2010年6月30日水曜日

格付け会社の格付け

 S&Pが昨日、ムーディーズの短期格付けA-1を格下げ含みで見直すと発表しています。
 格付け分析に際して依拠した客観的事象・事由の正確性について、適切な検証をおこなわず、あるいは、独立の第三者による認証をしていないと投資家から訴訟を提起されるおそれがあり、コンプライアンスの費用が増える見込みとか。
 また、格付けを金融機関の資産査定に用いないというのも法案に盛り込まれており、こちらも業務上の影響がありうると考えているそうです。
 しかし、ムーディーズとS&Pは同じ業務やっているわけで、なかなか思い切ったレポートだわいなとも思いますな。

2010年6月28日月曜日

ドッド=フランク・ウォール・ストリート改革及び消費者保護法

 うーん、PDFで2,315ページですか…。降参です。
 中身を見たところ報道のとおりで、プロップ・トレードの禁止も、客ビジネスであればOKということですし、また、ヘッジ・ファンドやPEファンドへの投資も、全体の3%までで自己資本(ティア1)の3%まではOKということでしょうか。
 注目された修正案の中では、リンカーン修正案についてはまだ読み切れていないのですが、フランケン修正案は骨抜きにされたみたいです。とりあえず、指名制・持ち回り制についてSECが検証するにとどまることになりました。もっとも、格付け会社さんの受難は変わらずですね。日本の同等の法律よりは中身きついです。
 しかし、こんなもの全部読むのに何年かかるんだという気もいたしますが、今、グリシャムのThe Asssociateを読んでまして、でかい法律事務所だと、若手弁護士にメモつくらせるんでしょうね、きっと。

2010年6月25日金曜日

細かいこだわり

 民法175条『物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。』
 これがあるので、譲渡担保とか仮登記担保とか所有権留保というのは、担保権ではあっても担保物権ではないという理屈になるのでしょう(たぶん)。
 「物上代位性を有する担保物権」として譲渡担保が挙がっていない金融機関向けのテキストを見つけたのですが、それはどうですかね? 留置権に物上代位性がないことは有名な話だったらしいのですが、それはさておき、一般論として、譲渡担保に物上代位がありそうなことは感覚的には当然のような気がするのですが? 判例的にも(とはいっても、法学者ではないので自分の都合のいい結論しか見ていないきらいはありますが)物上代位性は認められているように思います。

2010年6月24日木曜日

上場PE会社のリストラ

 アメリカっていうのはすごい国だなぁというか、先進国の中では日本がとびっきり遅れているだけなのかもしれませんが、ニュースを見ていて、ナスダック上場のアメリカン・キャピタルという会社を見つけました。この会社は、MBOやEBOで共同投資をしたり、メザニンやシニア・ローンの形で投資をしたり、あるいは直接上場・非上場を問わず会社に出資をするだけではなく、第三者のための資金も運用するし、モーゲージREIT(エクイティREITが所有権を対象にするのに対し、不動産担保債権を運用対象にするREITですな)を上場もさせているしと、なかなか幅広くやってます。
 で、この会社が債務交換をやっていて、要は、カネ返せないから安く買戻しているということなのですが、なんかシュールだわ、と思います。
 投資先を見ても1社も知っている先がなくて、アメリカって奥が深いです。

<7月11日追記>
 アメリカン・キャピタルはどうもBDCらしいです

2010年6月23日水曜日

不動産特定共同事業

 日経朝刊に、国土交通省が不動産特定共同事業の改正を検討中と出てました。機関投資家の資金を集めやすくすることが目的とか。
 すでに不動産私募ファンドがあって、機関投資家のカネだって集まっているのになぜ?という気もしますが、理由は単純で、現在の私募ファンドは、取得する資産が不動産そのものではなくて不動産信託受益権であることがほとんどで、金融庁の管轄になってしまっているんですね。
 SPCを設立して、不動産で運用しようとすると、(1) 売買で宅建業法、(2) 匿名組合による出資の受け入れと利益分配が不動産特定共同事業、に該当する可能性があって、基本的には敬遠されます。現在の不動産特定共同事業法の枠組みだと、既存の不動産会社を営業者とする形が想定されているため、営業者の倒産の影響を受けますから、機関投資家は怖くて資金を出せないんですね。
 不動産の信託を利用するのは税金の問題とかもあるからですが、「信託、なんじゃそりゃ」という人(特に個人)が多いのも事実であって、不動産特定共同事業がきちんと活用されるのであれば、それはいい話だと思います。しかし、実際には省庁の権限拡大を狙った動きにも見えますね。
 それにしても、ツイッターにも書きましたが、どうやったらこの「国土交通省政策集2010」なるものの現物が見られるのでしょう? 不思議な国だ…。

