2012年11月30日金曜日

理論的には理解できても

Lehman, MF Global Dominate October Claims Trading
なかなか、破産債権・更生債権・再生債権の売買をしようというのは度胸が要りますね。別除権・更生担保権の取引にLBOのキャッシュフロー分析を合わせればいいのでしょうけれど…

名目と実質

経済成長は、通常、実質で計測しますよね。その背景には、私達自身が実質を感じることができ、インフレ率を前提に行動するという想定があります。確かに、投資や貯蓄という行為にインフレ期待が影響しますし、消費は貯蓄・投資の裏側ですから同じと思うかもしれません。しかし、私たちはそこまで賢くない、少なくとも報酬という意味では異なりますよね。実質所得が増えても名目所得が減るデフレの状況では、私たちの幸福感・満足感は実はマイナスであって、消費にマイナスに働きます。リフレ論者を批判したい人は、実質議論に囚われていて、私たちの基本的な幸福感についての理解ができていないように思います。簡単に言えば、インフレは大いに庶民的問題なんですよね。

2012年11月29日木曜日

リフレ政策への批判について

リフレが本当に適切な政策なのかどうか、やってみなくてわからないのかもしれないのは確かで、議論自体はすべきだと思います。

でも「他の(先進)国でも禁じ手」だからというのは理由にならないですよね? だって、過去15年デフレだった国って他にありましたっけ?

2012年11月27日火曜日

コリレーション

 ファイナンスの理論上、分散投資は常に正しいとされ、その根拠はコリレーションが1でないからです。要するに、A株とB株、日本株と米国株、株式と債券など、分散投資をすれば同じ方向に動くことは考えにくいため、(1) 一度にすべての資産の価値が急落することはない (2) 理論的に期待収益率が加重平均になる一方でリスクは加重平均を下回る、わけです。

 理論そのものは間違っていないのですが、結局、将来のコリレーションを知ることは不可能であって、過去のコリレーションから推定するしかありません。ところが、実際にポートフォリオを組んだ上で管理しなくてはならないコリレーションは過去のものではなく今後のものです。たとえば、コリレーションが低ければ大きな損失が発生する確率はその分下がり、たとえば必要とされる自己資本額は少なくなるわけですが、実際には将来のコリレーションなど誰にも分からないわけです。

 「下がれば下がるほど望ましい」という特徴は、いわゆるショート・ポジションです。つまり、私たちはコリレーションのショート・ポジションをナチュラルに持っていることが多いのです。この考えかたは入門編ですが、これをクレジット・デリバティブのトランシェ商品とかに応用するととても楽しくなります…。

2012年11月26日月曜日

為替デリバティブの訴訟

 為替デリバティブのADRは旬を過ぎ、これからは訴訟が増加するという話が某週刊誌に出ていたみたいですね。定期的に記事になる話でどこまで現実味があるのかは分かりませんが…。

 既に判例が出ているものとの対比では金利スワップと似ている部分があって、単純な「クーポン・スワップ」と金利スワップとは、為替レートと金利という扱っているものは違っても、相場の長期平均水準で有利・不利が決まるという点で同じです。1ドル=75円で毎月10万ドルを5年間買い続けるという契約は、要するに、5年間・60回の為替レートの平均が75円よりも円高か円安かを予想すればいいわけです。素人にそれができるかどうかは別ですし、市場(=プロ)が合理的に予測している理論値とユーザーが契約したレートとの間に差がある場合にはユーザーは平均的には必ず負ける取引をしていることになり、かつ、ユーザーはその事実を知りませんが、勝ち負けの理屈は難しいものではありません。

 もっとも、オプションが絡んでくると話は別ですよね。1ドル>70円であれば10万ドル、1ドル<70円であれば30万ドル、それぞれ1ドル=70円で買うことが5年間続くという契約では「平均」が1ドル=70円ではユーザーの負けです。平均から常に1ドルあたり5円だけ円安か円高のレートにしかならない、つまり、1ドル=「平均+5」円か1ドル=「平均-5」円のいずれにしかならないというシナリオを考えると、前者におけるユーザーの利益は10万ドル×「平均-65」円、後者におけるユーザーの損失は30万ドル×「75-平均」です。両者が同じ回数だけ起きるのだとすると、結局、この2つは等しくなるはずですから、平均としては72円50銭である必要があります。言葉の正確な使い方とは異なりますが、このような取引では「損益分岐点」となる為替レートは1ドル=70円と考えるべきではなく、1ドル=72円50銭と考えるべきなのです。この幅が3円のときは、10円のときは…と考えると、ボラティリティがオプションの価値に与える影響もすぐわかり、この種の取引がボラティリティのショート・ポジションであることも理解できるはずです。ちなみに、ノック・アウト(消滅条件)がボラティリティのショートであることも、ちょっと考えれば分かりますよね。

 なんてことを考えながら、とりあえずは下級審でしょうけれど、どんな判決が出てくるのかは楽しみにしていたいと思います。 ちなみに、説明義務がどこまであるかという問はケース・バイ・ケースでしかないというのが教科書的な答でしょうから、一般論としては扇情的なコメントはふさわしくないんでしょうね、きっと。

