2013年3月31日日曜日

森鴎外とGoogle Translate

舞姫が好きになれなくて鴎外は読まなかったのですが、最近、ふとしたことで、ヰタ・セクスアリスと雁を読んでみて、少し宗旨替えをしなきゃと思っているところです。読まず嫌いという意味では、人間失格の出だしが気味悪かったり、走れメロスを語る偽善家の目がぎらぎらしているところに虫唾が走ったことがあったため避けていたのですが、読んでみると両作品ともどちらも面白かったというのに似ているのかもしれません。坂口安吾も「堕落論」というのが妙に哲学チックで避けていたのですが、他の大衆小説はなかなか面白いので、そのうち堕落論も読まなきゃとも思っているわけです。

で、ヰタ・セクスアリスはラテン語のVita Sexualisなわけですが、グーグルの翻訳サービスって、ラテン語もあるんですよね。ローマ法王ってラテン語しゃべるはずなので死語ではないんでしょうけれど、なんだかすごくありませんか?

RSSリーダーと銀行

グーグル・リーダーは私も重宝していたので非常にショックだったのですが、Feedlyに替えて、ま、ぼちぼちやってます。

エコノミスト誌にグーグル・リーダーは社会基盤だよねぇー、でも、僕たち、インフラ運営を民間企業に任せることって、将来的に気分いいかどうか分かんないよねぇーという意見が出ていて、ふむふむなるほどと思うわけですが、この意見を見つける基になったFTアルファビルのブログのほうが業界的にはより深くて面白かったです。

前半部分は「ヘビー・ユーザーが払ってもいいと思う料金を課すと、ライト・ユーザーが寄り付かなくなって、固定費を賄えなくなる」一方で「ライト・ユーザーが払ってもいいという料金にするとヘビー・ユーザーが登場してコスト割れになる」ため、料金を課すというビジネス・モデルが成り立たないというグーグル側の理屈です。LTEのデータ料金プランの設計と考えても同じで、従量制にするとヘビー・ユーザーは逃げていくし、その意味では(他社のは知りませんが)NTTドコモの体系はちょうどいいバランスなのかもしれないなぁー、でも、WiMAXはどうなんだろう、などと経済学部出身者ちっくな(あるいはフリーコノミクスの熱心な読者・聴取者的な)興味を持ったりもします。

で、実際に重要なのは後半部分なのですが、「これって、銀行と同じだよね」という話になります。銀行はなくては困るという意味でインフラなのですが、多くの顧客は銀行にとって儲からないというか、預金という資金調達源としての意味を持っていなければ、面倒なだけです。しかし、その面倒さに値段を付けようとすると、実はグーグル・リーダーが直面していたのと同じ問題を抱えているわけです。「だから公的な関与があるんでしょ」というのが結論みたいなもので、まったくそのとおりなんですけれど。

同じ問題は証券会社にもありますよね。多くの個人客は取引金額が小さくて、証券会社の固定費(日本では人員削減が難しいので、正社員の給料は固定費ですよね)と比較すると手数料もらっても割に合わないのですが、中にはとんでもない金額の取引をしてくれる(あるいは、仕組債などで目ん玉が飛び出るくらい稼がせてくれる)お客さんがいて、そのようなお客さんにあたるためには個人客を網羅的にカバーしなくてはならないわけです。その意味では、手数料上げる担当者は証券会社のインフラを利用しているわけですが、証券会社の人というのはそこまで深く考えることに慣れていない(経営者も同じです)ため、インフラ利用料を徴取することを考えずに手数料稼ぐ人を褒める傾向はあります。

もっとすごいのは病院ですかね。病院って、ものすごくエラい先生と15分話し込んでも、通常の外来だったらびっくりするぐらい安いわけで、そんな患者ばかりだったら大変ですよね。だから、いろいろな形で役所が関与しているわけですよね。

って、単なる雑感でしかないですが。

金融危機はもっと頻繁に起きてもいい?