2010年6月21日月曜日

人民元

 人民元のドル・ペッグ見直しについて、"head fake"(顔の向きを使ったフェイントですな)だという論調が支配的だったようですが、なんのなんの、結構上昇しているみたいです。中国からすると、元上昇(ドル下落)は、保有する米国債の価格下落につながるわけで、決して望ましいことではないのでしょうが、さすがに国際的プレッシャーには勝てなかったということなのでしょう。
 中国の輸出競争国の通貨も強くなっているみたいですね。いっやー、マーケット、深いです。

2010年6月19日土曜日

カタールとロンドン不動産

 カタールのロンドンでの投資が凄いことになっているようで。ハロッズの話は有名でしたが、オックスフォード・ストリートのパーク・ハウス開発計画を2.5億ポンドですか。カナリー・ウォーフのソングバードの株も狙っているようですし、それよりなにより、グロブナー・ハウスとサボイもターゲットに入っているとか…。
 そもそも中東マネーがアメリカ不動産にいかない理由があるにしても、やはり世界の首都なんですね、ロンドンは。日本はおいていかれるのかしら…。

変動利付国債

 なぜ、そしていつまで、日本の変動利付国債は10年国債利回りに連動するのでしょう? 記憶が正しければ、フランスが似たような国債をかつて発行していたはずですが、それ以外になにか適切な説明があるとは思えないのですが…。
 ということを、イタリアが変動利付国債の指標をEuriborに替えるというニュースを見て思いました。

2010年6月18日金曜日

BPの格付け

 フィッチの格下げのときはニュースになりましたが、S&P、ムーディーズはそうでもないですね。その理由のうち半分くらいは格下げの程度というか、ダブルAからシングルAというのは、さほどひどくないということでしょう。
 それにつけても、フィッチが無責任だとまでは言いませんが(R&Iのハンガリー格下げ含みのウォッチのほうが・・・ですよね)、なんか違和感を感じるのは私だけなのでしょうか。もちろん、今後ムーディーズもS&Pも、再度格付けを下げるかもしれませんが、なにかそういう問題ではないような気がするのです。格付けの利用者が求めているのは、ニー・ジャーク・リアクションというか「げっ、ヤベっ、格下げしなきゃ」ではなく、信用度がどうなって、また、どうなろうとしているのかについての判断であって、符号に落とさなきゃいけないのは分かるにしても、パニクっているような態度は見たくありません。
 きちんと見ているわけではないので、水準について申し上げられるような立場でないことは承知ですが、ニュースを見ている限り、感覚的にはシングルAで充分なんではないですか、フィッチさん。

2010年6月15日火曜日

フォワードというポジション

 日本では、フォワードというポジションが軽視されているような気がします。でも、ゲーム・メーカーが評価されすぎる社会って、もしかすると、官僚さまを無条件で尊敬するのと同じなのかもしれません。
 その意味、本田選手をなんの先入観もなく見て「フォワードって恰好いい」と思ってくれる子供が増えることを祈ります。本田選手が自分のチームではイングランドのランパードのような役割であっても、ルーニーのような選手に憧れを持つ子供が増えたほうが日本サッカーのためにはいいのではと。

