2010年8月30日月曜日

手詰まり

 6か月物金利を直接いじりにいくというのも、確かに思い切った手であることは確かですね。ただ、そこまでくると完全に市場金利なので、実際にどこまで影響を与えられるのか…。
 あと、金利が下がったからといって投資や消費が刺激されるのかというと、やはり、期待実質金利がプラスである限り、なかなか、カネが消費には向かっていかないですよね。
 私が答を持っているわけではないのですが、やはり、影響は限定的なのでしょう。少なくともデフレ対策の妙手は、世界中で誰ももっていないことは間違いないようです。
 嬉しそうに不動産担保にカネを貸していていいのか?という気はいたしますが…。

2010年8月25日水曜日

ノン・リコース・ローンとストラテジック・デフォルト

 今日のWSJ紙に、米大手不動産会社/ファンドが、ノン・リコース融資を借り換えたり、条件変更しないで、デフォルトを選択する例が増えているという記事が出ています。
 経済的にはあたりまえで、100億円の借金返すのに、80億円の不動産渡せば済むのであれば、借金返す(借り換えるのも同じです)ほうがおかしいわけで(EB債と同じですな)、借り換える唯一の理由は、この段階で損失が実現(表面化)する格好悪さを隠すのと、将来の不動産価格上昇への期待です。
 しかし、実際には、100億円のローンをデフォルトした上で、80億円で競落すればいいわけで、そちらのほうがよほど賢いのが理屈です。
 確かに、銀行相手だとこの戦略は取りにくいですが、WSJ紙が指摘する通り、CMBSになっちゃってるなら簡単ですね。

非因習的

 Unconventionalとbeaurocraticとは反意語では? 今までと同じ枠組みでしか政策を考えられない人たちでは、今の状況を脱却できないのではないかと思います。頭がいい人がやっていればうまくいくのであれば、こんな状況が15年も20年も続いているわけがないので。
 確かに、マイナス幅を大きくすることに対する責任というのはあるのでしょうし、この国の国民性が失敗者に対して異常に冷たいので、躊躇する気持ちも分かるのですが…。
 しかし、そう考えてみると、これって私たち国民性のツケなのかもしれません。出るものは打たれる、失敗者を冷遇する、チャンレンジそのものに対する評価が低いといった。今必要なのは、頭のいい人ではなく、型破りで失敗を恐れない人ですよね。

2010年8月24日火曜日

実質金利

 さすがに、これだけ円高・株安が進んでくると、みなさん、いろんなところに火が付きますよね。景気を好くするためには実質金利をネガティブにするしかないわけで、GDPデフレーターでみるとマイナス4%の国が実質金利をネガティブにするためには、名目金利を、そうですねー、マイナス5%にしますか。
 実際問題として名目金利をマイナスにすることは、金融機関のシステム対応ができずに極めて難しいのですが、一方で、日本にマイナス金利を導入したほうがいいという議論は10年前にもあったわけで、作為的無作為ですよね。責任者でてこいという感じもいたします。
 こうなると、反対は必至ですが、現金税・預金税をかけて、実質的にマイナス金利を作り出すしかないでしょう。ついでに納税者番号制も導入すべきだと思いますが、それはさておき、フィックスト・インカム性のある資産すべてに年率5%の税を掛け、現金化した際には、投資・消費したことを証明しない限り、現金化税(預金を降ろす、債券を売却する)を課すと。現金化税はごまかすのが簡単なので、おそらくは源泉徴収にした上で、還付とすべきでしょう。
 効果としては、逆消費税(消費した金額に応じて減税あるいは税還付を行う)と同じですし、脱税のために現金をため込んでいる人たちが、(バレない限り)一層得をするというのは癪ですが…。

2010年8月18日水曜日

本当の影響は〝土地活用〟屋さんたち

 実際に影響が一番大きそうなのは、土地活用屋さんたちですよね。
 典型的なのは、借上げ契約で有名なアパート・メーカーさん(特に大手2社でしょう)ですか。あと、ビジネス・ホテルの大手のみなさんですよね。これまでは長期借り上げが負債計上されていませんでしたが、一気に負債計上されると大変そうですね。資産側には負債と同額が計上されるということですから、そこだけで債務超過になることはありませんが、減損処理があるので、そこで痛い目に遭うということなのでしょう。
 賃料は固定費なので、固定費が高いという点で見た目のバランス・シートが軽くなっていても同じは同じなのですが、自己資本比率という分かりやすい数字が大幅に悪化するのは必至なわけで、その上、今後減損処理が絡んでくると、予断を許さないですね。
 外食は直営があまりないから関係ないのかなぁーとも思いますが、ファミレスはフランチャイズではないですよね。

不動産業界への影響は?