金融危機が起きないような社会は、結果として成長性が低いのではないかという議論が(少し古いですが)FT紙に出てました。現在の日本の経済政策を過去の狂乱物価等と比較して「危ない」とか「むこうみず(って『向こう、見ず』なんですね)」だという批判があり、それはそれで正しいのでしょうが、しかし、それと比較して、デフレ安定の国とどちらがいいの?という議論と似ているなぁーと思いました。

確かにバブルというのは異常だったような気もしますし、オイル・ショックのときのトイレット・ペーパー買占めをニュースで見ていた世代からするとあんな時代が本当に来ていいのかという懸念もあるのですが、一方で、バブルちっくなときには世代が将来に希望を持てたし、社会全体に活気があふれていたのも確かなわけで、過去20年の日本と比較するとどちらがいいのかは明らかなように思います。

このFT紙にもあるように、必要なのはバブルを起こさないこと(コラムの趣旨は「金融危機を起こさないこと」ですが、言っていることは同じです)ではなく、ミニ・バブルとミニ・バブル崩壊を繰り返す、あるいは、部分的なバブルが循環的に(つまり、いろいろなセクターで順番こに)起きるという社会のほうが望ましいというのには一理あると思うんですが。そのほうが楽しい社会のような気はします。

2013年3月26日火曜日

ムーディーズ絶好調!

格付け会社が、格付けを附与しなかった案件についての論評を出すことが多くなっていて、楽しい読みものになっています。先週は、単一のショッピング・モールを裏付けとする案件で、S&Pクロール(!)モーニングスター(!!!)の3つの格付け会社がトリプルAを附与している案件について、ムーディーズが「ちょっと違うんじゃないの」っていう意見を公表していましたが、今週月曜日には、フィッチクロール(!)、DBRSの3社がトリプルAをつけているノン・エージェンシー(ジニーメイもファニーメイもフレディマックも関与していない)RMBSについて、やはリムーディーズが「我々ならトリプルAは付けない」という内容の意見を公表しています。CMBSの例とは異なり、 トリプルAを附与しない理由は裏付け資産の質とは直接関係しておらず、オリジネーターの買い戻し義務の範囲が狭く、表明・保証違反を問えない可能性が高いため、投資家とオリジネーターの利害一致性が充分ではないというのが理由です。

日本の証券化業界では、1999年、フィッチとムーディーズが三和銀行、東京相和銀行の案件にそれぞれ格付けを附与、それに対して、S81Pが格付けを附与しない一方で「どうやったら日本のRMBSに格付けが付くのか」という趣旨のレポートを出して業界の中では話題になったものです。昔過ぎて、ちょっと恥ずかしいですが…。

2013年3月25日月曜日

トリプルAが利払いすらできない(米CMBS編)


FT紙に、アトランティック・シティのショッピング・モールを裏付けとしたローンを組み入れたCMBSで、 トリプルAの利払いすらできないという話が出ています。このあたり、原則の存在を証明する例外(the exception that proves the rule)だよなぁーとは思いますが、メディアが報道したくなる気持ちは分かります。

クレジット・デリバティブと自己資本アービトラージ

 BISが、CDSを用いた賦課資本減らしアービトラージを制限しようとしているという話がFT紙に出てました。BISの言つていることはごもつともというか、CDS(保証ですな)でリスクを外した一方で、その費用は「実際に損失が発生したとき」に「その発生した損失だけ」支払うことというのは実質的には保証ではない(火災保険で、被害額を保険料として払うことにして、同額を保険金としてもらうのと同じ)わけですが、現在の規制上はなぜかそれでも必要自己資本が少なくなってしまうので、それを是正しようというものです。

 ちなみにFT紙の記事に出ているゴールドマンと三井住友銀行の話は2003年に発表(三井住友側GS側)されているやづで、実はあまり怪しい案件ではありません。ただ、当時の自己資本比率規制の穴を利用した案件ではありましたが…。

 それにしても、かつては邦銀の自己資本減らしを助けるのが外資系の証券化バンカーの大きな食い扶持だったのですが、時代は変わるものですね。

2013年3月24日日曜日

教科書通りといえばその通りですが(デルとブラックストーン)