世代交代

 どんな組織でも世代交代は難しいですね。しかし、岡田監督はその意味で勝負師というか、冷酷なのでしょう。12年前のカズ、北澤は非情ということだったのでしょうが、でも、楢崎や玉田、中村俊輔にとっても昨日は冷酷でしたよね。こうなってくると、川口を代表に招集した理由は、楢崎に引導を渡すためだったのではないかとうがった見方もしたくなります。
 でも勝負師監督、次はどうするんですかね。機能したように見える本田ですが、本職ではないわけで、かといってツキも持っていそうですし。
 もちろん、個人的には名古屋の選手、名古屋を卒業した選手は応援していますから、是非出てほしいですけれど、それとは別に、組織運営として興味あります。
 ま、巨人の原監督の凄さも相当なものがありますが

2010年6月12日土曜日

勉強不足

 米国のPE業界が広くて深いというのは知っているつもりでしがた、まぁー、知らない会社の多いこと多いこと。こないだTPGが買うことになったVertafore(ヴァータフォア)のオーナーだったヘルマン&フリードマンとか、JMIエクイティなんてこれまできいたことなかったですが、一旦名前を覚えてしまうと、前者はそれなりに出てくる名前ですし、後者はダブル・クリックに投資している反VCみたいな会社とか。
 さらにすごいのは、アメリカでは、銀行に投資するために銀行持株会社として規制されることを選択しているファンドがあるんですよね。それもひとつではなく…。キャップジェン・キャピタルはそれなりに有名みたいですが、今日、キャッスル・クリーク・キャピタルっていうのも見つけました。いや、さすがアメリカ。参ったっていう感じです。

EUの格付け

 EUがEUとして個々の国を助ける可能性があって、そのために発行するかもしれないMTNの枠を増額したわけですが、それに対してトリプルAの格付けが付いているニュース・リリースを見ました。世の中で、これだけ格付けの有用性(無用性?)の議論がされていて、また、誰が格付けの手数料を負担しているんだという議論が沸騰している中、ものすごーく違和感を感じませんか? しかも、今回の欧州債務危機のひとつのきっかけは格付けだと言われているのに…。
 こんな状況で、格付けの根本的な改革なんてできるわけはないと思うのは私だけなのでしょうか?

2010年6月11日金曜日

カレー屋さんと世界情勢

 インドはヒンズー教徒が多く、パキスタンはイスラム教徒が多い。だから、二つの国は分かれたというのは、知っている人であれば当然の話ですが、興味がない人にとってはなんの意味もない情報です。しかし、こんな単純なことを知らないと、トルコのEU加盟が遅れている理由の少なくとも一つが分かりませんし、アラブ諸国とイスラエルの争いの原因の一つもよく分からないはずです。
 ということを「インド・パキスタン料理」と書いてある看板を見る度に思います。もちろん、インドにもイスラム教徒の方はいらっしゃるわけでおかしくはないのですが、「Japanese and Korean Restaurant」と書いてあったらおののきませんか? あるいは「京都・大阪料理」とか? 同じ感覚ではないかと思うのです。
 もっとすごいのは、「インド・パキスタン料理」と書いておきながら、ポーク・カレー(イスラム教徒は豚は穢れているので食べない)やビーフ・カレー(ヒンズー教徒は牛は聖なる生き物なので食べない)とか出す店で、さすがにあまりないのですが、たまにあってびっくりします。
 もっとも、日本でインド料理やパキスタン料理と称するレストランで働いている人たちのほとんどはネパールかバングラデシュの方々のようです。今調べたら、ネパールは主としてヒンズー教、バングラデシュは主としてイスラム教とのことです。