 新リース会計が導入されると、不動産業界はどうなるでしょう?
 会計的には、賃貸期間の分は所有権が及ばなくなるわけで、その分は資産が軽くなる一方で、賃貸料収入を長期間受ける権利が資産化されますから、結局はニュートラルなはずですね。また、投資用不動産は公正価値で評価するのでしょうから、リース会計の影響は受けないというのが建前ですね。これは私募ファンドもREITも同じはずです。
 気がかりなのは、オン・バランス化させられる、特に、長期賃借をしてしまうと、バランス・シート上のインパクトが取得と同じになる場合に、賃借人が賃借を選択するのかという点でしょう。倉庫とか小売用の施設とかは、結構長期間な賃貸借契約が結ばれることが多いのですが、賃借人の側で所有しているのと同じ、つまり、金融取引をしたのと結果としては会計上のインパクトが変わらないのだとすると、資金調達能力がある人は賃借を選択しないことになります。
 ま、このことはファイナンス・リースでも同じですし、もっというと、会計上のインパクトとは関係なく経済合理性だけを考える人もいるのでしょうから、大きな要因にはならないのかもしれませんが、注目は注目ですね。

賃借のオン・バランス化

 よく考えてみれば、賃借とは、「期間の限定された所有権」のようなものなので、資産性があるのは当然ですし、それにたいして支払いをするということは負債性を帯びているのも自明です。私自身はあまり自己資本比率にこだわるほうではないので、企業分析上、貸借対照表が重くなることは重要視せず、むしろ、フリー・キャッシュ・フローにどう利いてくるかを中心にいろいろなものを見る傾向があるので、その意味では、今般のIFRS/FASリース新会計についても、違和感はないですし、考えかたとしては拙著「女房を質に…」で家を購入するのと賃貸にすむのとどちらがいいのか的なところでも書いているつもりです。
 バランスシートに与える影響というよりも、FT紙指摘の通り「比較の容易さが増す」という点が重要なのは確かで、同業他社比較をする上で自己資本比率(負債の多さ)を見るのが重要なのは確かですから、賃借義務を負債に反映させたほうが分かりやすいことは確かですね。ま、それも、結局は利払いと同じ意味で固定費であるとも言え、FCFをきちんと分析していれば関係ないと言えなくもないですが…。
 実際問題として考えられる影響は、賃借が多い業界で、やはり小売ですかね。原状回復費用で特損出させられている人たちがいっぱいいるのに、泣きっ面に蜂?かもしれません。あと、倉庫を借りている人たちも結構なインパクトを受けるのではないかと思います。
 ざっと見た感じ()では、オフィスビルの賃貸借での日本の慣行(2年契約で、賃借人が出ていくのは自由)をどのように盛り込むのかが難しそうです。おそらくは、2年の契約期間にとらわれず、合理的に見積もられる入居期間を基に計算するのでしょうけれど。
 賃借権の資産性(裏側のリース料支払いの負債性)がきちんと認識されると、EBITDAではなくてEBITDARがもっと注視されるのでしょうね。
 ま、適用はまだ先みたいですけど。

2010年8月17日火曜日

すべては幻想

 あまり哲学ぶるつもりはないのですが、インフレとか景気というのは、たぶんにイリュージョンの世界だと思うことがあります。皆がインフレになると思えば自然にインフレになるし、皆が景気が好くなると思えば、自然に景気は好くなるものです。
 という観点からGDP統計を見ると、日本で実質GDPを見てももう意味がないと思います。確かに、インフレ率が年数%以上ある国であれば、インフレの影響を除いて実際はどうだったかを顧みる機会は必要だと思いますが、デフレの国で実質成長率を見ても、誰も好景気の印象を持っていない中では笑い話でしかありません。
 実際には無理なことは分かりますが、名目GDPを主要統計として皆が認識しない限り、ことの重要性が分からない人たちがまだ多いのではという危惧をしています。私たち人間はあまり賢くないので、イリュージョンが必要ですが、イリュージョンというのはそう思えないところには存在しません。名目GDPは実感ですが、実質GDPは単なる統計上の数字であって、実感のないところで景気が悪くなってないと言われてもしょうがないんですよね。
 日本は、GDPが年率3.7%で縮小している国である。このことを直視しなくてはいけません。

2010年8月16日月曜日

知的財産と動産

 知的財産権を利用したファイナンスについては、(一部の)金融機関と行政がかなり力を入れているのですが、なかなかうまくいった前例がなく、金額も極めて小さいものにとどまっているようです。いろいろと調べものをしていておもったのですが、結局、価値があることはわかっても、価格が付けられないというところに、難しさがあって、エクイティ型、つまりファンドであれば価値が分からないことはマイナスにはならない(オプション・バリューの分が増えたりします)ものの、デット型だとつらいということですね。確実に今後もキャッシュ・フローを生み続ける知財があるかと言われると、確かに・・・ですね。
 知的財産権についても財務構成要素というか、著作権はいくつものパーツから成り立っていますし、譲渡という意味ではもう少し広まってもいい側面というのはあると思っていまして、ネーミング・ライツもその意味では知財なんでしょうね。ただ、ネーミング・ライツを譲渡・質入れできるのかどうかは分かりませんが…。
 価値があることは分かっても・・・という議論は動産担保と同じですね。動産担保が実質的に機能するのは、おそらく、たばこ、アルコール飲料の一部、宝飾品、といったごく一部のものに限られるはずで、その理由は、あまりにも価格が読めなさすぎることです。

