたことも否定できないと思います。しかし、難しいコンセプトを理解してもらうことがますます重要性を帯びている今、複利至上主義は極めて危険だと思っています。
実際、デュレーションを、単利の面から説明したテキスト・ブックが今まであったでしょうか? あるいはコンベクシティを? 試してみると、単利でも一般化できることであり、なぜあんな複雑な数式を用いるのかよく分かりません。なるほど、確かに時間の価値は重要ですし、それがないとデリバティブの本当の「アービトラージ・フリー」価格は分からないでしょう。しかし、それがなくても多くのことは理解できるのです。
いずれ、そんな、つまり、加減乗除しか出てこないファイナンスのテキストを書いてみたいものです。

掛け算と単位

子供の頃はあまり意識しなかったのですが、最近、掛け算と単位ということが妙に気になります。おそらく、これをきちんとやっているかどうかを見ることで、計算している人の思考プロセスが垣間見えるからでしょう。
たとえば、利率2%の定期預金に100万円を5年間預け入れた時の、満期時の元利合計を求めなさいという問題があるとします。税金を考慮しなければ、単利型で:
  • 100万円×2%/年×5年=10万円
が利息の額、したがって、元利合計は:
  • 100万円+10万円=110万円
が正解です。複利であれば:
  • 100万円×(1+2%/年)^5年=110万4081円
が答ですね。ここで、わざわざ「2%/年」とか「5年」という単位を入れることが重要ではないかと思っていまして、こうすることで感性が研ぎ澄まされるというか、必ず単位を入れるクセを付けることで、自分がなにをやろうとしているかが分かるように思っています。なぜか? それは、半年複利にしてみれば、式がこうなるからです:
  • 100万円×(1+2%/年÷2回/年)^(5年×2回/年)=110万4622円
もちろん、このあたりは文字式にしてみれば出てくるわけで、文字式で理解できる数学素養を持っている人にはあまりこだわってもしょうがないところではあるのですが、多くの人が文科系であって、しかも金融が難しいと思っているんだとすると、なかなか有効な方法ではないかと考えています。

清算機関

取引所と清算機関との違いがよく分からない人は多いのではないかと思います。取引所というのは、価格をマッチングさせるインフラを提供する場所であって、清算機関というのは、取引の相手方になるという違いがあります。もっとも、取引所が清算機関を兼ねているケースが多いのも事実です。
日本では、日本証券クリアリング機構(株式会社が「機構」っていう名称を付けるのは、どっかの銀行系ノンバンク集団みたいですが)が、上場株すべてと東証の先物・オプションを清算しています。一方、大証の先物・オプション等、東京金融取引所の先物は、それぞれの取引所が清算機関になっています。商品取引では、取引所の統廃合が進んでいて、先日は中部大阪商品取引所が解散を決めたと報道されていました(取引所は否定)が、それはさておき、日本商品清算機構(これも株式会社ですね)が清算機関となっています。
で、現在、世界各国で清算機関を通せという話になりつつあるデリバティブですが、実効性はどうなのでしょう。確かに、リーマン型の市場混乱を防ぐためにはプラスですが、透明性という意味では、強制ではないけれども既に清算機関を通じた取引が導入されているヨーロッパの例を見る限り、別に、目立った改善はないようです。強制すればいいのかもしれませんが、やはり、根本は、決済の問題というよりも価格の透明性ですよね。
その意味では、CDS取引の清算機関強制→取引所取引化への道と考えるのかもしれません。

2010年5月26日水曜日

究極のプライベート・バンクとは

日本では、プライベート・バンクは「カネ持ち相手に、業者の都合のいい(=儲かる)金融商品を売り付ける」という位置付けになっています。リーガル・エンティティが証券会社であれば仕組債、銀行であれば仕組み預金という形ですし、不動産に投資させることをプライベート・バンクと称している人たちもいるようです。
カネ持ちの人達がなにを求めているのか、また、そもそもすべての金融資産をさらけ出すのかという点については疑問点が多いのも事実ですが、本来あるべき姿というのは:
  • すべての資産運用について相談に乗り、適切な助言を与える
  • 必要に応じて、税理士や弁護士とも連携する
ということではないかと思っていまして、本当に日本の法制度でこれができないのかどうか悩んでいます。一番近いのは信託なのでしょうが、考えるだけで面倒臭そうですね。でも、投資ビークルがないからサービスが提供できないというのは本末転倒のような気がしていまして、本来的には、助言をして、その助言に対して対価が得られるのが筋なわけです。
確かに、日本人はサービスは無料だと思っているという傾向は変わらないと思いますが、こと運用に関しては、そろそろ「タダほど高いものはない」ということが浸透しつつあるような気がするのですが…。

ロングとショート

皆が疑問に思っていて、誰も答を言ってくれなくて、でもあまり声を大きく言えないこと。なぜネイキッド・ショートはダメで、その反対はいいのでしょう? 値段が下がると思うのは悪で、値段が上がると思うのは善というのは、確かに、インフレとデフレとどちらが人類に壊滅的かという過去20年程度の歴史を見ればそうかもしれませんが、ハイパー・インフレの時代に戻るのはいいという理屈には納得できないように思います。
ネイキッド・ショートを禁止するのであれば、逆に、株式を購入する場合には、その資金が借りたものでないことを証明させる、ネイキッド・ロングも禁止させるべきだと思います。

ヨーロッパの銀行の資金調達

サブ・プライム後の金融危機に際して、多くの銀行が簿外でSIVと呼ばれる短期CP発行媒体を管理していて、そこの資金調達ニーズはすさまじいものがありました。誰が、どれだけ、いつドル資金を必要とするか分からないし、SIVを助けるとなると果たして体力が持つかどうか分からないという信用度に対する不安もあり、というのがお互いに疑心暗鬼を呼び、金融機関同士で資金を融通しあう市場がマヒすることとなりました。その結果として、たとえば、「これ以上隠すことはない」ことを示すためを含め大銀行がSIVを連結対象にした上で解体するといった措置も見られました。
現在ヨーロッパで起きていることはそれに近いと言えば近いのではないかと思っていまして、本源的にドルの預金を持っていないヨーロッパの銀行は、国際業務でドル資産を保有していますから、銀行間で調達せざるを得ないわけですが、誰が、いつ、どれだけの資金を必要とするか分からないので疑心暗鬼になっているんですね。しかも、ギリシャ問題もあって、各銀行の信用度もあまり信用できないとなると大変なんでしょうね。
市場で注目されているのは、ひとつはTEDスプレッド、もうひとつはLIBORとOISのスプレッドで、前者は、たとえば3か月の米国債(トレジャリー・ビルのT)と銀行間金利(ユーロ・ドルでED)の差ですから、これが開くということは、リスクのないおカネの値段と、銀行の倒産リスクとが分かるというものです。OISは翌日物金利の将来の予測と考えればよくて、さすがに明日は潰れないでしょうというのの積み重ねと、たとえば3か月後には銀行だって潰れるかもね、というのの差が現れてきます。
報道を見る限り、英独仏の大銀行もドル調達に苦労しているようで、そもそもユーロ・ドル市場が発達した原因となったアラブの資金はどこへ行ったのかしらという気がいたしますが、まだまだ注目のようです。

2010年5月23日日曜日

みな分かっていることとは思いますが

貸金業法改正の完全施行が迫っていて、影響緩和策などがいろいろ出ているのですが、どうも議論が偏っているというか、腑に落ちないことがあります。それは、自己破産(民事再生でもいいのですが)に対する社会的な蔑視をやめさせることで、そのための手続きの簡素化というか、法律なのかカウンセリングなのかわかりませんが、もっと気軽に自己破産ができるようにしなくてはいけないと思うのです。
多重債務問題もそうですし、今回の総量規制もそうですが、要するに、借りられない金額を借りてはいかんということを、高い立場から法律という形でお上が仕切りましょうというコンセプトですよね。それはそれで日本的でいいとは思うのですが、そこには「借りたカネは返さなくてはならない」という道徳心が隠れていると思うのです。
もちろん、一般論としてはそれは正しいし、それがなければ契約社会が成り立ちませんから、民事訴訟や民事執行をつかってガンガンやってほしいわけですが、一方で、倒産法制がここまで整備されている中、法人、特に株式会社だけが借金踏み倒しOKというのはおかしいのではないかと感じています。倒産は、知識があって、高価な弁護士を他人のカネで雇える会社にやたら使い易く出来ていますが、本来の精神は、苦境に陥った債務者を、債権者平等の精神を以てすくってあげることが社会的にはプラスということがあるはずで、それは、債務者が個人の場合にこそ一層重要なような気もするのです。
なーんてことは、きっと私がいわなくても指揮者の方がいろいろなところで言っているはずなのですが、ちょっと言ってみたくなりました。

時代は新興国なのか

個人の資産運用について考えさせられることが最近多いのですが、目先の損得ではなくて、長期的に考えると、新興国って重要なのかもと思うようになっている自分に気づきました。もちろんひとつのきっかけはギリシャ問題であって、結局、先進国の人たちだってロクなことをしないとも言えるわけです。あとは、これは個人的には常々思っていることではありますが、やはり、人類の歴史上、低成長の先進国から、高成長(+人口増加)の国に資金が向かっていくのは当然なんだろうと。
もっとも、往々にして高成長国は法制度が相対的に脆弱であり、コーポレート・ガバナンスも先進国ほどではないという弱点があり、かつ、高インフレは通貨のリスクもあるし…。本来的には、そのような点をきちんとプロが判断してくれる投信が一番いいはずなのですが、投信は投信で金儲け主義がはびこっているので信用できないんですよね。
自分ではじめるか、というわけにもいかず、かといって納得できる商品が世の中にはなく、なかなか悩みは深いです。

ニューヨーク州知事選挙

スピッツァー氏が知事になる前は州の司法長官で、彼が例の高級コールガール事件で対象したあとを受けた副知事もスキャンダル絡みで再選を目指さないということで、民主党のほうはまず候補者選びからスタートするわけですが、昨日、現在の州司法長官で、お父さんも州知事だったクォモ氏が立候補を表明しましたね。民主党候補の指名選はまずまちがいなく大丈夫らしく、この11月の中間選挙に合わせて行われる知事選はクォモ氏対共和党候補となるようです。
米国では、さまざまな公職が選挙で決められ、選挙に際しては往々にして民主党か共和党かをはっきりさせ、対立候補が出てくるのが一般的です。これは、司法長官も例外でもなく、その意味では連邦の司法長官のように、選挙されるのではなくて指名されるのとは随分違う、もともとが政治的なポジションではあるんですね。
共和党の指名選を争っている有力候補のうち一人はラツィオ氏で、2000年(ブッシュ対ゴアの大統領選の年)に、ヒラリー・クリントンがNY州から連邦上院議員に立候補したときの共和党側の対立候補でした。久しぶりに見たら、それなりに年齢も召しているし、太ったんですかね? 自分は10年前と変わっていないと思っているのですが、他人から見ると同じ(随分変わったと思われている)なんでしょうね。