ドイツにソブリン・リスクはあるのか

 ドイツのソブリンリスクは、直接ドイツの財政にあるのではなく、他のユーロ圏諸国を助けなきゃいけなくなるところにあるのではないかと思っています。その意味で、歳出削減という範を示して、スペインやイタリアに「財政赤字はこうやって減らすのよ」という先手を打ったというのが、今回のメルケル首相のやったことなのでしょう。
 ハンガリーは政治的にナイーブというか、ちょうどわが国の前首相みたいに、自分の発言の重さに気付いていなかっただけではないでしょうか。確かに、注目されていた国ではあるので、西欧銀行が貸している→ハンガリーが潰れたら銀行がまたヤバくなる→国家財政に負担がかかる、という理屈は成り立ちますが、実際は、そのような理論的な反応ではなくて、ハンガリーヤバい→ヨーロッパヤバイ、という短絡であったようで、市場のセンチメントの悪さを感じます。1週間経って落ち着きを取り戻しつつあるようですが。
 で、本来のソブリン危機は英米にあるという大筋は変わらないのですが、目先のヨーロッパで言うと、PIIGSの財政完全崩壊(ストライキなどによる政治的破綻がきっかけか?)とユーロ離脱・解体の脅しに対して独仏がどこまで抵抗するかがポイントかと。しかし、フランスだって決して楽ではないし、そろそろ市場ではベルギーをターゲットにする気配が見えます。
 個人的には独仏が財政赤字垂れ流してでもユーロを守ると思っていますが、確率を付けるということになると「現状のユーロ維持+周辺への拡大路線継続」はが50%、逆に、「完全崩壊して各国通貨に戻る」が20%くらいあるということでしょう。

2010年6月9日水曜日

第一種低層住居専用地域

 私たちが普通に住もうと思うようなところは〝用途地域〟なるものが指定されています。普段意識することはあまりありませんが、マンションや建売住宅のチラシなどのファイン・プリント(細かい字)を見ると、キチンと書いてあります。一応、その中でステータスが一番高いのは第一種低層住居専用地域、いわゆる〝一種低層〟で、ここであればマンションが目の前に建つ心配は普通はありません。
 もっとも、低層住宅しか作っていけないわけではありません。床面積の半分以上が住居になっていて、かつ50平米以下の広さの範囲であれば、事務所のほか、日用品の販売店舗、食堂、喫茶店、理髪店、美容院、クリーニング取次店、洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店、パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋、学習塾、華道教室、囲碁教室、アトリエ、工房などの商売をやってもいいことになっています。また、当たり前かもしれませんが、アパートも建てられるほか、教会や神社仏閣も一種低層に作ることができますし、銭湯、老人ホーム、診療所、保育所も大丈夫です。つまらんことですが、診療所とは、我々の感覚からすると「病院」なのですが、入院施設がない、あるいは19人までしか入院できないのが診療所、20人以上が入院できると「病院」という区別がありまして、一種低層では診療所はいいけど病院はダメというわけです。
 教会ができたりすると、ちょっと静かな住宅地とはイメージが違いますかね? また、深夜でなければ酒類の提供をする飲食店を営業してもよく、12時まで営業する、夫婦でやっているスナックというのは、一種低層でもありえます。
 こんなこと知っていてどうするんだととか、「どこが金融と関係あるんじゃい」という気もいたしますが、不動産はおカネが向かう先の一つですしね。個人向けの財務アドバイスでも不動産に関する知識って重要みたいですよ。

ビジネス・トラスト

カナダにしかないのかと思っていたら、シンガポールにもあるんですね、ビジネス・トラストって。日本語で言うと「事業信託の受益権」なんでしょう、信託ですから税制メリット(というかパス・スルー課税)にもなっていると思われ、投資法人とか、米国であればREIT/BDCに近い概念でしょうか。
なぜ気付いたかというと、S&Pがシンガポールの船舶ビジネス・トラストを格下げしていて、読んでみると、日本でアレスト(船舶差押)を食らっているんですね。一次傭船者がキプロスの会社で、こいつがちゃんと燃料とかを払っていないことが原因のようですが、船ってこれがあるから怖いですね。不動産だと、賃借人の未払いで賃借しているオフィス・ビル差し押さえないですわね、普通は。