建設国債の日銀買入

 必ずしも賛成するわけではないのですが、感情的な反論もどうだろうと思っています。「世界中で禁じ手」なんていうのは反対の理由としてはおかしいと思いませんか? だって、世界中で日本ほどデフレに苦しんでいる国はないんだから、世界中の誰も試したことのない手法をやらない限り脱出できないんじゃないですか? インフレにならなくても、経済が成長しなくても、なんとかやっていける既得権益の匂いを感じるというのは言い過ぎなのかもしれませんが…。

 そんなにインフレが怖いんだったら、誰かためしにインフレ起こしてくれないですかね? インフレはマネタリーではなくサイコロジカルな現象だと私は思っているのですが、それこそ日銀に対する信頼感があれば、インフレ起こすのも簡単だし、起きてしまったインフレを制圧するのも簡単なのが理屈なのでは…。

インフレとデフレ

 デフレは貨幣価値の上昇なので、景気や物価上昇率に関係なく収入が決まっている人にとっては望ましい現象です。そのような人々は一般論的には退職世代であり、ということは定義として有権者なので、政治家からしても無視できるはずはありません。デフレを解消させないほうがいいという既得権益があって、そこから抜けられなくなるのでしょう。

 国や社会としてそうあるべきなのかというのは、別の問題です。株や土地を持っている人以外インフレは関係ないという発言があったようですが、実際には、ある程度のインフレがないと名目所得が上昇せず、現役世代の活力を奪っていくため、社会が停滞します。高齢者・退職世代がマネタリーに幸せなのだからそれでもよいのだという前段の議論はともかく、実際には高齢者・退職世代以外にも社会には人間が存在しているわけで、その人達を無視していいわけはないように思います。

 また、社会が停滞することが本当に高齢者・退職世代にとってプラスなのかというと、そうではないようにも思います。これはご本人たちがどのように思っているかにもよりますが、活力のある社会のほうが暮らしやすく、人間もイキイキするのではないかとも。人間はマネタリーなだけで生きているわけではなく、多少財産が目減りしたとしても、そちらの社会のほうがいいと思う人も多いように思います。

 実際、債券運用の世界では、0.1bpにこだわる人が増えていますが、人件費を考えたら誤差の範囲に属する金額に汲々とする社会が健全だとはどうしても思えません。名目金利が3%とか5%あれば、そんなことはなくなるのでしょう。なんか、それだけ考えても、デフレ状態での「物価安定」が望ましいとは到底思えないのですが…。

2012年11月22日木曜日

ソニーとパナソニック

フィッチがソニーをBB-に、パナソニックをBBに、それぞれ格下げしたそうです。どの格付けが適正なのかは意見が分かれるところでしょうが、米国の製造業次々と競争力を失っていった80年代をイメージしているのでしょう。革新性は乏しいかもしれませんが、技術力が劣っているとは日本の会社の場合思えず、上記の連想は間違っているように思いますが、総合電機が多すぎて共食いによって疲弊しているの確かですよね。国際競争力が必要ない閉じた社会か、圧倒的な技術優位があるのであれば別ですが、半導体とかだけでなく業界の大再編が必要なのでしょう。

2012年11月21日水曜日

ジョン・ハンツマン

ハンツマン氏は共和党の大統領候補としては短命でしたが、穏健派で、非常に好感が持てる人物であったように思います。8月に放映されたコルベール・レポート(http://www.colbertnation.com/the-colbert-report-videos/418524/august-30-2012/jon-huntsman-pt--1)(http://www.colbertnation.com/the-colbert-report-videos/418525/august-30-2012/jon-huntsman-pt--2)を見たのですが、とてもまともな人ですよね。まとも過ぎて、今回の共和党には向かなかったのでしょうけれど。

一部の報道には、ヒラリー・クリントンのあとの国務長官やティム・ガイトナーのあとの財務長官という話も出ているようです。次の大統領選にはジェブ・ブッシュが出てきそうですし、このあたりで民主党政権の中で光る共和党の人というのもいい選択なのかもしれません。

ボラティリティを説明する

と行っても、統計的とか予想変動率という意味でではなく、金融実務的に、オプションの取引とは実はボラティリティの取引であることをなのですが、これが意外と大変で、今後しばらく悩みそうです。

今思いついているのは、「オプション=自動車レース」という喩えであって、自動車レースでは自動車の要素がそれなりにあると思うのですが、自動車はしょせんはメカであって、スペックは最終的には予想・予測が正確にできるはずです。ということは、究極的には自動車レースの勝ち負けはレーサーの腕にかかってきますが、そのレーサーの腕がボラティリティという説明にしようかとおもっているのです。

つまり、車が違えばタイムが違うのは当たり前だけれども、そのうち車の性能の差を除いたレーサーの腕の部分だけで競うということは可能なのか、それが可能であればそれこそがデリバティブのトレーディングにおけるボラティリティの取引と同じというわけです。