ブラックストーンによるデルへの買収提案には、デルの金融子会社をGEキャピタルに売却することが含まれているとか。不要な資産を売却して資金を作るって、(昔の教科書に書いてあった)LBOの典型的手法ですよね。

80年代後半から90年代のアメリカでの投資銀行業務のダイナミズムについては、Barbarians at the GateDen of ThievesPredators' BallLiar's Pokerあたりを読むとよく分かるというか、カネ儲けだけではなくて、こういう「知湧き、肉躍る」系の業務に憧れたりもいたしました。

PE間競争

プライベート・エクイティは入札だと競争するけれども、入札にならない案件では、一旦合意された案件に対して競合買収を申し入れることは滅多にないそうです。言われてみれば確かにそうですね。あまり関心を払っていなかったのですが、独占禁止法違反で現在大手PEに対して訴訟が提起されていて、そこでは「共謀によって」競争を避けているという議論が展開されているようです。

今回のデルに対するブラックストーンの買収提案は、マイケル・デル氏主導とはいえシルバー・レイクというPEも付いているわけで、他のPEの案件に競合しないという暗黙のルールが破られたという意味で重要だという話がWSJ紙の「ディールポリティック」ブログに出ています(WSJ紙の類似の別のブログもあります)。ブラックストーンの訴訟対策の一環というのはうがちすぎなのでしょうけれど、暗黙のルールが破られたことは興味深いようですね。

ブラックストーンがデルに買収提案?

いろいろな報道によると、金曜日の深夜が〆切だったデルに対する対抗買収提案は、ブラックストーンが提出したみたいですね。どうも、その提案が「スタブ」型LBOだったようで、要するに、一定の株式は公開したままにしておくとか。ブラックストーンがどの程度のスタブを残すのかが明らかでないので金額も定かではないものの、元々の案件規模が大きいため、スタブの存在によって随分と必要な金額も変わるそうです

スタブというと、チケットの半券という意味で用いるのが日常会話では一番多いはずですが、他にも(コンピューター用語を含め)いろいろな意味があるんですね…。

2013年3月23日土曜日

今度はフィッチが英国を格下げする『かも』

ムーディーズに先を越されて、ノベルティ・バリューが剥げて面白くないと思っていることは想像に難くないのですが、フィッチがイギリスを格下げ含みのウォッチにしています。予算発表の直後ですから、ちょっとかわいそうな気がしますが、逆に、格付け会社として目立つためには、このタイミングがよかったということなのでしょう。

私自身は、景気よくないときに政府支出が増えるのはやむを得ないというのが基本的な考えかたであって、あまり格付け会社のいうことに敏感になりすぎるのはどうかと思いますが、イギリスも連立政権ですし、野党党首も結構若くてそれなりに注目を浴びているところでもあり、あまり変な攻撃材料を与えたくないところではあるのでしょう。アメリカに比べると景気回復が遅いのは確かですし、なかなか難しいところですね。

なお、カントリー・シーリングっていうんですかね、仮に英国債がトリプルAでなくなったとしても、イギリスが国として妙な政策を取ることは想定しにくいため、英国発の案件のトリプルAがなくなるわけではありません。日本の証券化ものが今でもトリプルAになるのと同じですね。

証券化バンカーもバブルの犠牲?

FT紙のジリアン・テット氏のコラムで、ミシガン大とプリンストン大の研究者による調査が紹介されてまして、一般的な証券化業務の従事者は、「バブルだ」「もうこんなの価値がない」という内容の電子メールの交換ばかりが報道されている中、実際には多くの人たちが市場のピークに近いところで不動産を買っている、あるいは、ピークで売り抜けていないということが分かったそうです。テット氏の結論は「Skin in the game」、つまり、当事者に案件失敗の損失を負担させることでむこうみずな行動を防げるというのはあまり正しくないというものです。

海外での訴訟等を見て思うのはまさにそうで、多くの人は証券化の技術も信じていたのだろうし、住宅価格が上がり続けるとも思っていたのでしょう。プロとアマチュアの差は、前者はそれが「想定」であることを知っていたこと、後者はそれが「真実・事実」であるかのように喧伝されていたことなのだと思いますし、プロはアマチュアに対して「想定は想定でしかない」ことをきちんと説明する義務があったのだろうとは一般的には思いますけれど、プロだからといって間違えないわけではないんですよね。もっとも、プロは知識が深い分、自己責任を問えるというわけで。