バンク・オブ・ニュージーランドのカバード・ボンド

バンク・オブ・アメリカとか、バンク・オブ・スコットランドとかと同じように、別に中央銀行ではないのですが、ニュージーランドのバンク・オブ・ニュージーランドがカバードボンドを出すそうで、ムーディーズとフィッチがトリプルAを付けています。なぜS&Pが格付けを附与していないのかは想像でしかないのですが、おそらく、どこかの段階でトリプルAを付けないという結論を出して、それを発行体側が嫌ったということかと思われます。S&Pは「公開情報を基にした」コメントを発表していて、それによると、本件、発行体格付けを0~3ノッチしか上回らなかったろうとのことで、BNZがAAであることを考えると、おそらく、AAからAA+の格付けを附与しようとして、BNZから「そんなものは要らん」と言われたのでしょう。
11年前に、当時の東京相和銀行と三和銀行が日本初のRMBSを発行しようとしたとき、やはり、フィッチとムーディーズだけが格付けを附与していたのですが、その際、S&Pが似たようなコメント(「日本で住宅ローン証券化格付けをするには、かくかくしかじかの条件が揃った案件じゃないと…」みたいなノリ)を出していたのを思い出しました。

2010年6月8日火曜日

練馬区、杉並区、武蔵野市がくっついてるって知ってました?

練馬区と武蔵野市の境に練馬区立野町というところがあって、ここは東京女子大も近くてなかなかいい場所ではあるのですが、ここのマンションを売るときに、誰も「立野町のマンションです」という広告は出しません。「吉祥寺駅徒歩20分」のマンションと書くわけです。立野町の場合、練馬区でありながら、武蔵関や上石神井といった西武新宿線の駅からも遠く、確かに吉祥寺が一番便利な駅ではあるのですが、地籍が吉祥寺でないどころか23区内に逆戻りしているにもかかわらず、たまたま吉祥寺駅が最寄り駅になっている練馬区のマンションではなく、吉祥寺〝の〟マンションとして広告を出すんですね。ちなみに、市境で地価も違ってくるようです。
国立も同じで、国立市北というのは、そうは言ってもまだ国立市なので、国立市中や国立市南ではないにせよ、住所としても最寄駅としても国立のマンションのものもあります。しかし、国立駅の北口を少し北東に進むとすぐに国分寺市に入ります。しかし、国分寺市にあるマンションで、「たまたま最寄駅は国立」という広告は誰もしません。当然のように、国立のマンションとして広告が入ってくるわけです。
だいたい、上記のような例に限って、マンション名に「何とかハイツ吉祥寺」とか「かんとか国立レジデンス」とか付けるものです。ま、これは賃貸マンションやアパート、オフィスビルでも同じ傾向が見られますが。

地図上と説明とで最寄駅がちがう…

資料集めをしていたらすごいのを発見しました。
http://suumo.jp/mansion/__JJ_JJ010FJ100_arz1030z2bsz1010z2ncz166440216.html
これ、ぱっとみたら「国立駅徒歩19分」としか書いてないですし、マンション名も国立ですし、住所も国立市東4丁目だから、国立だと思いますよね? 地図みたら〝いわゆる国立〟ではないことは知っている人であれば分かりますが、当然、すぐに分かるようには書いていないわけで…。
で、このマンションの凄いのは、少し詳しく見ると、「交通 国立駅徒歩19分 谷保駅12分」と、わざわざ遠いほうの駅を先に書いているんです。そりゃ、国立と谷保とではイメージ違いすぎることは分かりますし、一般的には中央線のほうが南武線よりも便利なことも認めますが、それってひどくないですかね? もっとも、駅でSUUMOとかもらってきて見てみると、意外と、こういう例が多いのは確かですが。

アドレスは吉祥寺(最寄駅は西荻窪)

