2015年7月19日日曜日

医療過誤と金融

判例時報の7月11日号の冒頭の論文、現役の医療過誤繁盛記が書いているというので興味深く読みました。契約の一方当事者が専門家、他方当事者が素人というのは金融と同じなので、大変興味深いものでした。ま、医療契約はそれ自体が準委任とされているので、直接の比較がどこまでせきるのかは別なのですけれど。

デラウェアには限らないものの、法人課税には関係ない事例判決なのかしら?

昨日から、例のデラウェア州リミテッド・パートナーシップの判例を見ているのですが、仮にこの契約形態に注目したとしても、今後、同州リミテッド・パートナーシップが日本の税法上すべて法人として扱われると考えるべきなのかどうか、悩んでいるところです。

というのも、個人の所得税の計算上、ある所得が不動産所得か雑所得かというのは、節税上よくある議論であって、(実際に裁判所がそう言うかどうかはともかくとして)妙な節税は認めないヨンというのがこれまでの流れかと思います。そのような結論があって、そこから理屈をつくっていったのだと思ってこの判決を見直してみると、結論としてはまあ納得できるだけに、説得力は相応にあるように思います。

一方、これが法人税という局面で、かつ、特に節税の意図がない場合にまで拡張されるのかというと、そうではないように思います。一般論として、組合契約にはパス・スルー性があると信じられていて、組合利益にはプロラタで日本の法人税が課税されているわけですから、ことさら、組合が日本の税制上法人であるとするメリットはないように思えます。

特に、単なる出資者(過半数の持分を保有していない)場合を考えると、多くの場合、利益を得るために出資をしていることが予想され、その場合、組合契約であれば組合利益は分配の有無にかかわらず日本で法人税の対象になりますが、法人格ありとされると分配があるまで課税の繰り延べとなるわけで、初期のマイナスがあるじゃんという議論はともかく、一般論としてはあまり課税当局にメリットがあるようには思えません。

なので、デラウェア州に限らず、個人の節税のためにリミテッド・パートナーシップで償却をとりにいくときには雑所得とみなすため、また、個人の段階での事業性はないものとして、法人格ありとされるものの、法人が一般的な投資として利用する上ではこれまでと変わらないというのが今後の運用になるような気がしています。一般論として、海外リミテッド・パートナーシップは税法上は法人であるとは言えないのではないでしょうか。

2015年7月18日土曜日

デラウェア州リミテッド・パートナーシップ

昨日(7月17日)、最高裁で、「米国デラウェア州法に基づいて設立されたリミテッド・パートナーシップが行う投資事業に出資した者につき,同人の所得の金額を計算するに当たり,当該事業により生じた損失の金額を同人の所得の金額から控除することはできないとされた事例」という判決が出ています。

事案としては、組合事業の赤字を個人が取り込めるかどうかが争われたもので、結論としては、この組合は法人と同じなので、法人の出資者が法人の損失を取り込めないのだから、ダメよというものでした。

その理由は、同州のリミテッド・パートナーシップ法に基づくと、同州のリミテッド・パートナーシップは「自ら法律行為の当事者となることができ」る上、「法律効果…帰属するものということができる」から、「所得税法2条1項7号等に定める外国法人に該当するものというべき」なのだそうです。

一般論として、リミテッド・パートナーシップの権利義務はパートナーシップには帰属せず、ジェネラル・パートナーに帰属すると考えると思っていたのですが、これはデラウェア州法に特有の論点なのかどうかは検討の余地がありそうです。仮に、世の中で一般的に用いられているケイマン、ジャージー、ガーンジーあたりのリミテッド・パートナーシップについてもすべからく同じようなことが言えるのだとすると、結構イヤな判決ですね。

下手をすると、リミテッド・パートナーシップの段階で出た損失は、「法人に対する出資」という理由で出資者の損金にならず、一方、利益が出た場合には、仮に分配しない場合であっても、その年度分の利益をタックス・ヘイブン課税として全額日本で課税される可能性が残ります。もともとの意図が節税であったのだから、それをよしとせずというだけならともかく、そのような限定をした判決ではないので、大変気になるところと言えましょう。

日本から、海外のリミテッド・パートナーシップの投資は、判決の事例のような信託を通したものを含め、多く見られるように思われます。ちょっと考えさせられますね。