船の担保価値が下がっている!という話

NYT紙によると、2008年に1.5億ドルした貨物船も、いま4000万ドルでしか売れないそうで、船舶を担保に融資しているヨーロッパの銀行が大変困っているそうです。融資の残高は3500億ドルに上るそうですが、担保価値の下落を正確に捕捉して決算に反映させている銀行はほとんどない(※)とか。この記事によると、HSHノルドバンクやコメルツといったドイツの銀行は、船舶融資で税額控除があるため貸し手として大きく、ノルウェーのDNB、スウェーデンのノルディア、イギリスのロイズとRBSなんだそうです。

ま、市場の最盛期に「これはいい」と言って融資を積み重ね、その後の市場下落で大っきな損をするっていうのは、銀行の典型ですよね。みんな、ブラック・スワンを読むべきだと思うのですが…。

(※) このあたり、ロンドン鯨の話と同じで、所詮みんなの発想は同じなんですよね。

日本で言うと「シェア・ファイナンス」ですかね?

ロイターによると、米国で「マージン・ローン」を利用したLBOがヨーロッパから輸入されて活用が進んでいるとのこと。対象会社の株式を買収する際に、その株式を担保に融資を受けるというものですから、日本で一部のLBO屋さん達が言っているシェア・ファイナンスと同じものですね。

これは、被買収会社のライアビリティが買収後も残る際には有効な手法であることは間違いありません。通常は、買収に際して既存のライアビリティをすべて返済、再度借り直すという形になりますから、LBO屋さん達がみなハッピーになるわけですが、支配権異動に際しての借り直し条項が元々の借入になく、買収後も既存の借入が残るというケースの場合には、レバレッジをかけるのに有効ということでしょう。借り直しが現実的でない場合(銀行を買収する場合など)も有効ですね。

2013年3月22日金曜日

モーゲージREIT

日本ではREITは俗称で、投資法人のうち税制優遇があり、かつ、不動産(の信託受益権)に投資をしていて、さらに上場しているものをREITと呼ぶわけですが、アメリカでは不動産に〝関連する〟投資をする法人で、税制優遇があるのがREITという感じになります。で、アメリカのREITには「エクイティREIT」と「モーゲージREIT」の違いがあって、前者はエクイティ、つまり不動産の所有権を裏付けとするREITなのですが、後者は抵当権付債権に投資します。つまり、モーゲージREITというのは不動産担保融資の投資ビークルなのです。

で、アメリカでモーゲージREITのバランス・シートが劇的に膨張しているというがFTアルファビルに出ていまして、その背景には、エージェンシーMBS(政府系の住宅ローン保証・買取法人が関与する住宅ローンの証券化)のレポ取引があるそうです。レポとは端的に言えば証券担保ローンなのですが、証券の信用度が高い必要があり、エージェンシーMBSは打ってつけです。みんながエージェンシーMBSを担保にお金を貸したがるので、エージェンシーMBSを買い、そのエージェンシーMBSを担保に資金を調達すれば、調達コストが安くなるわけで、その結果、モーゲージREITの投資家は喜ぶというわけです。

だからといってモーゲージREITがお買い得なわけではないという落ちが付いていますけど。

悪意があれば損失を隠すのは実は簡単

ロンドン鯨の話は、米上院小委員会での公聴会以来盛り上がっているわけですが、NYT紙のこのまとめあたりが一番的を射ているのかと思います。トレーダー(日本語での一般的な表現は「ディーラー」ですが)の用いる専門用語・業界用語を上層部は完全には理解できておらず「ま、いっか」で見逃してたというのが結局はすべてだというのはおそらくその通りなのでしょう。

経験的に、現場が本当に悪意を持って損失を隠そうとすると、相当長い間隠し続けることができるというのはどのような組織でも同じであって、それが、事業法人の経理責任者とかであればともかく、トレーディングが本業のひとつである金融機関でも起こるというところが怖さなのでしょうけれど。