 吉祥寺というのは、中央線で新宿から15分くらいのところにある小さな街ですが、京王井の頭線の終点で渋谷ともつながっています。駅のすぐ南に井の頭公園という広い公園があり、また、立教女学院、東京女子大学も近く、各種調査でも常に「住みたい街」の上位にランクインしています。東京在住の方であれば、住めるのであれば吉祥寺に住みたいと思っている人は多いことでしょう。そうすると、「アドレスは吉祥寺」というマンションや建売住宅の広告が入っていたら、思わず見てしまいますね。モデルルームがあれば、見にいこうという気になるかもしれません。
 でもちょっと待ってください。確かに〝アドレス〟は吉祥寺かもしれませんが、事情を知っている人が、ほんとうにその場所を吉祥寺だと思うかどうかは別の問題です。
 吉祥寺は地籍としては東京都武蔵野市になります。関東圏以外のかたはご存じないかもしれませんが、東京には23区以外にも市町村が存在していまして、武蔵野市は杉並区や練馬区と接していますが、他の都道府県にある市と同じで、市役所もあれば市立小学校もある市です。で、武蔵野市には「吉祥寺」という地名そのものはありません。「吉祥寺本町」「吉祥寺南町」「吉祥寺北町」「吉祥寺東町」という町名があるだけなのです。
 このうち「街」としての吉祥寺は吉祥寺本町全域と吉祥寺南町の一部、高級住宅地としての吉祥寺は吉祥寺南町の大半です。逆に言うと、吉祥寺北町や吉祥寺東町は、確かに吉祥寺駅から歩ける距離ではありますが、いわゆる吉祥寺ではないのです。
 それでも、最寄駅が吉祥寺であれば、まだいいかもしれません。しかし、吉祥寺南町の一部、吉祥寺東町の一部は、駅としては中央線で東隣の西荻窪駅や、井の頭線で2つ渋谷よりの三鷹台という駅のほうがはるかに近くなっています。西荻窪は西荻窪でいいところだとは思いますが、一般に「吉祥寺」という言葉からイメージされる場所とかけ離れていることもまた確かです。「アドレスは吉祥寺」と大きく書いてある広告は、実は「最寄駅は西荻窪ですが…」というオチ付きだったわけです。

2010年6月7日月曜日

誰も気にしないから?

R&Iがハンガリーを格下げ含みの「レーティング・モニターに指定」したそうです。先週の新政権の発言を受けてのことということですが、そんなことでいちいち格付け動かしていたら、日本の格付けなんてどうなるんだろうという気もいたします。
思うに、ハンガリーが小国だからということで、ちょっとしたことで影響を受けやすいということはあるのでしょうが、実際には、ハンガリーの格付けをR&Iがやっていようがいまいが誰も関心を持たないので、R&Iとしても気楽に格付けをいじれるということなのでしょう。
実際には、市場が大きく動いたからこのような格付けアクションとなったことは明らかですが、そうであれば、株価が大きくぶれた会社の格付けはすべてレーティング・モニターにするのかしら?という気もいたします。
ちょっと大げさ・単純化し過ぎなのは承知ですが、あまりにもオポチュニスティックというか、無責任というのではなく、他人事ちっくというか、当事者意識があまり高くないように思えました。

前政権バッシング

ハンガリーの件は、今起きている、あるいは、今後しばらくの間に起きる悪いことはすべて前政権のせいで、今後起きるいいことはすべて新政権の政策の結果であるということを主張するためのものでしかない(と思う)わけで、そんなことは、少なくとも私が見ている限り、米国やオーストラリアなど比較的政治勢力が2大政党の間でバランスが変わりやすい国では日常茶飯事ですよね。
逆に言うと、ハンガリーがそんな国かどうかを調べる必要はあるのでしょうが、人間である限り、あまり変わらないのではないかと。大人げないと言ってしまえばそれまでで、英国ではあまりはやらないスタイルではありますが。
ま、それだけ金融市場が神経質になっているということなのでしょう。今週も心配だわ、いろいろ。

2010年6月4日金曜日

首相の出身大学

そりゃ、東大が一番多いのでしょうが、麻生さん(学習院)、福田さん(早稲田)、安倍さん(成蹊)、小泉さん(慶応)、森さん(早稲田)、小渕さん(早稲田)、橋本さん(慶応)、村山さん(明治)、羽田さん(成城)、細川さん(上智)って、鳩山さんの前は宮澤さんまで戻るんですか…。ま、こんだけいて私の出身大学がないのもご愛嬌ですが(まさか大平さん以降いないのでは…)。
菅さんは東工大ですよね、確か。史上初?