2010年5月20日木曜日

フリーコノミクス的な考察

東京体育館のプリペイド・カードには3,000円で3,500円分になるのと、5,000円で5,900円分になるのとがあります。正規と言いますか、一見(いちげん)さん料金は600円(プールの場合、2時間)なので、3,000円のプリペイド・カードを買うと、1回あたりの料金は、600円/回×3,000円÷3,500円≒514円29銭/回となります。同様に、5,000円のプリペイド・カードだと、600円/回×5,000円÷5,900円=508円47銭です。
この価格設定を見ると、3,000円分のプリペイド・カードは買ってほしいが、5,000円分のプリペイド・カードと3,000円分のプリペイド・カードはほぼ中立というか、どうでもいいと思っているように思えます。考えかたにはいくつかありますが、たとえば:
  • 3,000円の投資で500円儲かる → 儲け率は16.7%(500円÷3,000円)
  • 2,000円の追加投資で、さらに400円儲かる → 儲け率は20%(400円÷2,000円)
と、確かに動機付けとしては強いものの、既に16.7%のリターンを得ている人に対しては動意が弱いのではないかと思います。ま、そんな複雑な考えかたをしなくても1回600円が1回514円になると思えば安くなったと思いますが、1回514円が1回508円になったところで、安くなったとは思えないですよね。
おそらくですが、3,000円のプリペイド・カードを買うような人は、その時点でリピーターになることを確実視していて、さらに価格を下げることでより多く来てもらうメリットがプール側にないのでしょう。プールは典型的な装置産業といいますか、変動費がほとんどないビジネスですから、営業日は客が10人だろうが100人だろうがかかるコストは同じわけで、カネ払ってくれる人はみなありがたいのですが、どうせ来る人にサービスする必要はないということなんでしょうね。
なお、東京体育館には、ジム同様月会費で使い放題というプランもあるのですが、そうなると月5,800円です。プリペイド・カードで単価を514円29銭、または、508円47銭まで下げていると、12回以上泳がないとモトが取れない。うーん、このあたりの価格設定も不思議というか、是非、背景を聞いてみたいものです。

もっと勉強しておけばよかった

大学では一応経済学部ではあったのですが、講義にはほとんど出席せず、よく卒業だきたもんだといまだに思っているのですが、おそらくそれもあって、たまに「単位足りない、卒業(もしくは進級)できない」という夢をよく見るのでしょう。
それはさておき、インフレにはコスト・プッシュとディマンド・プルがあるみたいなことを習ったことがあって、実際に世の中に出てみると実はインフレはマネタリーな現象だなぁーと思っているわけですが、ブラジルの経済成長率が年率10%とかになっていて、供給が追い付かず、インフレ懸念があるとか。
日本の場合もそうだったのですが、経済が成長しているときに「インフレの芽を事前に摘む」と言って中央銀行が利上げできるかというと、実際には相当むずかしいというか、特に、ディマンド・プルの場合はそうだと思います。中央銀行が効果的なのは、あるいは活動すべきなのは、マネタリーなインフレのときだけなんだろうなぁーと。
ただ、マネタリーなインフレとはなんじゃいということを感覚的にではなく、アカデミックに説明できないのが、劣等生の悲しさというわけでして…。

2010年5月18日火曜日

恐怖指標

VIXというのはボラティリティ・インデックスのことで、要するに、S&P500のインプライド・ボラティリティの先物なのですが、ギリシャ問題がなかなか解決しなさそうだということで、またこれが上昇しているようです。
レバレッジド・ローンの世界では、個別銘柄のリスクではなくて、βのリスクと言いますか、個々のデフォルト・リスクの関係のないところで価格が動くことがありますが、このリスクはVIXでヘッジできるのではないかと理論上は考えられています。
コストの問題を考えると、VIX先物を買うよりも、VIXのオプションを買うほうが効果的だと考える人のほうが多いように思います。

2010年5月17日月曜日

ドコモ ワンタイム保険

金融に携わる人間として恥ずかしいのですが、ドコモと東京海上(って、正確には東京海上日動火災ですか)の業務提携の一環で、要するに、iモードから1回こっきりの掛け捨ての保険に入れるんだそうです。保険って、契約手続きがまどろっこしいのでついおろそかにしがちで、その分、入るときには短期・掛け捨てがもったいなくて、長期にしてしまって、かつ、長期だからというのでつい積立型を選びがちですが、ほんらいは、1回1回の航海に際して金持ちが引き受けてあげたリスクというのから始まっている(んですよね?)わけで、保険の本来の姿は1事象(=1回こっきり)掛け捨てですよね。
dwmailといい、iPhoneのものすごい攻勢に遭っているからなのでしょうが、最近のドコモのサービス、目が離せません。
ま、それより、これを機会に掛け捨て保険がもっと身近になって、若い人達にも保険の重要性を分かってもらえるようになればいいのにと思います。東京海上さんもそこが狙いなんだと思います。
それにしても、保険契約者がドコモで、被保険者が私たちというか、携帯の持ち主っていうことは、ドコモの立場は保険業法上なににあたるのかしら? 時間があるときに調べてみましょう。

ヨーロッパすべてに波及すると言ったのは私だけ

同じくAERA誌で、ギリシャ問題がほとんどのヨーロッパ諸国に波及すると答えたのを掲載していただきました。ユーロのことを「ドラクマーク」(ギリシャの旧通貨であるドラクマと独マルクを合わせた造語)というしゃれが英語メディアではさかんですが、要するに:
  • ギリシャを支えるために、他の国の財政状況がおかしくなる
  • 自分の国の財政がギリシャを支えるのが対有権者上耐えられなくなり、各国通貨に逆戻りする
というふたつのシナリオのどちらもありうると思っていまして、それがあの回答なのです。いずれにしても、ユーロという通貨が安くなることは必至ではないかなぁーと。
でも、ドル円は重要だけれども、ユーロ円は直接は重要ではないという意見もあるんですね。勉強になりました。

不動産についての言いわけ

AERA誌をご覧になって憤慨なさったかたに、宣伝をこめて。
あのコメントには「ハイパー・インフレになったら」という大前提がありまして、ハイパー・インフレになると経済が混乱してモノの価値の「価値」というところにすら疑義が生じ始めますから、そうなってくると「有事のゴールド」現象として、皆が欲しがるであろうものに需要が集中するであろうということも言いたかったのです。PERが高い株は、結局高くあり続けるというのに似た感覚といいますか、価格=人気であるとすると、理不尽なものほど混乱期に強いと言い換えてもいいかもしれません。
先日第1稿を書き終えた単行本(6月末か7月末にでる見込みです)でも書いたのですが、自分の住む家という意味では、どんな場所でも住めば都ですから、借金が返せて、払ったおカネの価値があって、ずうっと住みたい場所であれば、どこでもいいんだと思ってますよ、ホント。

2010年5月15日土曜日

格付け

米国で、格付け会社の規制案が金融改革法案に盛り込まれる可能性が出てきています。特定の証券に対する格付けを、どの格付け会社が付与すべきかについて、政府機関が決めるとか。実際問題として機能するとは思えないという論調が支配的ですが、当該修正案は上院で結構な賛成を集めたので、もしかするともしかするかもという懸念も出ています。
識者指摘のように、3大格付け会社は理由もなく大きくなったわけではなく、一応、survival of the fittestの結果なのでしょうから、ここでこのような規制ができた結果、独立系の格付け会社が果たしてその役割を果たせるのかは疑問です。ただ、その一方で、個人的には独立系のピュアな、つまり、高い格付けを付与しないとおカネがもらえないとか、そういう利益相反がない人達の格付けが受け容れられる「世の中」にはなってほしいと思っています。
そう、そういう「世の中」になることが重要なんですね。昨日付けのFT紙のLEX欄にもあるとおり、実際には、投資家の側で、独立系の意見にカネを払おうという人達はいないし、さらにいうと、(これは、私もいろいろなところで指摘していますが)投資家の側だって、実は甘い格付けが欲しいんです。そうでない限り、日本に2つも格付け会社があって、甘い格付けを出し続けているはずはないわけです。
「あそこの格付け会社の格付けは、実際には甘い」ということを皆が知っていて、かつその格付け会社の符号を使い続けるというのは、格付けの本来の目的を考えると道理に合わないですよね?
私が、金融の世界と関係のないところで、知人や家族とよく言うことで「政治家の質は有権者の質を越えられない」、つまり、どんな人が首相になり、どんな政策になっても、結局は自業自得でしかないという持論があるのですが、それに近い話なのです、格付けって。

2010年5月12日水曜日

住宅資金非課税限度額

住宅資金のためであれば贈与税が安いあるいはかからないというのは知っていたのですが、あらためて調べる機会があったので、今回の税制改正と併せて見てみると:
  • 直系尊属1人1500万円まで無税(原則)
  • ただし、来年だけにもらうのであれば1人1000万円まで
ということですかね。それにしても、1500万円ですか…。両親祖父母がすべて生きていたら9000万円。夫婦で1億8000万円ですね。子供がいたら、自分の親(=子供の祖父母)を使えばいいので、要は、親が金持ちだったら、自分が住むでっかい家を買えって、そういうことなのでしょうか。庶民であることがますますみじめになっていきます。

英新首相

結局、少数与党ではなくて、連立与党ということですね。キャメロン氏は官邸前の演説に際して「ハング・パーラメント」という表現を用いていましたが、報道を見る限り、リブデムから3名入閣、クレッグ氏が副首相就任ということですから、少なくとも当面は安定与党と考えるべきなのでしょう。
それにしても、キャメロン氏はまだ誕生日(10月)が来ていないので43歳ですよ。ブレア氏も充分若かったですが、それでも44歳になる直前ですよね。いやいや。Wikipediaによると、キャメロン氏はウィリアム4世の子孫だとか。
オバマ大統領は48歳ですか、今。日本はいつそんな国になるのかしら…。若い人が選挙行かないんだから、永遠にそうはならないのかもしれませんが。

格下げのタイミング

このタイミングが悪いと言っているわけでもないし、格付けというビジネスが楽だというつもりもありません。また、報道≠公開情報、では正確性の上ではないので、それに依存することも危険です。
新生銀行の格付けにつき、昨日、ムーディーズがA3からBaa1というのには気付いていたのですが、フィッチがBBBからBB+にまで下げていたんですね。今、インターネットで見た限りには「新生」「ジャンク」という検索でヒットするニュースはありませんが、今後、どうなるでしょう。
で、確かに決算数字の確定を待っているべきだったという理屈は分かります。しかし、格下げが昨日だったということは、昨日中には預金した人、金融債を買った人、などがいるわけですよね。自己責任と言えばもちろんそれまでですし、繰り返しになりますが、拙速な格下げなどできるはずはないのですが、本件については、もっと早くてもよかったのではないかというように思っています。
今確認できる限り、S&PはBBB+安定的、R&IはBBB+安定的、JCRはBBB+ネガティブと、ウォッチ・ステータスでもないようです。今日・明日でしょうか? また、「所詮フィッチ」ではあるのですが、報道されたときの反応にも注目です。
なお、フィッチのこの格付けだと、新生さんがカウンター・パーティになっているデリバティブが組み込まれているストラクチャード・ファイナンス案件のフィッチによる格付けにも影響が出るような気がします。時間があれば、あとでクライテリアを確認しておこうと思います。もっとも、フィッチが格付けを付与したストファイ案件がどの程度あるのかは別の話ですが。