FT紙のアルファビル・コラムのこの記事も、なかなかいいです。まだ続きもあるようですし。

昔の名前では出ていないけれど

就職活動をしていたころ、シェアソン・リーマン・ハットンは普通に大学卒を採用していて、社会人になってみると、SGウォーバーグ、BZW(バークレーズ・デ・ゾエット・ウェッド)、ソロモン・ブラザーズ、シティコープ・スクリムジャーズ・ビッカーズ、ミッドランド・モンタギューなどというのがあるのを知り、業界にある程度いると、その他にも、ホア・ゴベットとかベアリングとかキダー・ピーボディとかスミス・バーニーとかいろいろな老舗があるのを知りました。

今日、シュローダーズがカザノブを買収するかもというニュースが出ていて、まだ名前が残っていたことに感慨を持ったものですから…。

2013年3月20日水曜日

格付け会社間の意見の相違(シンガポールREIT編)

格付け会社の間で意見が相違するのは、証券化のときのほうが罵りあいっぽくって面白いのですが、おそらく意識せずになされたものをシンガポールのREITの件で見つけました。

ムーディーズは、シンガポールのREITで無担保債務が割合として増えていることから、担保付での債務の割合がそれなりにあったREITについても、無担保債務の劣後性が減ったということで、有担保・無担保の差をなくすと同時に「無担保での負債が増えることは財務の柔軟性が増し、資金調達源の多様化にもつながるため全般的には信用度にプラス」という評価をしています。低金利がしばらく続くことも好材料だと。

一方フィッチのほうは、低金利で負債を増やしやすいことは財務内容の悪化につながるため、信用度にマイナスだと言っています。どうも、REITの特徴である配当目当ての投資家を喜ばせたい一方、不動産の利回りが下がっていて不動産を単に保有しているだけでは配当利回りが高くならないので、低金利下で借り入れを利用、つまり、レバレッジをかけることで配当を確保しようとする動きがあり、それはマイナスだと言うのです。

このあたり、ジャッジメント・コールの側面もあるためどちらがどちらという強い意見は私にはなく、単に、「面白いなぁー」と思っております。

CMBSとサービサー指名権

アメリカの話なのですが、CMBSの劣後部分を持っている投資家が不良債権処理の過程で対象物件を評価額で購入しようとし、その価格決定方法に対して優先部分の投資家が疑義を呈した裁判が和解したそうです(WSJ紙)。当事者には守秘義務が貸されているようですが、日本で言えば無剰余の後順位抵当権者が競売を申し立てられないのと同じような理屈で、劣後部分の投資家は、不良債権処理によって1円も得られないのであればサービサー指名などできないはずだという理屈になり、優先部分の投資家に有利な内容になっているようです。

識者によれば、今後、スペシャル・サービサー(≒不良債権処理業者)は、利益相反と見られないように行動しなきゃね、ということになるそうです。

日本では、なかなかこの手の訴訟が見られないため、前例・先例が見つけにくいですよね。もう少し、訴訟で解決するという習慣を、すくなくとも商取引では持ったほうがいいような気もします。

マチュリティのミスマッチ

金融危機に際して表面化した「錬金術」は、証券化だけではなく、SIVと呼ばれるものもそうでした。格付けが高くて期間の長い債券を購入し、それに対して、期間の短いCPやMTNを発行、短期と長期の利鞘を出資者に還元するという取引を背景にしたものでした。広い意味では「資産担保」型のビークルですし、また、保有していた資産の多くが、格付けが高く、格付けの割には利回りが高い証券、つまりは(サブ・プライムを含めた)証券化ものが多かったため、誰もSIVの発行する証券を買わなくなり、SIVは借金返済のために保有している証券を売却せざるを得なくなり、それによって他のSIVが保有していた証券の価格が下がり、それを見てSIVの資金調達がますます難しくなり…というスパイラルが起きたわけです。