ちょっと無理があるでしょうか? もう少し考えてみます。

(※) コリレーションのトレーディングについても上手な説明がしたいのですが、こちらのほうがもっとマニアックで需要が低そうなので、優先順位は低いです。

2012年11月20日火曜日

インフレターゲット

なんか、安倍さんのインフレターゲット論、共感してます。中央銀行に責任を取らせようとしているというか、じゃ、政府は脱デフレのために何をしてくれるのよとも言いたくなりますが、どうせ何をやっても駄目かもしれないのだから、なんか大胆なことやったほうがいいですよね。前も書きましたけど、中央銀行の独立性というのは期待インフレ率のボラティリティを抑制することにあるのであって、デフレのときには害になるだけだとおもうんですが…。

2012年11月19日月曜日

日銀の独立性

中央銀行が政府から独立しているべきというのは、インフレ期待を低く誘導する上では有効なんだろうけれど、日本のようなデフレ・スパイラルの国では弊害もあるのではないでしょうか。結局、放漫財政(国債の日銀引受)の議論も、インフレが問題なわけで、日銀が国債を引き受けても世の中の財の総額が変わらなければ、通貨が増大してインフレになるわなっていう話ですよね。インフレにできるのであれば、是非して欲しいものです。インフレというなの通過価値引き下げ競争になったら国際マクロてきにどうなのっていう議論はあるんでしょうけれど。

「自己資本比率が下がると価値がなくなる劣後債」という黒い白鳥

私も基本的にはFT紙のこの考え(http://www.ft.com/cms/s/3/56ebf3ee-2fa4-11e2-8e4b-00144feabdc0.html)に賛成ですね。金融危機がなにを教えてくれたかというと、ファット・テール、ロング・テールの怖さであって「発生する可能性は極めて低いけれど、発生したときには大参事になる」というリスクは、安く備えることはいくらでもすべきである一方、そのリスクを取る側には原則としてなるべきではないっていうことなんだと思います。

もっとも、投資家の期待は、そんなことになったら、このような債券そのものを政府が守ってくれるということなのかもしれませんが、そううまくはいかないことを含めて、ファット・テール、ロング・テールなのではないでしょうか?

2012年11月18日日曜日

だから政治が大切

日本の景気を好くするのは簡単で、みんなが景気が好くなると思えばいいだけです。デフレ解消も同じで、みんながインフレになると思えばデフレは自然に解消します。今私たちが直面している問題は、将来に対するどうしようもない停滞感であり、それがある限り、どのような経済政策も無意味なのではないかという気すらします。

ではどうするのか? 100年前であればもっと穏当でない解決方法を示唆する人達がたくさんいたはずですが、現代はそんな時代ではありませんよね。となると、中身がなくても、未来は明るいと思わせてくれるような人が必要なわけで、政治というのはそのような役割も担っているのではないかと思います。

世界第2位もしくは第3位の経済大国であることから忘れがちですが、実際に私たちが直面している自体はサッチャー首相が登場したころのイギリスに似ている面もあるように思います。個々の要因はもちろん大きく異なるのでしょうが、経済だけでなく国のありかたについて国民全体が自信をなくし、将来が明るいと思えないんですよね。

ま、ないものねだりをしてもしょうがないので自分になにができるかというと、それはそれでなかなか答に窮するところはあるのですが、政府の無策を嘆く前に、どうしたら有効な策を打ち出してくれるような政治家を国政の場に送り込めるかを考えてみたいとは思っています。

2012年11月17日土曜日

本人確認

4月から「本人確認」ではなくて「本人特定事項の確認」って言うことになるんですかね。

http://www.npa.go.jp/syokanhourei/kokkai/230401/sinkyuu.pdf

2012年11月16日金曜日

選挙か

米英だけでなくカナダ、オーストラリア、ドイツなども二大政党制が割と健全に機能していますよね。かの国々を見ていて羨ましかったのは事実で、誰がその役割を担うのか二の次であってもよかったのだと今でも思っています。歴史の脚注で終わらないためにも、政権の行方だけでなく、二大政党制の存続という重要な意味が今回あるのでしょう。かぶれとの批判を覚悟で申し上げると、初の黒人大統領が一期で終わらなかったのはそれなりに意味があるんですよね。

日本人英語

名詞を冠詞なしで用いることは異例で、その名詞がコンセプトを表す場合ですよね。今朝の日経の最終面の広告を見て思いました。

2012年11月15日木曜日

マイナス金利つづき

わたしは個人的にはマイナス金利よりも預貯金税・現金化税のほうが有効だと思っています。仮にマイナス金利を導入したら、預金の引き出しタンス預金ガ急増し、景気刺激にはならないような気がします。

マイナス金利

自民党の安倍総裁が、日銀マイナス金利にするぐらいでないと、おっしゃったみたいです。もちろん、理屈の上では金利は低いほど景気がしげきされるわけで、デフレ下では名目金利がゼロでも実質金利はプラスですから、名目金利をマイナスにしない限り、景気を本当に刺激できる実質金利ゼロにできません。

ただ、インフレ同様デフレもスパイラルするわけで、もしかすると現在は名目金利がマイナスにならないというのがさらなる物価下落の歯止めになっているのかも、とちょっと思いました。

もうすぐ選挙ですね。