2010年5月11日火曜日

旭硝子Q1決算

絶好調! 電子・ディスプレー事業で売上が7割増、利益4倍ですか。知らなかったんですけど、液晶モニターとか液晶テレビの我々が触れる表面って、ガラスなんですってね。日本電気硝子さんも決算好調だったし。
他に同業は、米国のコーニングと、あと、日本で小さな会社がひとつあるだけと聞いています。液晶需要がなくなるとは(しばらくは)思えないし、見通し明るいですかね。
税金があるので第1四半期のキャッシュ・フロー計算書はあまりあてにならないのですが、前期に設備投資額が多かったせいか、今回は少なめで、フリーCFも充分に出ています。

J-REIT

FCレジデンシャル投資法人というところが、今朝の開示資料によると、増資停止の仮処分を食らったみたいですね。詳細は分かりませんが、同投資法人はもともとレバレッジが低い(借入が少ない)わけで、増資によってレバレッジを下げる必然性がないことは財務諸表を見れば瞭然です。ということは、なにか別の意図があって増資をしようとしたのかもしれず(増資先はそれを示唆しているようには見えます)、仮処分申請となり、認められたのでしょうか。
投資法人側は、今日中に保全異議を申し立て、その申し立て自体に対する決定が今日中にでることを予想しているとのこと。この手の裁判ですべての内容を公開することは難しいのかもしれませんが、でも、公開してほしいですね、なにが起きているのか。

<12日(水)朝>
追記です。今朝ほどの開示資料で、仮処分が認可されたと出てました。で、増資中止だそうです。大手REITではないのであまり注目されてませんが。

<12日夜>
ファンドクリエーション自体の増資(第三者割当)は、滞りなくすすんだようです。いちごアセットトラストから1億1275万円が払い込まれたと。

2010年5月10日月曜日

衣食足りて礼節を知る

「カネを出した分の価値」という表現は、ブルジョワめいているというか、金持ちみたいな発想ですよね。しかし、多くの場合「コスト・パフォーマンス」と言い換えられるはずで、要するに、100円であっても、価値のないおカネは使いたくないということなのではないでしょうか? 逆に言えば、5万円であっても、10万円であっても、コスト・パフォーマンスが合えば、つまり、「払ったおカネの価値があれば」それは使うということなのでしょう。
ただ、難しいのは「衣食足りて礼節を知る」というのと同じ感覚で、使える絶対額があるからこそ、コスト・パフォーマンスなんてことが言えるということなのでしょう。つまり、自転車の数万円であればコスト・パフォーマンスを考えられても、100万円の乗用車ですら買えない庶民は、数百万円の車のコスト・パフォーマンスなんていうことは想像すらしないですし、500万円の車のコスト・パフォーマンスを気にしている人であっても、プライベート・ジェットとファースト・クラスに乗り続けることと、どちらのコスト・パフォーマンスがいいかなどと想像しない人のほうが多いでしょう。
「衣食足りて礼節を知る」という言葉は、実は「衣食が足りないと、礼節など構っていられない」という事実の裏返しなわけですが、コスト・パフォーマンスもそうなんですかね? と、普段の買い物はまず百均にいく庶民(=私です)は思うのでした。

インフレと中央リニア新幹線

確かに、日本って過去20年近く、インフレなかったですよね。JRの初乗り料金なんてほとんど変わらないですし、目立って値上がりしたのってタバコぐらいですか? 缶コーヒーの定価は上がってますし、確かに、自動販売機やコンビニで買わざるをえないときもありますが、ドラッグ・ストアで飲み物の値段を見ると、目まいがするくらい安いです。テニスのラケットの値段も、テニス・シューズの値段も、変わっていないか下がっているくらいですし、ウェアなんて、Tシャツの価格は下がり続けているし、高機能性のスポーツ・ウェアって、買うところで買えば、冗談みたいな価格です。
ということを思ったひとつの理由は、今日(5月10日)、中央リニア新幹線の価格設定が話題になったという報道があったからで、リニア新幹線の東京・大阪間の価格は、のぞみよりも少し高くなって1万5000円程度とか。でも、2045年の話ですよ。そんな先の話を、現在の物価水準を基準にして、なにか意味があるのでしょうか?
インフレについては、「日本は国債をあといくらまで発行できるのか」という議論も同じです。なるほど、今日、明日の話であれば、現在の物価水準を基準にして金額を語ることに意味はあるでしょう。でも、数年後なんて、ハイパー・インフレで貨幣価値が10分の1になってるかもしれないじゃないですか。10倍のインフレになっていたら、国債の残高は10倍までOKなわけですよ。
ま、そもそもデフレを放置してきた政策担当者は誰だ?という話と、一方で、デフレによって恩恵を受けている人もいるというこなのでしょうが。

アコーディア減収増益

減収にもかかわらず営業段階で増益ということは、要するに営業経費が削減できているということですよね。規模でやっていけてるのはもはや2社しかないのでしょうが、たいしたものです。
いわゆるフリー・キャッシュ・フロー(営業CF-投資CF)が二期連続でマイナスで、前期はその分を借入で賄っていますが、今期は手ガネを使っていて、その分、手元現金は少なくなっています。投資CFに200億円近く使う会社の手元現金が46億円というのはちょっと少ない気がしますが、この営業CFがあれば、カネは借りたいときには借りられるという算段なんでしょうね。
全般的には、見た目は好調、しかし、フリーCFが不安というところですが、最近の倒産事例を見ると、フリーCFよりも見た目の数字(特に、債務超過か否か)を注目する傾向があるようですから、しばらくは安全そうですね。
銀行のそのような態度が正しいとは思っていませんが。

2010年5月7日金曜日

英国総選挙

ある程度は覚悟していたものの、誰も過半数を取れないというのは結構嫌なものですね。記憶にあるわけではないのですが、前回のhung parliamentのときはすぐに総選挙になったわけで、今回もそうなるのだとすると、せっかくEU内の非ユーロ国というユニークな地位が、不透明感というマイナス材料で打ち消されてしまうかもしれません。
もっとも、1974年当時とは異なり、英国病ということもないのでしょうし、また、日本(そしておそらくは他の国も多かれ少なかれ)同様、官僚機構はしっかりしているでしょうから、政治的な意思決定が必要でな部分についてはあまり心配はいらないのでしょう。
もっとも、こういう時期だからこそ財政政策に指導力が必要というのも事実ですね。ここ数日間は英国政局から目が離せないかもしれません。

2010年5月6日木曜日

投資用アパート

ちょうど今、居住用不動産の本を書いているところでして、その中で「投資用マンション」というセクターについても少し調べたのですが、世の中には、投資用マンションでは飽き足らず、投資用アパートなるものを買う人もいるようです。一般的には、アパート投資というのは、土地持ちがハウスメーカーからの提案にのって、カネを借りて上物を建てるというのが相場なのですが、投資用アパートでは、ハウスメーカーではなくいわばデベロッパーが登場してきて、土地を仕入れ、上物を(自ら)建てた上で、投資家に売るという仕組みです。投資用マンションのアパート版と考えればいいでしょう。そこで名前を聞く会社のひとつ、コマーシャル・アール・イーが民事再生法の適用を申請したとのこと。半年ほど前にひそかに債務超過になったときからちょっと心配はしていたのですが…。
報道を見るだけではなんとも言えないのですが、債務超過によって銀行が愛想を尽かしたというところではないかと思いまして、債務超過そのものは企業の借金返済能力と直接の関係はないんだがなぁー、と言いたくもなりますが、続報で確認いたしましょう。

2010年5月3日月曜日

ギリシャの私的整理

今日のいろいろな報道を見ていて「なにか、どこかで見たことのある話だなぁー」という感が抜けなかったのですが、今やっと思い当たりました。今回、国とかユーロとかIMFとかが絡んでいるので複雑な話のように見えますが、結局、起きていることって、ここ10年以上日本で日常茶飯事的に見られる(事業再生があるかどうかはともかくとして)私的整理と同じ構図、もっと正確に言うと、ここ2~3年増えた、プライベート・エクイティ会社と銀行の交渉と同じではないかと思っています。
ギリシャが会社、ギリシャ国民は従業員、IMFやEU加盟国は株主、ギリシャ国債を保有している人たちは銀行や社債権者ですね。矮小化して喩えると、ギリシャという会社が赤字垂れ流しになって、借金が返せなくなったのだけれど、潰れてしまっては困るという意味では債権者も株主も同意しているので、債権者が株主にプレッシャーをかけてカネを出させ、株主としてはその見返りにリストラを強要していると。給与や福利厚生をカットして、元利払いや配当に回す原資を確保しなくてはならないということです。
今現在の個人的な感触としては、今回のは長期的にはうまくいかないのではないかと思っていまして、というのも、社会的使命のないものを作っている会社のターンアラウンドが極めて困難なのと同様、競争力があって魅力的な社会を構築して財政基盤を安定化させることはとても難しいからです。ですから、まずコスト・カットに手を付けるわけで、このあたり、事業がうまくいかなくなったプライベート・エクイティ案件に似ていますが、それも限界がありますよね。
ギリシャ国民の資質について語れるほど詳しくはないので、その意味で今回の試みの成否を占うのは僭越ですが、少なくとも企業とのアナロジーで考えると、一筋縄ではいかんわなと。潜在成長性が高いのに外的ショックでやられた韓国の話とはわけが違うと思います。
日本史で習ったものを改めて確認したのですが、日本がIMF14条国から8条国に移行したのは 昭和39年4月とのこと。

2010年5月2日日曜日

バランス・シートを使うということ

ウォール・ストリート・ジャーナル紙の「ディール・ジャーナル」というブログに「そうは言っても、たいしたもんだ、ゴールドマン」というのが出てました(http://blogs.wsj.com/deals/2010/04/30/give-goldman-sachs-some-credit/)。他の金融機関と比較すると、会社のとっているリスクの詳細と、それに対する対処法に関する本当のトップ経営陣の関与度合いがすごいというのが内容です。
金融機関は多かれ少なかれ自らのバランス・シートをリスクにさらしながら業務を行っているわけですが、ということは、常に、重要な意思決定をしなくてはならないわけです。金額の多寡という話はあるにせよ、そして、トップがそもそもどのようなキャリア・パスを経てそこにたどり着いたかの差はあるにせよ、やはり、リスクに敏感というか、バランス・シートを使うビジネスであれば、バランス・シートに対する経営陣の感応度は重要ですよね。
これは投資銀行というよりも、むしろ、より本質的にバランス・シートをリスクにさらしている商業銀行のトップに一層必要な資質であろうとも思います。