2010年8月12日木曜日

デフレ対策

 人類はインフレは過去に何度も経験し、その怖さも充分に分かっている一方、ある程度、インフレ対策については経験則もあります。
 一方、デフレはなかなか経験がなく、怖さも充分に伝わっていないうえに、対策について経験則もありません。
 日銀の過去の政策に対して他国の中央銀行が冷徹なのはそこにあって、過去に人類がほとんど経験したことのない経済の対策に、〝頭のいい人たち〟(定義として、過去のことをよく知っている人たち)があたったため、常軌を逸した政策がとれなかったわけです。
 常軌を逸することが重要なのは過去に例がないことに対応するためには当然なのですが、頭がよければよいほど、常軌を逸することができないんですね。
 現在世界中で起きている各国のデフレ政策は、その意味、すべて手さぐりでしかありません。常軌を逸しても成功する保証がないのに常軌を逸することができるはずはないというエリートの発想が、どこまで持つのか、日本の問題としてではなく、先進国全体の問題として注目されているんだと思います。

2010年8月9日月曜日

情けない話

 ファイナンス・リースのユーザーが更生手続きに入った場合、リース会社は勝手にモノを引き揚げられず、更生手続きに巻き込まれるというのは、ストラクチャード・ファイナンス業界では著名な判決だと思います(平成7年4月14日最高裁判所第二小法廷判決・民集第49巻4号1063頁)。で、あの判決の読みかたとして、『会社更生や民事再生に入ったら賃貸借を解約する』という特約は無効、というのがあると思っていたのですが、なぜかこれがなかなか周囲の人に受け容れられず、どうやったら分かってもらえるのかしらとずうっと悩んでいたのです。
 しかし、今日たまたま調べものをしてたら、民事再生法で最高裁判決が出ているんですね(平成20年12月16日最高裁判所第三小法廷判決・民集第62巻10号2561頁)。最高裁の判例チェック不足とは情けない限りなのですが、ま、Better late than neverということで…。

2010年8月4日水曜日

格付け会社の格付け その2

 昨日付けで、ムーディーズに対してBBB+をS&Pが附与しています。見通しは安定的だそうです。米国の金融改革法成立で事業リスクの高まりは見られるものの、世界的な格付け会社としての規模と、ブランド力という力強さがあり、市場の地位を維持しようと。
 こないだの格下げ(短期をA-1からA-2)のときは少し嗤わせてもらいましたが、今回は、ま、そうですかという感じですね。

エンジェル・ファンド

 アメリカっていう国は羨ましいなーと思うのはこういうときですね。カリフォルニア州のアーバイン(オレンジ郡にあるらしいです)に、エンジェル投資家の親睦団体があって、その人たちがファンドを組成したそうです。別にファンド運営で儲けたいというよりも、スタートアップに早く資金が行き渡るようにしたいという動機のほうが強いみたいです。
 日本にもエンジェルっていいないわけではないんでしょうけれど、なんか、深さが違いますよね。それとも、こちらがそのサークルに入っていないし、報道もされないだけで、実はネットワークがあったりするのでしょうか?

2010年8月2日月曜日

FCFとEBITDA

 FTのLexコラムに「フリー・キャッシュ・フローに気を付けろ」というのが出ています。ポイントは2つで、ひとつは、CapExを節約するとFCFが出ること、もうひとつは、運転資金の増減によるFCF創出は永続しないというものです。どちらも当たり前ですよね。
 本当は、修正EBITDAというか、EBITDAから実力の税金部分と、恒常的なCapExを控除したものが一番正確な指標なのですが、これには当然主観が入ってくるわけで。
 ま、だから企業分析って面白いんですけどね。

2010年8月1日日曜日

サラ金証券化と格付け

 最近、ムーディーズさんが、サービサー法上のサービサーはサラ金ABSのバック・アップ・サービサーとしては危険だというレポートを出していますね。サービサー法上のサービサーは法務省の管轄にあって、以前から、グレーゾーンについては引き直しが原則だったのですが、今後は、単なる「お支払いのご案内」であっても、引き直し計算をしなくては引き受けてはいけないんだとか。不良債権にならない限りは、附随業務に該当するのですが、そんなことしたら大変なことになりますよね。試算してみたことあるんですけど、ちょっと古い債権だと、知らず知らずの間に過払いの再生産が進んでいますから、すぐに元本がなくなってしまうわけです。
 S&Pさんが最近出していた「オリジネーターの倒産に学ぶ」というやつも、基本的にはサラ金ネタだったので興味を持って読み始めたのですが、結局、オリジネーターがトロいやつだと、バック・アップ・サービサーへの移行がうまくいかないことがあるので気を付けようという内容でした。ふむむ・・・