ところで、今、アメリカではジャンク債(格好よく言えば「ハイ・イールド債」→日本の投信会社がよくつかう表現で、結構ダマしに近いと思いませんか?)の利回りが急低下していて、これは、絶対利回り(米国債利回り)があまりにも低くて、利回りとるためにはクレジット・リスクを追っかけるしかなくなっていることが背景にあるわけですが、買い手は保険会社や年金などの中長期資金ではなく、投資信託なんじゃないの?という話がFT紙のジリアン・テット氏のコラムに出ています。考えてみればそのとおりで、日本の(オープン・エンド型)投信同様、アメリカも一般的なミューチュアル・ファンドはいつでも純資産価額で解約できますから、その意味では脚の速いお金です。だからちょっと心配じゃん!というのがテット氏の言っていることで、それは確かにそうなんだろうなと思います。彼女自身、「そうなる(暴落する)と言っているわけではなくて、そういうことも気にはすべきだけ」と書いてます。

外貨建て住宅ローン(またイギリスの銀行だ…)

FT紙に出ていた話なのですが、イギリスの銀行が、お金持ち相手に、金利の低い外貨で住宅ローンを提供していたところ、ポンドが弱くなっていて、困っている人が増えているそうです。他の国でも流行っていたことがある(アイスランドとかそうらしいです、昔の話ですが)ので驚きはしませんが、それにしても、なかなかプロでしかとらないようなリスクを素人が取るっていうのは凄いですよね。この報道によれば訴訟にもなっているようですが、真偽は定かではありません。

ま、考えてみれば、日本の投資家に外債を売るのと同じリスクを取らせているわけで、その意味では、どっちもどっちと言えなくはありませんね。普通の家よりも多額の仕組債とか、お金持ちは買っているわけで…。

恐怖指数のオプション

VIXは株価指数オプションから計算されるインプライド・ボラティリティです。インプライド・ボラティリティを「予想変動率」と訳すのは若干抵抗があるのですが、というのも、VIX(や日経VI)は所詮アット・ザ・マネーに近いオプションのインプライド・ボラティリティでしかなく、では、スマイルを考慮した他のインプライド・ボラティリティと値が異なることを「予想変動率」という表現からどう説明するんだ、と言いたくなりますけれど、それはさておき、インプライド・ボラティリティが上がると思う人はVIXの先物を買えばいいし、下がると思う人は売ればいいということになります。

で、インプライド・ボラティリティはどのようなときに上がるのかというと、一般的には、株価が下がるときに上がります。本来であれば、ボラティリティは「変動率」なのでしょうから、株価が大きく動くと思われるときには、株価が上がっても下がってもボラティリティは上がるはずなのですが、株価が上がることを「オプションを買う」ことでヘッジしたい人は多くない一方で、株価が下がることをヘッジしたい人は多い(このあたりは、教科書が予定していないマーケットの心理ですね)ので、このようなことが起きるわけです。ちなみに、為替の場合は、ドル円が上がると輸入業者が困るし、ドル円が下がると輸出業者が困るという中で、日本は輸出超基調だからリスク・リバーサルを見るとプット優勢、つまり、円高になるとボラティリティが上がる傾向があるわけです。

ところで、VIXがずっと低下を続けていて、これは、株価が上昇しているにもかかわらず(あるいは上昇しているから)、大幅な下落を予想する人が減っていることを示唆しています。ところが、こうなってくると、VIXのコール・オプションが相対的にすごく安くなっているという議論があります。ですから、VIXのコールって、ヘッジとして結構いいかも!というのがこのWSJ紙のブログであって、実際、VIXのコールはクレジット投資(特にレバレッジド・ローンなど非投資適格企業向けクレジット投資)のヘッジとして結構いいじゃんという話は昔からあるのです。

2013年3月19日火曜日

キプロスと市場

少額預金者の負担は軽くて然るべきという議論はごもっともですが、かえって混乱のタネにならなきゃいいのですが。

2013年3月17日日曜日

キプロスと日本国債

キプロスが財政支援を受ける条件のひとつとして預金者から預金額の一部を税金として徴収するというので、ま、当然のことながら大騒ぎになっています。税金というから問題なのであって、要するに、このままだと銀行が(セクター全体として)破綻します→破綻を防ぐためには(まず)見た目の負債を減らす必要があります→預金は銀行の負債なので手っ取り早く、しかも薄く広く、預金を減らします、ということなわけですが、一般論として、銀行預金は個人の財産形成の第一歩なのと、企業間の決済に用いられるため、ここで利用者負担を強いるというのは結構おおごとなわけです。