2010年5月1日土曜日

ゴールデン・ウィーク

ゴールデン・ウィークということで日本の政局は一休みのようですが、帰省して、一般紙だけを読む生活をしていると、普段よりも政治のことが気になります。たまたま、アエラ誌にもコメンテーターの一人として端役ながら日本財政破綻についての意見が掲載された週であったこともあるのですが、この国の将来大丈夫なんだろうかということが気になり、ギリシャ問題や、英国首相の失言などを見ていたりすると、やはり、国の顔は首相で、好むと好まざるとのかかわらず、首相を通じて国民が判断されるところは否定できなかろうと思っています。
政治課題山積みな中、日本の格付けがどこまでもつのか、注目ですね。
救いは、(言葉の問題もあって)他の諸外国の先進国ほど日本のことがよく知られていない→外国人は日本のことを分かっていると思わない→首相の発言も割り引いて考える→日本駐在の人の意見を重視する、というプロセスで、欧米格付け会社の方々が3社とも相対的に冷静なことでしょうか。

2010年4月29日木曜日

インベストメント・グレードという怖さ

以前から思っていることではあるのですが、インベストメント・グレードのデット(債券・債権)というのは、インベストメント・グレードであるがゆえにどうしても分析が甘くなって、結果、マージン・オブ・エラー(誤差の余地)が少なくなる投融資をしてしまう傾向が出てしまいます。結果論との謗りを甘受する前提で申し上げると、ABS-CDOやCDOスクエアードもそうですし、邦銀がおおやられしたSIVのキャピタル・ノート、ビスポークCDOにしても、そのように考えられます。
逆に言えば、もともとが投機的格付け、ジャンクとされる投資対象に幅広く資金をつぎ込もうと考えると、そもそもが危ないという前提でスタートしているだけに分析も慎重になりますし、また、しくじったらおおごとになるというデットの特性を分かりながら、かつ、しくじる可能性が相応に(すくなくとも統計上は)ありうることを分かって投融資しますから、マージン・オブ・エラーを充分に加味しながら進むことになります。結果として、分析能力が優れていれば、分散投資の効果もあるのでしょうし、それなりの投資リターンを上げることができるようにも思われます。
べつにこんなことは今に始まったことではないのですが、たまたま、ヨーロッパのソブリン・リスクの顕在化の話と、一方で、米国でブラックロック、ブラックストーン、ゴールドマンがレバレッジド・ローンを運用対象とする投信を設定しようとしているというニュースを見まして、あらためてこの感を強くしたものです。
ギリシャがついこないだまですべての格付け会社からインベストメント・グレードであったことに批判は多くないと思いますし、今回のS&Pの格下げ自体も批判されるべきではなかろうと思っていますが、ショック一発に弱く、しかも「投資適格の国の国債だぜぇー」という感覚のもと、マージン・オブ・エラーが少ない、つまり、分散投資をしないでギリシャ国債に投資していた人は多かったのではないかと思います。現在のJALの債券・債権を5~10%程度の利回りで多額に買う人はいないと思いますが、それは、危ないことが分かっているからで、相応の利回りで、かつ、少額であればスパイスとしては悪くないという感覚が一方ではあるでしょう。インベストメント・グレードは、どれだけ冷静な人でもなかなかそれが出来ないというところに怖さがあるのです。
ということを考えて日本の社債市場を見てみると、情けなくなりませんか? だって、スプレッドがほとんどなくてマージン・オブ・エラーを許さない債券しか取引できないんですよ。なかなか、まっとうなクレジット投資家(ならびに業者の側のクレジット専門家)が育たないわけです。

激変緩和措置と消費者金融業界

ムーディーズさんが「証券化への影響はあまりありませんよ」というコメントを出していたので、改正貸金業法施行に伴う激変緩和措置なるものを金融庁のホームページで見てみました。なるほど、借り手保護としては面白いというか、カネが借りられなくなると困る人に気を遣っているのは分かります。曰く:
  • 一定の「要件を満たす借換えを総量規制の例外として位置づける」
  • 「資産の裏づけがある貸付けや、将来的なキャッシュフローにより返済能力がある貸付けについては、『適用除外』に変更」し、それが「リボルビング契約の場合には…リボルビング契約について求められる定期的な返済能力調査義務を解除する」
と。ふむふむという感じがいたしますが、直接的に消費者金融業界のプラスにはならないんでしょうね。結局のところ、消費者金融業界の根本的な問題点は金詰まりであって、金詰まりの原因は収益性の悪化であり、収益性の悪化は規制強化ですから、規制を一部緩めることがマイナスでないことは確かなのですが…。
既存債務者の借り換え(「おまとめ」?)に応じて上げるというビジネス・モデルもありうるのでしょうが、そんな体力もなさそうですし。
つまるところ、利息制限法を越えた利息であっても借りたい人、その利息でないと貸し手の側のリスク/リターンが合わない人というのはいるわけで、リスク・ベースの利息設定をきちんとした上で、どうしてもというのであれば、業者に補助金を出すしかないのでは?という気もいたします。

2010年4月28日水曜日

ギリシャの影響

以前も書きました(http://ryosuke1967.blogspot.com/2010/04/blog-post_23.html)が、ギリシャ共和国(「ヘレニック・リパブリック」と呼びましたが)は相応の円建て債券を発行しています。すべてが個人投資家に売られたわけではありませんが、証券会社などでは「ギリシャ『国債』」といって販売しているわけで、安全だと思っていた人は沢山いるのでしょう。
それよりも、リーマン・ショックならぬギリシャ・ショックで、世界の金融市場が再度パニックになる可能性はないのか? まだ確率は40%くらいだと思いますが、先週末よりは確率が高まっているとは言えますね。

ギリシャ、ポルトガル

EU/IMFへの支援要請で一旦おさまるかに見えたギリシャ問題ですが、なかなかどうして。広い意味では、政治・経済的な統合をしないまま通貨(=金利)統合をしたことのツケではあるのですが、そんな根本的なことを言ったところで目先の問題の分析にはあまり役に立ちません。
考え方として「EU=中央政府」「構成国=地方公共団体」というアナロジーが正確かと思った時期もあるのですが、国というレベルで有権者から選ばれている人達と、地方公共団体とでは議会・政府のプライドや使命感が異なるわけで、言葉も、文化も、人種も、宗教も、「平均的に」見ると異なる国々が助け合うことを期待することは、理屈の世界ではともかく、有権者の感情を配慮しなくてはならない世界では、難しいのかもしれません。
アルゼンチン型の(ほぼほぼ)強制的な債務交換も視野に入れたほうがいいかもしれませんね。さもないと、特にドイツで世論が納得しなさそうです。となるとCDSのトリガーになって…というシナリオになりそうです。スプレッド的にはビスポークの合成CDOに入っていて不思議ではないですが、一般的にはソブリンは入らないのではという気もしています。
ポルトガルはどうか? EUも自分達を守る必要がある(結局、安全なのは、過去の例から見るとドイツだけ:イギリスは通貨統合していないので、別の議論)ため、ギリシャでとどめるのではないかと思いますが…。ショートで儲けたいのであれば、負債のGDP比率、公債費のGDP比率、そして、過去のスワップ取引でこれらの数字を誤魔化していないか、といったあたりに注目するのでしょう。

2010年4月27日火曜日

同業他社比較

4月も末が近付いてきて、決算発表が増えてきました。
決算発表は、決してエクイティの人達のためだけにあるのではなくて、実は私達デット側の人間にとっても極めて重要です。というのも、ある会社の業績がいいのか悪いのかを判断する上で同業他社との比較は不可欠で、一番容易な同業他社比較は上場会社の公表されている決算と比較することだからです。
つまり、本当は今日の今いまなど、銀行の審査担当者は決算短信のプリントアウトが机の上に山積みになっていなくてはいけないわけです。って、実際はなかなかやらないんですよねぇー、不思議です。

日本財政

昨日発売のAERA誌に多少コメントが掲載されてましたので(もっとも、他の著名な方々とご一緒してますからまったく目立ってませんが)(記事の概要はhttp://www.aera-net.jp/summary/100425_001613.html)、言葉足らずの部分を含めて整理を。
私が日本財政は破綻しないと思う理由は大きく分けて二つあります。
ひとつは「実質破綻を名目で逃げる」、つまり、ハイパーかどうかは別にして、インフレ状態にして実質債務を減らすという手があると思っているわけです。そんなものは形を変えた破綻なわけですが、名目的には逃げられるわけですね。なので、同誌に出ていた「あといくら借金できるか」という議論については、インフレを無視しているので、どこまで意味があるのか、という考えもあります。
もうひとつは、そうは言っても日本人が自分の国が財政破綻するのを指を加えてみているとは思えない(思いたくない)というものです。最後には情緒に理屈が勝って、増税を政策として上げる政党に投票するはずだと考えています。
後者については、実は相当危険な賭けだということは分かっていて、国民の政治無関心、政党の機能停止、首相の指導力、など、悲観的になる要素はいっぱいあるのですが、だからこそ、我々の世代が、若い人たちや自分の子供達にきちんと伝えるべきことを伝えるのが重要だと思うのです。

金利リスクとストラクチャード・ファイナンス

ストラクチャード・ファイナンスに限ったことではないのですが、カネ貸しというのは、本質的には金利リスクを取るべきではありません。金利リスクはマーケット・リスクであって、(市場性、つまり、動きからの損益発生が期待される場合を除く)クレジット・リスクとごちゃ混ぜにすべきではないからです。
しかし、世の中そんな純粋なことばかり言っていられないのも確かです。避けなくてはいけないのは「この程度のリスク、とっちゃおうや」と、往々にして素人が結論付けることで、玄人が吟味の結果リスクを取ることにしたのならともかく、素人(しかも、そういう人に限ってクレジット・リスクの分析もいい加減だったりする)がそういうことをすべきではありません。ま、そういう組織はいずれなんらかの形で痛い目に遭うのでしょうが。
ということを、フィッチの、ストラクチャード・ファイナンス格付けに伴う金利リスクの考えかたについてのリリース(http://www.fitchratings.com/creditdesk/press_releases/detail.cfm?print=1&pr_id=574036)を見て思いました。

2010年4月23日金曜日

また為替ヘッジの被害

以前、同じことを書きました(http://ryosuke1967.blogspot.com/2010/04/blog-post.html)が、また、ヘッジの損失が一因となったような倒産が発生(http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3262.html)しています。
業界の人が言う「輸入」、つまり、ドル高をヘッジする人たちというのは、ドルが安く(円が高く)なれば、その分、ヘッジ取引単独で見れば損をするのは当然なのですが、それは特損であって、原価も下がっているはずでからチャラパーになるべきです。特損が効いてくるのは、損益計算書上の数字、または、差損益を反映した貸借対照表の自己資本で、特に自己資本が棄損して債務超過になると、これは形式上はまずい。しかし、あくまでも形式上の話なので、取引先、とくに取引金融機関はこれを気にするべきではない。
というのは理屈なのですが、実際には、為替の取引をメインとだけやっている中小企業というのはなく、むしろ、メイン以外とやろうとする人達も多いわけですが、そういうヤンチャをしていると、生殺与奪を握っているメインからしっぺ返しを食うわけですな。
それがいいとは決して思えないのですが、とかく、資金繰りの切れ目はそのまま企業の存亡につながりますから、なかなか、力のあるメインとの付き合いは変えられないという呪縛、どうしたらいいんでしょう。