私は格付け擁護派

私は昔から格付け、もしくは格付け会社擁護派でして、あんなものは信じる奴が悪いか、信じているふりをして案件通そうとしてるだけの部下を見抜けない上司が悪いと思っているわけでして、現在問題になっている「発行体/投資銀行からフィーを得ている」という指摘も、知っていれば、それはそれで、そういうシステムということを分かった上で利用すればいいのではないかと思っています。
その考えは個人的に格付けをどのように捉えるかという点においては、変わらない、つまり、参考にはするがそれ以上でもそれ以下でもないというか、企業財務を信用度という点から分析するという意味では同志(といったおこがましすぎますが)だし、たまーにコンファレンス・コールなどを聞いていると、確かに参考になることも言っているんだと思います。
ものごと知らない客に嘘は言わないまでも適当なこと言って、投信や保険を売ることと比較すれば、格付けの罪など知れているということでしょうか…。
とは言え、今日みたいに、CMBSの格付けがBaa2からB1、A3からBa3とか見ると、なんか、サブプライム問題というかCDOスクエアードとか思いだしてしまって、投資家さん大丈夫かしら、という気がしてまいりますが…。

2010年6月3日木曜日

会社型投信(2)

浅学は自分を責めるしかないのですが、ベンチャー・リヴァイタライズなる〝証券投資法人〟もあるのですね。運用会社はSBIアセットマネジメント、投資口の27.3%はSBIホールディングスが保有しているそうで。借入がないという意味ではベンチャービジネス証券投資法人と同じで、時価評価とか解約請求に耐えられないということなのでしょうが。

2010年6月2日水曜日

会社型投信

調べてみるもんですね。ベンチャービジネス証券投資法人という〝会社型投信〟があるのは知っていたんですが、運用しているのは三井住友アセットマネジメント(三井と住友の生損保運用会社合体)で、かつ、現在、上場廃止の猶予期間中というのは、知りませんでした。
バランスシートを見ると、借入がほとんどなく、いわゆる会社型にするメリットはそこにはないようです。要するに、基準価額が計算できない非上場株ベンチャー投資を、そうは言っても個人投資家のカネを集めてやるために設立したビークルということなのでしょう。ヘッジ・ファンドでもそうですが、投資家にリクイディティを与えると、結局はファンキーなことができないというジレンマがあって、そのあたりがプライベート・エクイティと言われる人たちの強みではあるのでしょう。プライベート・エクイティの人達が、究極の長期資金である上場を目指すのも分かるような気はします。
KKRとアポロは今年中に上場できるのでしょうか? できないに1万ドラクマ!!!

格付け

「いまだに格付けを信じるやつの気がしれない」というコメントが、たまたまというか、今日(3日)の米国での公聴会を前に、複数のメディアに出ていました。ま、一方で、スペインをフィッチが格下げしたとかいうのがニュースになるわけで、それはそれでメディアの矛盾だわなと思いますが、それはさておきということなのでしょう。
今日、知人と話していて思ったのは、格付けは宗教であると。信じる人は信じるし、信じない人は信じなければいいというのでしょうか。人に押し付けもせず、逆に、信じるなと強制をする必要もないのかなぁーという気がいたしますが、その意味では現在米国で起きようとしていることは魔女狩りに近いのかしら…。
拠り所がないと生きていかれない機関投資家が世界中にいる中、どういう決着がつくのでしょうか。

この国の形

常々思っているのですが、政治や政治家の質は、有権者の質を越えることは絶対にありません。なので、政権のあり様や政治について嘆くときには、個人や政党ではなく、まず、有権者がなぜそのような事態を呼び起こしているのかを嘆く必要があると思っています。
その意味で今般の首相交代を見てみると:
  • 日本に健全な二大政党制が根付くためには、どこかの段階で、自民党以外の党による単独での衆議院過半数維持が必要であった
  • 民主党の政権能力が、少なくとも当初から自民党と同じはずはない
という意味で、悪い意味ではなくて起こるべくして起きたと思っていまして、もちろん、政権を批判するのがマスコミの仕事だということは分かるのですが、国民としては暖かい目で見る必要があるのではないかと。実際のところ、今回の辞任の大きなきっかけになった事象も、自民党だったら、根回しがうまかったり、米国との対応がそつなかったりするだけで、本質的になにかが変わっていたかどうかは疑問です。たまたま、誰かが責任を取らなくてはならない時期に、責任を取る立場にいたということなのではないでしょうか。
個人的な好みとは関係なく、立ち位置的には、管さん50%、岡田さん30%、前原さん20%という確率で首相になるのではないかと思っていますが、英米両国のリーダーが40代だということも考慮に入るといいなぁー。