いろいろな国のいろいろな報道機関が「こんごどうなる?」についていろいろな解説をしているのは当然で、大きく分けると、これでタブーがなくなったのだから他の国でも銀行預金はもはや聖域ではないという意見と、キプロスはちっちゃいし遠いので特別だという意見とに分かれているようです。IMF等がこのようなドラスティックな手法に踏み切れたのは後者が理由なのでしょうけれど。

で、日本の国債の話とどう結びつくのかと言うと、実はキプロスの話と理屈は同じで、キプロスは海外からの支援と引き換えに国民負担だったわけですが、日本では国債デフォルトの代わりに国民負担というシナリオは一応ありうるわけです。さすがにキプロスの場合1対1ではないようなので、たとえば10億ユーロの支援と引き換えに10億ユーロの国民負担というわけではない(財政なので乗数効果等があり、そこまで単純ではない)のですが、仮にJGBがデフォルトするとすると、結局それは税金と同じなので、であれば、増税すればいいじゃんということになり、その結果、デフォルトはしないという理屈になるように思っているわけです。

それにしても、少し円が買われたのは当然だと思いますが、週明け、どうなりますかね、為替相場や株式市場は。ユーロ/円とS&P500が相関しているという説もあるので、そうなるとあまり期待できないかもという感じでしょうか。


2013年3月16日土曜日

格付け会社間で意見が異なるのはいいこと(アメリカCMBS編)

ムーディーズが、「モルガン・スタンレー・キャピタル・I・トラスト2013-ALTM」というCMBSについて、自分たちが格付けを附与していたら、他の3格付け会社よりも随分と低くなったに違いないというレポートを発表しています。1件の地域ショッピング・モールを裏付けとする融資を証券化しているものなのですが、市況悪化時の不動産価格は評価額の35%下で、他の格付け会社の格付けよりも4から6ノッチ下が適正なはずなんだそうです。キャップ・レートの差が激しい(7%を使った格付け会社が1つ、7.8%を用いたところが2つあるそうです)のが要因で、ムーディーズは8.5%を用いているそうです。亀戸のサン・ストリート大丈夫かしら?というのと発想は似ているのかもしれませんね。

ちなみに、他の「3つの格付け会社」と書いてあったので、最初は冗談かと思った(ま、冗談のはずはありませんが)のですが、見たところ、クロールが格付けを附与していました。格付け屋さんを始めたのは知ってましたが、ムーディーズがクロールを格付け会社だと認識しているところがちょっと驚きです。もちろん、NRSROのひとつですから不思議ではないのですが。

2013年3月15日金曜日

ロンドン鯨その2

今日はロンドン鯨の件で、上院小委員会での公聴会が開かれています。詳細はクレジット・デリバティブやクレジット・インデックスの仕組みをよく知らないと極めて複雑なのですが、つまるところは典型的なというか、確かに、一取引担当者がうまいこと損失を隠していたというのとは異なるものの、損失を小さく見せようという動機が取引担当者/部門にあったこと、そして、適切なリスク管理ができていなかったことというのは、多くの金融機関の取引スキャンダルに共通する要素のようです。

ロンドン鯨取引の詳細はこちら、資料はこちら

ヘンな略語

デリバ:デリバティブ
ロンパ:ローン・パーティシペーション
クレデリ:クレジット・デリバティブ
レバ:レバレッジ

ロンドン鯨

結果だけ見て責任を問うのは酷なのだと思っていましたが、米上院小委員会のレポートを見ると、それなりにエグいことはなさっていたんですね。リスク資産を減らすため、ショートを減らすのではなく、ロングを取ることでカーブやベーシスのリスクを乗っけていたみたいで、やるほうの動機は分かるだけに、リスク管理ですよね、むしろ。