消費者金融証券化

S&Pさんの「Performance Watch: Update For Cashing And Consumer Loan-Backed ABS Transactions In Japan」というのを見ていて、確かに、現象面だけから見ると「さほど変わっていない」というトーンにあまり違和感はないのですが:
  • 傾向値として専業とカード・キャッシングとの間のデフォルト率のかい離幅が広がっている
ことはやはり気にすべきかと。その上で、元本返済率を見ると:
  • 専業のほうは一貫して低下傾向
  • カード・キャッシングのほうは上昇から安定化
であり、専業のほうの借り手が元本を返済しない(できない)状況が悪化しているように思われます。この原因は簡単で:
  • 専業は既存顧客に対する追加融資率が下がり続けている
  • カード・キャッシングのほうは上昇から安定化
しているからです。
なにが起きているのか? 原因はともかく:
  1. 専業は追加融資をしていない
  2. その結果、債務者は、追加融資を原資とした返済(同一社か、消費者金融会社タライ回しかは別として、セクター内での借換)ができなくなっている
  3. 借り換えられなくてデフォルトしている
ということが見て取れます。
このあたりのところを踏まえて、アコムさんやプロミスさんの格付けや社債利回りも注視する必要があるんですよね。

ギリシャの円建て債券

昨年6月の有価証券報告書によると:

  • 95年発行、2015年償還 200億円
  • 96年発行、2016年償還 300億円+400億円×2=1100億円
  • 97年発行、2017年償還 300億円+500億円×2=1300億円
  • 99年発行、2019年償還 250億円
  • 00年発行、2010年償還 400億円
といったところが、200『6』年12月31日現在、残高が残っている模様です。ブルームバーグでもあれば、もう少し詳しいことがわかるのですが、そうでなくても充分に恐ろしい状況です。
ところで、有価証券報告書の虚偽記載は金融商品取引法違反になると思うのですが、ギリシャは大丈夫? ソブリン・イミュニティ?

2010年4月22日木曜日

パナソニック2ノッチ格下げ(フィッチ)

三洋電機の株式取得が原因ですか…。ムーディーズがAa3、S&PがA+のところを、AからBBB+とは…。フィッチやるなぁー、とは思いますが、ちょっと無謀ではというのが第一印象です。
ただ、私自身、三洋電機のも、パナソニックのも、きちんと財務分析をしたことがないので印象でしかありませんけれど。

トヨタの格下げ

ムーディーズのトヨタさんの格下げはどう考えるべきか? 個人的には遅すぎたと思っています。なるほど、トヨタさんのような偉大な会社を格下げするのに躊躇する気持ちは分かるのですが、やるなら数か月前でないと情報としての意味を持たないと思うのですが…。
もっとも、それをやるためには、格付けされる側も大人にならなくてはならないわけで、このあたりが、格付け手数料をもらうビジネス・モデルの限界というか、情報料として投資家からカネを取らないことの限界なんでしょうね。
デンソーさんの格下げについては、「トヨタ・シーリング」と考えるのでしょう。それ以外に(実際には)あまり意味があるとは思っていませんが(個人的には、ですよ)。

<後日談 2010年4月23日午後10時14分>
格下げの直後にムーディーズが電話会議を開催しており、その録音を聞きました。結論から言うと「前より悪化している→格下げ」ということのようで、このあたり、Aa1からAa2という気安さもあるのではないかと勘繰ってしまいます。もちろん、背後では膨大な分析がなされているようで、米国での退職給付債務とか、米国の販売金融子会社が負っている残価リスクについても質問にしっかり答えてらしたので、流石という感はいたしますが…。

ソフトバンク格上げ

やれウィルコムだ、レコード・レーベルだ、と言っているこの時期にどうかという気もしますが、S&Pがソフトバンクの格付けをBBからBB+(ダブルBプラス)に上げています。以前、頼まれて真剣に中身を検討したことがあって、それこそ、同社のだけでなく、KDDIさん、NTTドコモさんと、すべての決算発表会、アナリスト説明会のビデオも見ました。結論的には、携帯が安定的にキャッシュ・フローを生み出していること、設備投資がさほど必要でないこと(もちろん必要ですけど、フリー・キャッシュ・フローを大きく損ねるほどは必要ではない)、あたりがポイントなのと、あとは、経営陣(孫さんですね)が、フリー・キャッシュ・フロー水準と、純負債削減水準を「コミット」していることあたりがポイントで、この会社の信用リスクは許容範囲ではないかと思いました。とはいえ、おそらく結論自体はKDDIさんについてもNTTドコモさんについても当時は同じで(KDDIさんについてはJ:COMさんの件の前でしたので)したけれど。
このあたりの銘柄の分析について、格付け会社さんに依存しなくてはならない金融機関は情けないですが、結局、S&PのBB+はS&P的にはジャンクなわけで、ということは、社債に投資する人は日本の格付け会社の格付け見ているっていうことですよね。このあたりが、クレジット市場のプロとしては忸怩たる思いがするわけです。

2010年4月21日水曜日

英会話のジオス

英会話のジオスが、帝国データバンクによると「準自己破産」申請(http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3261.html)とか。自己破産とは債務者自ら(この場合であれば株式会社ジオスという法人ですか)が破産を申請することですし、債権者が破産を申し立てることもできるわけですが、今回は、破産法19条1項2号に基づく取締役による申し立てということなのでしょう。従業員が従業員としての立場で破産を申し立てるわけにはいかないのではないかと思っていまして、その意味では債権者として(破産法18条1項)なのかしら?と思っていますが…。債権者であれば同法18条2項、取締役であれば19条3号により、「破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない」みたいですけど。
同社は上場していない(ですよね?)ので、財務内容に関しては申し上げられませんが、以前にノバの決算書の内容は見たことがあるので、ご興味があるかたは(と、また宣伝になるわけですが)拙著「決算書のワナ-危ない会社の見破り方-」(扶桑社)(http://www.fusosha.co.jp/book/2008/05828.php)もご参照ください。

INGの不動産運営会社とクリードの不動産私募ファンド

ING不動産投資顧問がクリードのファンド運営を受託したというニュース、結構探してやっと見つけました、プレス・リリース(http://www.ingreim.com/reim/press/news/99_2010/20100419_CREP.jsp)。これをみる限りでは、関東財務局長(金商)第485号の「ING(註:全角です)不動産投資顧問株式会社」が受託したかどうか確認はできませんが、さすがに日本の不動産を対象に「ファンド運営を受託」したのですから、金商法上の投資助言・投資運用する会社がやっているのでは、と思います…。
もっとも、別のニュース(http://www.investmentnews.com/article/20100418/REG/304189976)によると、INGは不動産運用ビジネスの売却を考えているようで、ブラック・ロックが候補として挙がっているとか。コーポレート・ファイナンス、ストラクチャード・ファイナンス、不動産ファイナンスという3つの流れというか、不動産ファイナンスがストラクチャード・ファイナンスの一部であるという考えは世の中的にはもう古いのかもしれませんね。

2010年4月19日月曜日

拙著の宣伝(便乗)

今般の米国での訴訟ネタを見ていて、もう一度、そもそもなんでこんなことになったのか、あるいは、投資銀行の人達というのはどういうメンタリティを持っているのかといったあたりに焦点が当たってもいいのかなぁーと思いました。
そんな方々のために(ここから宣伝です):
がご参考になるのではないでしょうか?
前者については、今は昔といいますか、外資がどのように稼いだかという話を書いたのですが、特に批判的ではなく、冷静に、かつ、日本人とは視点が異なるという点に焦点を当てたつもりです。
後者は、逆に、金融市場来し方行く末を意識したもので、サブプライム問題の背景などについて、執筆当時までの事象を基に書いたものです。
お時間があれば是非是非(と宣伝でした)。
宣伝ついでですが、盟友の山下章太氏が「金融マンのための実践デリバティブ講座」(中央経済社)(http://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-67560-7)という新刊を発表しています。拙著の何冊かとかぶりますが、そんなケチなことは気にせず、ついでに宣伝させていただきました。

プロ対プロじゃないのかしら…

ゴールドマンに対するSECの訴状(http://www.sec.gov/litigation/complaints/2010/comp21489.pdf)を読んでみました。いろいろなところで取り上げられていますし、いろいろな解釈がありうるのでしょうが、私が見たところ:
  • パラグラフ45 『ポールソンが空売り側で銘柄選択をしていることを知っていたら、ACAは同CDOの銘柄選択エージェントには就任しなかった』
  • パラグラフ59 『ポールソン側が空売り側で関与することを知っていたら、IKBは当該証券を購入しなかった』
  • パラグラフ62 『ポールソン側が空売り側で関与することを知っていたら、モノライン(保証会社)としてのACAは、当該CDOのスーパーシニアのラップ(保証)を合意しなかった可能性が極めて高い』
ため、ポールソン側の関与を開示しなかったことが違法だということなのでしょう。
うーん、パッと見、Yes-Noで答えられる質問に虚偽の回答をしたわけではなさそうなので、プロ同士の取引であれば、すべての情報を開示することを期待するほうがおかしいのではないかという気がします。というのも、売り手と買い手との利害が相反するのは当然であり、たとえば、(ほんとにたとえばですよ)ソロス氏が円を売っているというニュースを聞いたところで、すべての投機家が円の売り手に回るわけではなく、ひとつの材料でしかありません。しかも、その材料が正しかったとしても、通常は守秘義務で、業者の側が顧客の取引を他人に開示するはずもありません。こんなことを言い始めたら、セカンダリーの取引などあり得ないではないかというのが、市場関係の取引経験を持っている人間の感想のはずです。
しかし、シンセティックABS-CDO(あるいはシンセティックCDOスクエアードやそれ以上でも同じですが)は、可能性として、既存の投資家や投資銀行の〝ヘッジ〟が裏側にあるという可能性も否定できないのは確かです。実際、あの銘柄数のポートフォリオを見て、すぐに「ひとりの投資家がすべての銘柄をショートしようと思っている」と思える投資家は少数で、誰かのヘッジのためと思うほうが自然なくらいでしょう。銘柄のトランシェがトリプルBに偏っているとしても、デルタ・ヘッジかもしれませんし(←それこそ「コリレーション取引ですが、それはまたいずれ)。
現段階での資料だけから判断した私の考えは、銘柄数、裏付け資産(トリプルB格のRMBS)の特殊性、という2点から、確かに、ポールソン側の関与が開示されていたら、結果としてあの取引は成立していなかったのではないかというものです。ただ、それを言い訳にできるんだとすると、「プロ」の投資家なんて存在せんわなーという気もしますし、それについてはそれについてで言いたいことは沢山ありますが…。