2010年6月1日火曜日

複利至上主義

最近はデリバティブ、デリバティブと言わなくなったので、複利至上主義というのはなくなったのでしょうか? 一時期は、複利が理解できない奴は金融業界にいる資格はないばかりの勢いでしたが…。
「複利は難しいです」「電卓では計算できません」と放置することで、金融業界の側が優越感に浸っていたことも否定できないと思います。しかし、難しいコンセプトを理解してもらうことがますます重要性を帯びている今、複利至上主義は極めて危険だと思っています。
実際、デュレーションを、単利の面から説明したテキスト・ブックが今まであったでしょうか? あるいはコンベクシティを? 試してみると、単利でも一般化できることであり、なぜあんな複雑な数式を用いるのかよく分かりません。なるほど、確かに時間の価値は重要ですし、それがないとデリバティブの本当の「アービトラージ・フリー」価格は分からないでしょう。しかし、それがなくても多くのことは理解できるのです。
いずれ、そんな、つまり、加減乗除しか出てこないファイナンスのテキストを書いてみたいものです。

掛け算と単位

子供の頃はあまり意識しなかったのですが、最近、掛け算と単位ということが妙に気になります。おそらく、これをきちんとやっているかどうかを見ることで、計算している人の思考プロセスが垣間見えるからでしょう。
たとえば、利率2%の定期預金に100万円を5年間預け入れた時の、満期時の元利合計を求めなさいという問題があるとします。税金を考慮しなければ、単利型で:
  • 100万円×2%/年×5年=10万円
が利息の額、したがって、元利合計は:
  • 100万円+10万円=110万円
が正解です。複利であれば:
  • 100万円×(1+2%/年)^5年=110万4081円
が答ですね。ここで、わざわざ「2%/年」とか「5年」という単位を入れることが重要ではないかと思っていまして、こうすることで感性が研ぎ澄まされるというか、必ず単位を入れるクセを付けることで、自分がなにをやろうとしているかが分かるように思っています。なぜか? それは、半年複利にしてみれば、式がこうなるからです:
  • 100万円×(1+2%/年÷2回/年)^(5年×2回/年)=110万4622円
もちろん、このあたりは文字式にしてみれば出てくるわけで、文字式で理解できる数学素養を持っている人にはあまりこだわってもしょうがないところではあるのですが、多くの人が文科系であって、しかも金融が難しいと思っているんだとすると、なかなか有効な方法ではないかと考えています。

清算機関

取引所と清算機関との違いがよく分からない人は多いのではないかと思います。取引所というのは、価格をマッチングさせるインフラを提供する場所であって、清算機関というのは、取引の相手方になるという違いがあります。もっとも、取引所が清算機関を兼ねているケースが多いのも事実です。
日本では、日本証券クリアリング機構(株式会社が「機構」っていう名称を付けるのは、どっかの銀行系ノンバンク集団みたいですが)が、上場株すべてと東証の先物・オプションを清算しています。一方、大証の先物・オプション等、東京金融取引所の先物は、それぞれの取引所が清算機関になっています。商品取引では、取引所の統廃合が進んでいて、先日は中部大阪商品取引所が解散を決めたと報道されていました(取引所は否定)が、それはさておき、日本商品清算機構(これも株式会社ですね)が清算機関となっています。
で、現在、世界各国で清算機関を通せという話になりつつあるデリバティブですが、実効性はどうなのでしょう。確かに、リーマン型の市場混乱を防ぐためにはプラスですが、透明性という意味では、強制ではないけれども既に清算機関を通じた取引が導入されているヨーロッパの例を見る限り、別に、目立った改善はないようです。強制すればいいのかもしれませんが、やはり、根本は、決済の問題というよりも価格の透明性ですよね。
その意味では、CDS取引の清算機関強制→取引所取引化への道と考えるのかもしれません。