2010年4月18日日曜日

日本のクレジット市場

buzzでもさんざん書いたのですが、SECはゴールドマンを民事訴訟の被告として提訴したのではないかと思っています。一定の資料も入手したので、解説記事をここでと思っていたのですが、なかなか他のことをやっていて手が回らず、もう少し時間をかけてじっくり見てみたいと思います。
今回のGSの件で話題になったCDOも直接かどうかはともかく、少なくとも類似の商品は間違いなく日本の投資家にも販売された(=日本の投資家が購入した)はずなのですが、日本のクレジット市場を過去21年間見てきて、「いつかは」と思う変化がなかなか起きずにもどかしく感じることがよくあります。
特に悲しいのは、ジャンク債市場が育たないことです。ご案内のとおり、ジャンク債とは投資適格未満/投機的格付けの債券(主として社債)のことで、80年代後半にドレクセルの…という歴史はともかく、格付け的には、少なくとも定義としては、S&PのBBB-未満(BB+以下)、ムーディーズのBaa3未満(Ba1以下)ということになります。日本では、批判を恐れずに大胆な単純化をすると、R&IのA-未満(BBB+以下)になろうかと思います(JCRさんについてもA-未満/BBB+以下と言いたいところですが、市場に与えるインパクトという意味で、フィッチ同様、今回はちょっと考慮外としておきます)。
で、R&IのトリプルB格の社債が頻繁に取引されているかと言うと、ま、もともと、日本での社債の取引は「アポイントメント・オンリー」などと揶揄されたこともあるぐらい、市場と呼ぶのがはばかられるほどなのですが(そうは言ってもCDSがありますが)、これがR&IのトリプルBになってくるとほとんどないし、取引される利回り水準も、シングルAから突然スプレッドの水準が切りあがります。これは、まさにジャンク債取引の典型でもあるのですが、日本人特有の予定調和的資本主義の中では、ジャンク債は投資適格でない、つまり投資不適格であり、投資不適格な債券がそもそも取引されるのはおかしいので、実質的にはジャンク債であっても、投資適格の債券というセクターの中のクレジットの強くない銘柄群ということになるのでしょう。
それはさておき、では、R&IのトリプルB格の会社が悪い会社なのかというと、これが必ずしもそうではないわけで、そのあたりもジャンク債の発行会社と似ているのですが、多くの会社は利益を上げようと思って業務を行っていますが、往々にして、利益というのは利息をマイナス計上してからでないと計算されませんから、結局、利益を上げるということは利息を払うのと同義に近く、ということは、多くの会社は借金を返そうと思って業務を続けています。多くの会社はツブれないというのが本来の姿なわけです。
ところが、日本的な予定調和の中にいると、トリプルB格の会社自体が少ない(←実質ジャンクであることを皆が知っているので、投資適格のトリプルB格なのに、トリプルB格なら不要という人が多いのかもしれません)ので、結局、トリプルB格の会社は実は本当に危ない会社だけになりかねない危険をはらんでいます。
自己矛盾を起こしかねない議論なのですが、そうは言っても、トリプルB格の会社も財務分析をしてみるとそれなりにいい会社もあります。それは当たり前で、銀行や信金・信組が融資をしている先というのは、往々にして、R&Iが格付けを附与すればきっとダブルBとかシングルBにしかならない(規模が小さくて格付けになじまないことが多い)わけで、金融機関が融資している先が全部潰れていてはたいへんなので、実は潰れない先も多いわけです。
「他人(=格付け会社)は危ないと言っているけれども、自分達の分析能力を以ってすれば十二分に倒産リスクの回避は可能である」と言い切りながら積極的に日本の社債市場に打って出る、そんな人達の出現はいつになるのでしょう。
なお、同じことはストラクチャード・クレジットの世界でも若干言え、分析できないものはやるなという結論は変わりません。ただ、ストラクチャード・クレジットの世界では、ジャンクに手を出す人は実はそれなりに多く、それは(結果としては傲慢な誤解ではありましたが)、分析能力に自信があった現れと言えます(もしくは、格付け会社のダブルBやシングルBを、ストラクチャード・クレジットについては過信した、つまり、「潰れるとは言っていない」ことに過度な依存をしたのかもしれません)。

2010年4月15日木曜日

レバレッジド・ファイナンス

たいていの企業は、自らの存続がかかっているため生き残りに必死です。ということは、必然的に、融資(借入)を返済しようとします。
これは、LBOと呼ばれる、企業を借金過多にする場合も同じで、株主(ファンド)の側がどのように考えるかはともかく(とは言え、ブラック・スワンを読めば瞭然ですが)、会社の側は一所懸命に事業を継続し、借金を返そうとするほうが普通です。
つまり、格付け会社がなんと言おうと、債務者企業の側には融資を返済するインセンティブは極めて強く、レバレッジド・ファイナンスには充分に分散投資の効果が期待できると言えます。むしろ、投資適格企業のほうが、(ブラック・スワン的に)ネガティブなサプライズの程度が大きく、ポートフォリオの効果が期待しにくい上に、そもそもが投資適格であるがゆえに、投資家の側もマージン・オブ・エラー(誤差の範囲)がせまく、それが一層状況を悪化させる可能性があります。
ということを常々考えているわけですが、今日、米国から来たレバレッジド・ファイナンスの専門家の人達と会食をしていて、その思いを改めて強くしたのでした。

2010年4月14日水曜日

不動産と金融

ウォール・ストリート・ジャーナル紙(ごめんなさい、日本語版は見ていないので、出ているかどうか分かりません)に、モルガン・スタンレーが不動産ファンドで多額の損失を出した旨、報道されています。若干スキャンダラスな内容もないわけではないものの、市場関係者からすれば、バブル(と呼ぶのは、実は抵抗があるのですが)の絶頂期に買った物件の価格が下がっているので、売却したり、させられたり(=差し押さえに遭う、と考えてほぼ間違いないです:ノン・リコース融資の説明をする紙幅はないので)の結果、投資家から集めた資金88億ドルのうち54億ドルを失うことになるかもしれないという内容そのものには違和感はありませんね。
クレジットの世界の人間からすると、むしろ、不動産価格の下落幅が、金融機関の担保不動産の価値にどのように影響しているのかしら、ということのほうが興味があります。新生銀行さんの大幅な引当増の報道が今朝(14日)もありましたが、他はどうですかね。
ところで紙幅は「しふく」と読むのですが、このようなネット上の文章でも紙幅なのでしょうか? また、至福、私服、私腹と、会話の中で咄嗟に判断できるか疑問です。

冠婚葬祭

報道を見るだけではなんとも言えないのですが、一関にある冠婚葬祭会館業の会社が自己破産とか。地方で冠婚葬祭をやっているときくと「当然、互助会だろう」と思うのですが、どうもそんな感じでもないようで、だとすると、冠婚のほうは高級貸しホール業ですね。
葬祭のほうは、いざ利用するときには気が動転していることが多く、しかも(業者の側から信用度高いと思われない限り)原則現金払いですから、きちんと利用者さえいればそこそこビジネスになるので、冠婚のほうがうまくいかなかったのであろうという想像は働きますが…。

2010年4月13日火曜日

営業マインドと金融

今日、都内で打ち合わせに向かう途中、えっらく若い女性から「名刺交換させて下さい」と声をかけられました。はっはぁーというか、噂では聞いたことがあるので「なにかの研修なの?」と尋ねたらその通りでした。営業力と度胸はイコールではないけれども度胸があるに越したことはないわけで、間違った研修ではないですね。
しかし、バランスシートを使ってクレジット・リスクをとる業務には、このような態度は向かないと考えるべきです。クレジット・リスクはとりあえず入り口があればいいという種類のものではなく、入ったら出られない、これまで入れてしまったものをぶち壊すというリスクを常に抱えている(だから面白かったりするのですが)わけで、そんな業務に猪突猛進の人を就かせるわけにはいかないのです。
もちろん、新規案件がなくてはならない種類の業務、たとえば銀行融資であれば、新規開拓系の営業の人は必要です。しかし、本質的に営業=フロント=業務の中心、審査/分析=バック/ミドル=つまらん仕事、というカルチャーはあってはいかんのでしょうね。
もちろん、このあたりの議論が、アングロ・サクソン系の銀行/投資銀行における報酬制度の話ともつながっているわけです。

2010年4月12日月曜日

繰り延べ税金資産の証券化

FTによると、BIS規制の改訂に伴って自己資本としての扱いが認められなくなる「繰り延べ税金資産」につき、投資銀行が「売却しませんか」と営業に回っているとか。
繰り延べ税金資産の資産性は、あたりまえのことですが:(1) 繰り延べている期間内(日本では一般的に7年間)に、それだけの税金負債が発生する(だけの利益を生み出す)か? (2) そもそも永続的に利益を生み出すか という不確実性にさらされており、それがゆえに(詳しくは見ていませんが)BIS規制上問題になっているわけですが、その不確実性(=リスク)を誰かにとらせてしまえばよいわけです。証券化の基本的な考えかたですね。証券化は英語でいうとセキュリタイゼーション(securitisation/securitization)ですが、ま、このあたりですとむしろマネタイゼーション(monetisation/monetization)、つまり、「現金化」「現在価値の実現」ということになるのでしょう。
同じ記事に、年金負債についても同様の手法が検討されていると書いてありましたが、これは、半年ぐらい前に英国でロンジェビティ(「寿命」というよりも「余命」というニュアンスでしょうか)市場を形成しようという話があって、それにつながる話ですよね。
このあたりの、クロス・ファンクショナルな金融プロダクトの開発については、日本はどうしても後手後手に回るというか、アングロ・サクソン系は確かにセクショナリズムはあるのですが、いざというときには上層部同士が協力し合って新商品を作りだす素地を持ってますね。

2010年4月11日日曜日

実質金利と名目金利

以前から書こう書こうと思って忘れていました。拙著のひとつをご覧になった読者の方のブログで、私が「金利の高い国の通貨は安くなりやすい」と言っておきながら「実質金利の高い国の通貨は強くなりやすい」と同じ本の別の場所で述べていて、これは矛盾だというご指摘をしてらっしゃいました。
この議論は多分にアカデミックで、なかなか難しいのですが、一般的に、なんの条件も付けずに「金利」と言った場合は『名目金利』のことを指しまして、観察できる金利のことです。LIBORやTIBOR、スワップ金利、国債利回り、銀行預金の利率、すべて、観察できますから名目金利です。
名目金利は、通貨の購買力を保つための期待インフレ率の部分と、通貨の融通性の対価である『実質金利』とからなります。
インフレ率が高い国の通貨が安くなりやすいのは購買力平価仮説が正しいとすると理屈の上では正しく、一方、期待インフレ率が高いと名目金利が高くなります。これが「金利の高い国の通貨は安くなりやすい」ことの根拠です。名目金利が高い国は、往々にして期待インフレ率が高くて実質金利は実は低いことがあるので、見た目の金利の高さに踊らされないようにすることも大事ですねというのがメッセージなのです。
一方、実質金利が高いというのは、期待インフレを加味しても、まだおカネが増えることを意味します。インフレ調整後もおカネが増えるのであれば、皆がそちらにおカネを持っていくはずです。先進国間で短期金利の上下の期待によって資金が国境をまたいで移動しますが、そのひとつの理由が、期待インフレ率が変わらないのに名目金利だけが動くことにより、結果として実質金利が上がることがあるからなのです。
と、ここまでの理屈は簡単(引き算だけ)なのですが、厄介なのは、名目金利は「期待」インフレ率と実質金利とからなることで、運用成績が出るときには、インフレ率は期待ではなくて物価上昇は既に終わってしまっているのです。つまり、仮に期待インフレ率が高くても、結果として実際のインフレ率が低ければ、最終的な実質金利(=おカネを消費しないで貯蓄・運用に回した成果としての購買力の上昇)は高くなる可能性があります。
このあたりの議論が理解できないと、インフレ・ターゲットの話とか、もろもろの金融政策の話が一部ぼやけてくるんですね。とは言え、誰かが正解を持っている訳ではないのですが…。

2010年4月8日木曜日

投機とはなにか

成功するかどうか分からないけれど賭けてみようというのが、投機の定義であろうと思います。ということは、資本主義というのはすべからく投機家によって運営されてきたはずであり、自分の生活を良くするために利益を上げたい、利益を上げるためには世の中のためになる、世の中で受け容れられるモノやサービスを提供しなくてはならないという考えがあるからこそ、技術革新や斬新なアイデアが生まれるのでしょう。
などということは私が言うまでもないのですが、クレジット市場のみならず、金融市場に携わる純粋主義者としては、日経に報道されている「財政リスク扱う金融商品、一部取引禁止、欧州委が検討、委員長、投機、正当化できぬ。」あたりの一連の動きは納得できないんですよね。
どこかで線引きが必要そうなのはなんとなく分かっていて、その線は純粋主義者が思っているよりも厳しいところに来そうなのもしょうがないとも思ってはいるものの…。

2010年4月7日水曜日

ゴルフ場

過去に格付けを附与したゴルフ場案件でパフォーマンスが安定的に推移しているとムーディーズがコメントを出しています。業界はよくないけど、うまい人がやれば儲かるという、当たり前と言えば当たり前の話ではあるのですが、銀行にとっては耳の痛い話ではないでしょうか? 業界が悪いから貸さないというのはカネ貸しにとっては簡単な決断ですが、その中からツブれない先を見つけてこられるのが腕というものですよね。
それにしても、こんなレポートでまとめるほど沢山案件があったんですかね、ムーディーズさんは? 外資系2社はなんらかの形で格付けを取るような動きもあったんでしょうが、他にはどこでしょう? それとも、実はこの2社だけの話なのかしら…。

稀代のユーティリティ・プレーヤー

奇跡を願うしかなかったことは分かっていたとは言え、残念でなりません。社会人たるもの、常に、どんな状況でも役に立つということが本望なわけで、特に昨年のキャッチャーがいなくなったときに登場したときの格好好さといったら。ご冥福をお祈り申し上げます。

マーテロCDPC

ムーディーズの格付けニュースを見ていたら、マーテロという新しいCDPCに格付けが附されてました。CDPC=クレジット・デリバティブ・プロダクツ・カンパニーで、要するに、CDOの技術を利用した小規模なモノラインなわけですが、あれだけCDOが叩かれ、モノラインがボロボロになってよくできるわな、という時期からもう1年経過していますから、逆にビジネス・チャンスと見たのでしょう。
世の中にニーズがあるのかどうか、うーん、そこがよく分からないところで、リリースを見る限りはポートフォリオのシニア・リスクを取ることが狙いとか。しかし、規制資本の軽減についてはCDS全般的に随分と厳しくなることが予想されますし、一体どうするのでしょう?

2010年4月6日火曜日

国際分散投資

経済が発展してしまった国が、経済がこれから発展する国に投資をすることは当たり前のはずなのですが、これがなかなかうまくいかない。なぜなら、マクロで見て正しいからといってミクロ(個々の企業)が成長していないかというと決してそうではないからです。大金持ちが、一攫千金を、なくなってもいいカネで投資をするには面白いのでしょうが、そうでない限り、個人投資家が資産の多くを用いて途上国のエクイティや通貨に投資をしてパトロンになってやる必要はないわけです。一方、マクロとしては正しいので、そこはなんとかしてあげたいわけで、一人ひとりは少額、しかし、投信という形で資金を向かわせてあげるのが正しい態度なんでしょうね。
と、英国で総選挙の日程が決まり(5月6日)、オーストラリアが再利上げに踏み切ったことを見て、考えました。オーストラリア、住んでみたいなぁー。
なお、国際分散投資についての考えかたを含めた個人投資家の資産形成についての考えかたについては、そのうち某誌に出るはずなので、その際は報告します。クレジットの専門家とか自称しておきながら、個人投資家に社債を推奨していなかったりするわけですが…。

デリバティブとセントラル・クリアリング

日本でも金利スワップ(とiTraxx Japan)を清算機関に移行するという方向が当局から出ていますが、WSJによると、米国で、ファニーメイ、フレディマックの両社につき、金利スワップをセントラル・クリアリングに持っていけという方向になっているようです。
金利スワップは単純で、勝ち負けが分かりやすいので、金融危機の際に言われた「透明性」の向上にどこまで寄与するかは不明だと個人的には思っています(それは、トランシェのないiTraxx Japanも同じですが)けれど、初めの一歩だと考えましょうということなのかもしれません。

2010年4月3日土曜日

ヘッジ取引

金額が大きくないので大きな報道もされませんが、帝国データバンクによると「大手コンビニエンスストアのおにぎり・弁当のプライベートブランド製造」をしていた『新東京インターナショナル株式会社』という会社が民事再生の適用を申請したそうです(http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3252.html)。
正否は帝国さんを信じるとして、倒産の原因となったのが通貨オプションとのこと。曰く「為替リスクをヘッジするために行った通貨オプション取引において、近年の急速な円高を受けて今期のみで5億円以上、これまでの累計で10億円以上の損失が発生。さらに今後数年間、損失計上が見込まれていた。」とのこと。
ヘッジ取引はうまくいくこともあればそうでないこともあるわけで、マーク・トゥ・マーケットの損失を決算書に反映させることが必ずしも正しいとは思いません。察するに、取引金融機関は、当該〝損失〟による債務超過かなんかを見て、取引解消の口実に使ったんでしょうね。過去の決算書を見ていないのでなんとも言えませんが、「2005年に買収した子会社を通じて冷凍寿司販売事業の海外進出を目指していたが、計画が頓挫し数千万円規模の損失が発生。」のところが、銀行の逆鱗に触れたということなのでしょう。
だって、輸入の人が為替ヘッジで含み損抱えているのは、銀行にそそのかされてヘッジしていたら当然ですよね。

2010年3月30日火曜日

同業他社比較

ある会社のクレジットを判断する上で、つい見逃しがち、サボりがちなのが同業他社比較。しかし、上場会社の決算資料/有価証券(四半期)報告書は情報の生きた情報の宝庫であり、これを活かさない手はありません。新規に投融資を検討する際もそうですし、事後管理に際して、投融資先の今後を占う上でも重要です。
ということで、旭硝子さんについて今日S&PがA(シングルA格)を据え置く一方で、アウトルック(見通し)をネガティブから安定的に変更しました。旭硝子さんの場合、日本板硝子さんと同じ分野、つまり、自動車やビル/建物用と、日本電気硝子さんと同じ分野、つまり、液晶用ガラスの双方があって、前者はどちらかというとコモディティであってかつシクリカル(景気敏感)ですが、後者はスペシャリティ材(世界に4社しかないという噂を聞いたことがあります:あとの2社は米コーニングと旧NHテクノグラス → NHテクノグラスのNは日本板硝子さんのNですね)で、液晶需要が高まれば儲かると。
ま、中国×(好景気+不動産バブル)=コモディティ・ガラス、中国TV補助金+日本エコポイント=大画面液晶TV、といったことでしょうから、アウトルックの変更は順当と判断します。おそらく寄与度としては液晶のほうが大きく(最新のは見ていませんが、コーニングもこの分野は好調です)、まだまだ世界経済は不安定と見ていますからコモディティは不安ですが。
もっとも、市場クレジット的に言うと、このあたりのJapan Inc.の一角を担っている会社さんで、S&PまたはムーディーズからシングルAが附されていると、スプレッドという意味での投資妙味はほとんどなく、むしろ、いかにショートを振るのか、あるいは、「実はカス」にひっかからないためにはどうしたらよいのか、という方向での分析にならざるを得ないところが悲しいわけで・・・。

Business Development Companies ("BDCs")

REITの投資対象は原則不動産で、収益のほとんどを出資者に分配するなどの条件を満たすと、税法上、配当が損金算入される、つまり、ビークル段階では法人税がかからないのと同じことになります。日本の法制度上、REITは「投資法人」という法人形態で、投資法人の投資対象が不動産に限定されているわけではないのですが、日本のほとんどの投資法人はJ-REITです。
米国には、中小企業向け投融資を主たる運用対象にし、収益をほとんど配当することで法人課税されないビークルであるBDC(Business Development Company:「投資開発事業法人」とでも訳すのでしょうか?)というのがあります。
たまたまですが、Aresという米国西海岸のクレジット運用会社を母体とするAres CapitalというBDCが、Allied Capitalという同業他社を吸収合併するのに際して、昨日(29日)、S&PがBBB(トリプルB格)を、ムーディーズがBa1格を、それぞれ確認しています。また、タイミングは偶然だと思いますが、フィッチが同日、昨年1年間のBDCの比較分析レポートを発表しています。
それにしても、日本でクレジット投資がなかなか根付かないのは、銀行が強すぎるからなのでしょうか…。
(ちなみにですが、Aresは英語では「エリーズ」と発音しますが、日本語では「アレス」らしく、Wikipediaによればギリシャ神話に出てくる軍神なんだそうです。) (http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%B9

2010年3月29日月曜日

日本の損保業界

ムーディーズが、日本の損保業界に対して、引き続きネガティブな見通しを持っているとのこと。ニュース・リリースを見る限りでは、要するに、自動車保険が主力だが、人口が減少する中、運転者も減るのでジリ貧だろうという発想のようです。
サブプライム問題に伴うモノラインとの取引や信用保証業務の影響を見極めようとしたとき以外、過去にあまり真剣にクレジットを検討したことのない業界なので、時間のあるときに見てみようと思っています。既に、分析の対象となるべき会社の数も減ってきてますし。

アイフル格上げ

S&Pがアイフルの格付けをCCC-(トリプルCマイナス)からCCC(トリプルC)に引き上げましたね。要するに、当面の資金繰り負担が軽減されたために優良(まっとう?)な債務者に融資が再開できる(←つまり、これまでは資金繰り優先であったため、回収に走っていた)ことと、大幅な準備金積み増しによって、当面の過払い金支払い(キャッシュアウト)が財務的な影響にならないことを加味したものと読み取れます。
債務再編(リストラクチャリング:必ずしもCDSの契約上の意味ではありません)を経験した企業をシングルBレンジに持っていくのは格付け会社としても躊躇するようで、海外の例を見ても、概ね、このあたりの水準で様子を見るという傾向がありますね。
ただ、先日も申し上げましたが、このあたりの格付けになると、格付けのユーザーの側も無関心でいるしかないというか、トリプルCマイナスとトリプルCの差ってどこ?というか、特に、債務再編の対象となった債権者からするとそうですよね。
ロイターの記事(http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPnTK037539320100329)を見るとCDSの清算値が決まったことが社債取引の動意になっているようですが、ちょっとピンとこないので、解読できたらお知らせします。

サイクルベースあさひ

「株式会社あさひ」の2010年2月期の決算短信(https://www.release.tdnet.info/inbs/140120100325054679.pdf)が出てますね。第3四半期決算でも感動したのですが、フリー・キャッシュ・フロー出しまくりで、前年度に発生した短期借入金をきちんと返済して無借金。自転車屋さんとしては「サイクルベースあさひ」で、この近所にもありますし、帰省先からはほぼ同距離に2件あるのですが、店員さんもなかなか愛想のよいプロばかりです。
こんな会社さんばかりだとカネ貸しは楽ですよね。規模の面から、格付けを取得しようとすると多分シングルAどまりだと思いますが、それは「社債」という、事後管理の効かない形態だからであって、融資という形で「最近は調子どうっすか」と聞きに行ける形にしておけば、実際には相当リスクは低い先さんですな。

2010年3月28日日曜日

2010年問題はあるのか

業界紙向けの記事を週末に書いていたのですが、S&Pが先週の半ばに、有料記事で、今年はCMBSの裏付け資産のリファイナンス大変だぜ!というのを出していたのに気付きました。皆が分かっていることではあるのですが、一方で、(1) バランスシートに余裕のある金融機関は、今の不動産評価額を基にしてLTV70%程度なら絶対に損しないと思っている、(2) 差し押さえて叩き売って損失を確定させるには市場が落ち込み過ぎていて既存の債権者である金融機関は延長に応じている、という妙な均衡がいつまでつづくかに拠ってくるんでしょうね。
明日・明後日あたりで、不動産金融専門誌からの依頼原稿があるので、このあたりをテーマにしようと思いつつ…。

2010年3月27日土曜日

巨人は負けたが、クレジット市場との関連を考えてみた

東京ドームで久々の巨人戦観戦。とは言え、昨シーズンのドーム最終戦は見に行ったので、ドームでの巨人公式戦は2試合ぶりということですか。
前回も先発はゴンザレスだったと思うのですが、今日はゴンザレスがよくなさすぎましたね。でも、敗色濃厚だったので7回裏の「闘魂込めて」を歌ったら帰ろうと思っていたのですが、愚息の片割れが最後まで見ると駄々をこねるので残っていたら、長野のプロ入り初安打と、坂本の今季初安打(ホームラン)が見られたので、まぁいいかと。すべての試合に勝てるわけではありませんし。
野球は、ビジネスの世界と異なり、大敗しても惜敗しても負けは負け、1点差でも10点差でも勝ちは勝ちで、勝ち負けに重さがないですよね。ところが、ビジネスの世界では、こつこつと勝ち(儲け)を積み重ねていっても、一発の負けですべてが吹っ飛ぶというケースがままあります。カネ貸しが典型的で、儲けるときは利息として年に数%(しかも、カネ貸し自らの調達コストを考えると実際の利益はもっと少ない)なのに、損をする時は元本すべてがなくなります。10年分の利益を1年で吹っ飛ばすというサイクルを繰り返しているというので「ブラックスワン」ではSucker扱いされてますよね。
金融アナリストの自己弁護、というわけではないのですが、だからこそ、クレジットに携わる人間はいろいろな意見を聞きながら、意思決定をすることが重要というわけですな。

中小企業のためのデリバティブ入門

PHPさんから出して頂いた「中小企業のためのデリバティブ入門」(http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=978-4-569-69258-6)が3刷に突入しました。みなさん、ありがとうございます。
もっとも、最近の中小企業さんの取り組んでいるデリバティブはもっと過激で、フラット為替(金利系デリバティブの人には「クーポン・スワップ」ですよね)は当たり前で、それをシンセティック・フォワードのノック・アウト付きとかいうのを平気で取り組むみたいです。個人的には、ノック・アウトとか入れてまで姑息にレートいじってどうするの、と思いますが、儲けたい金融機関、助平心をなくせないユーザー、どちらにも原因があるんでしょうね。
「どうせやるなら、単純なものを」というメッセージ、なかなか伝わらないのがもどかしいです。市場参加者として、もっと啓蒙の機会があればと思うのですが。

2010年3月26日金曜日

Freakonomicsと「女房を質に入れると」

フリーコノミクスは本だけではなく、ブログ(http://freakonomics.blogs.nytimes.com/)も非常に面白く、劣等生ではあったものの、経済学部出身者としては楽しい話題がよく見られます。
ところで拙著の「女房を質に入れるといくらになるのか?」(出版社のリンクhttp://www.fusosha.co.jp/book/2007/05346.php)も同じコンセプトの本なのですが…。

投資不適格という誘惑

昨日、消費者金融についてコメントしておきながら見落としていたのですが、JCRさんが「消費者金融業界の動向と格付けの視点」というレポートを出してました(http://www.jcr.co.jp/top_cont/report_desc.php?no=09d1171)。文章の内容には特に違和感はないのですが、ふと思ったのは、アイフルのCCCっていう格付け、実際に格付けを使う立場の人がどう思うのかしらって。日本の格付け会社がトリプルCをつけている会社の社債をわざわざ買う投資家は日本には皆無のはずですよね? ということは、仮説としては:(1) 銀行・信金・保険会社・農林系などが〝新規に〟融資をする際の参考(ちなみに、日本人が参加する債権・ローンの流通市場は、投資適格であっても存在しないと私は思っています)にする;または、(2) 既存の社債投資家・債権者(融資をしている金融機関)に対して、サーベイランスの材料を提供する、というふたつかと。ただ、どちらも説得力がないというか、(1)については、格付けを信じている人たちからするとトリプルCの会社には融資だってできないでしょうし、(2)については、そんなこと格付け会社に教えてもらわなくても、ダメポだって分かってますよね、きっと。格付け会社としては、トリプルC格の会社は、倒産しなくてもいい(「だって、絶対倒産するなんて言ってないじゃん」と言える)ですし、倒産してもいい(「だって、単に投機的/投資不適格なだけじゃなくて、トリプルCですよ、トリプルC」と言える)わけで、こうなってくると、ユーザーが格付けにどのような価値を見出すのかと。
昨日も言いましたが、トリプルC格の企業だけでなく、シングルBやダブルCの会社が数多くあれば、トリプルCには意味があるんです。本当の問題は、そのような格付けの会社に見向きもしない投資家(つまり、そんな格付けならないほうがマシと思う人たちが多い)なんでしょうけどね。

2010年3月25日木曜日

ノンバンクのクレジットの見方

ムーディーズが武富士をCaa1からCaa2に格下げしてました。
私は武富士を真剣に見たことはないのですが、銀行系2社については公開情報を結構細かく見たことがあって、結局は資金繰りという結論には変わりないものの:1) 貸倒れ引当金は充分か 2) 過払いに耐えられるか、というカネ貸しを見る上で当然の観点は忘れてはいかんのだろうなぁーと思った記憶があります。銀行系2社については、おおむね貸倒引当金は妥当かなという印象でしたが、過払いについては実は引当金にさほどの余裕はなく、トップライン(カネ貸しなので、利息を払ってくれる債務者から得られる、会計上ではなく現ナマの利息)を生み出している限りは銀行はカネを出し続けてくれるだろうという期待をしない限り、なかなか取れるクレジットではないという感じでした。
と考えてみると、無担で武富士行くのはシンドい、つまり、まさに「投機的」ということであって、ノン・インベストメント・グレードなのは当然でしょう。Caa1とCaa2の差が日本の企業であるのかどうかは別の議論ですが(逆に言うと、レバレッジド・クレジットのスペクトラムが広い米国では意味があるということにもなりますけどね)。

金融機関のクレジットの見方

格付け会社の金融機関格付けを担当する人って大変だろうなぁーって、いつも思います。究極的には、金融機関も他の企業と同様、カネが続いている限り潰れないわけで、カネが続かなくなるのは市場から退場を宣告される(ベアやリーマン)か、預金者がそっぽを向く(ノーザンロック)かなのですが、どちらも、政府が本気で支援すれば発生しないわけです。
なーんてことを、寝る前に今日のニュースのおさらいをと思って格付け会社さん達のホームページを見ていて、S&Pが新生銀とあおぞら銀のクレジット・ウォッチ・ポジティブを取り消したことに気づいてつらつら思いました。
ま、格下げしたわけではないのであまりとやかく言ってもしょうがないのですが、新生は不動産エクスポージャーがでかすぎる上に消費者金融(シンキとアプラス)が不安というところはうなづける一方、あおぞらはリスクも少ないが儲けられもできないだろうという評価で、第三者的には笑っちゃうというか、信用リスクの側面からビジネスモデル(の欠如)を指摘されるということになりました。
プライベート・エクイティが株主だと、どうしても目先の利益も追いたくなるし、ただ、その結果、長期的に株主価値を生み出すような顧客基盤がないがしろになるというのは両行に共通しているのかもしれませんな。

スウェーデン商業銀行と千秋パパ

 日本板硝子のプレスリリース(http://www.nsg.co.jp/press/2010/pdf/0325.pdf)で「スウェーデン商業銀行」っていうのが出てきて、いったいどこのことだか悩んでしまいました。スヴェンスカ・ハンデルスバンケンを日本語で言うとこうなるんですね。
板硝子さんの財務内容は数か月前に真剣に見たことがあって、結局のところ、ピルキントン買収に要した借入が無事に借り換えられるかどうかがキモだということは分かるわけですが、こうやって借換の状況を適時開示する姿勢というのは、デット側の人間にとっても好感が持てますね。
本邦企業向け融資の供給者としてロイズ・バンキング・グループのロイズTSBが出てくるのは非常に珍しいと思いますが、ピルキントンの絡みなんでしょうね。
そういえば、ABNアムロのアムロの語源が「アム」ステルダム・「ロ」ッテルダムだって知っている人って、もう化石なんでしょうかね。

テンキー機能付きUSBタッチパッド

http://www.princeton.co.jp/product/multimedia/ptpsp1.html

「あきばお~」で見つけたこの商品、私はマウス派ですが、それはノートを使わないから? もっと忙しくなってノート持ち運ぶようになったら、テンキーにもなるので便利かもしれませんね。もっとも、当面はiPad待ちになるかもしれませんが…。

2010年3月24日水曜日

ブログ始めました

少し時間ができそうなので、ブログ始めることにしました。これまで、原稿や本という形でしか発信できなかったのですが、金融市場で日々起きていることについての心に移り行くよしなしごとを、徒然なるままに、そこはかとなく書きつくろうと思っています。