2013年3月13日水曜日

社債投資は儲からない

個人向け社債の発行が増えているという話が日経さんに出てましたが、私は、社債投資というのは基本的にはプロのものだと思っていて、どうなのかないなぁーと複雑な気持ちになります。根本的には、仕組債を買う(買わされる)心理と同じではないのかしらんとまで思ったりします。

社債の見た目の利回りは国債よりも高いです。これは、社債には国債よりもデフォルトのリスクが高いから当然です。ところで、デフォルトのリスクが高い分利回りが高いということは、長期的・平均的には、社債の投資は必ずどこかで損をすることになります。ということは、社債を買うことで国債よりも高い利回りが得られるというのは幻想なのです。

また、分散投資をしない、あるいは長期・平均的な考えかたをしないのであれば、社債投資はオプションの売りと同じです。オプションを売ることによって得られるプレミアムに相当するのは国債よりも(わずかながら)高い利回りで、オプションを売ることによるいわゆる「無限大の損失」は元本がゼロになる可能性です。国債を購入していれば(本当かどうかはともかくとして、一応のお約束としては、満期まで保有していれば)元本割れはしないわけです。

もっとも、まっとうな社債投信がないし、ジャンク債市場が発展しない国ですから、しょうがないといえばしょうがないのでしょうけれど。

2013年3月12日火曜日

インフレと金融政策

岩田先生の気概はすごいですね。物価は金融政策で決めることができるって断言なさったみたいですね。

私自身はインフレはインフレ期待によってもたらされると思っていて、日銀が人間の心を完全にコントロールできるわけはないのですが、岩田先生尊敬します。

でも、あまり言い過ぎると政府が責任を放棄するのでほどほどにというか、『政府にも相応のことを期待している』ぐらいおっしゃってもバチはあたらないと思うのですが…。

2013年3月9日土曜日

ゴールドマンとCSI

ゴールドマンがすごいなぁーと思うのは、自己勘定での投資の思い切りですよね。日本でも、USJとかアコーディアとか三洋とか銀座のティファニーのビルとかいろいろありましたが、アメリカでも当然活発で、YESっていうヤンキースの試合ばっかり中継しているケーブルテレビ局(日本で言うG+でしょうか)にかつて出資していたりしてましたよね。

犯罪解決ドラマのCSIの権利をGSがファンドに売却したというニュースは、数日前から出ていたみたいで、私が気付いたのが今日というのは遅かったようですが、いつもびっくりだし、感心します。

2013年3月8日金曜日

未実現信用コストの見積もり

IASBが公開草案を発表していて、まだ劣化していない債権について、今後1年間で合理的に見積もられる損失を信用コストとして損失計上する案を浮上させています。金融危機に際して、信用コストは実際の損失の確度が高まってから計上されていたことから後追いになってしまったことの反省のようです。

ところで、社債の利回りが高いのはデフォルトの確率があるからですよね? 合理的にデフォルトの確率を見積もって、それを信用コストにするということは、結局、社債を購入するときには一旦信用コストを計上、1年間デフォルトしなかったらそれを取り崩すという形で1年分の利息収入の帳尻を合わせる形にすることになりますね。別に理屈としては間違ってませんけど。

金利スワップの最高裁判決について(2)

 今日も例の判決を何度か読み返してみまして、この紛争において顧客側にすべての自己責任を負わせること自体には、結論として必ずしも反対しないものの、やはり、なかなか違和感が解消できない点があります。

○ 短プラとTIBOR
 金利スワップとは「将来の金利変動の予測が当たるか否かのみによって結果の有利不利が左右されるもの」で「基本的な構造ないし原理自体は単純」というのはそうでしょう。しかし、短プラで借り入れをしている企業に対して「リスクヘッジのための商品として」TIBORを変動金利とする金利スワップを提案することに、金融機関として一層の説明義務が生じるのは当然のように思います。
 私たち金融側の人間にとっても、金融機関がある意味恣意的に決める短プラと、(一部の金融機関が操作しているのかもしれませんが、一応)市場で決まる金利TIBORとの間の関係は複雑混沌としていますから、なおさらです。

○ 期間と平均
 繰り返しになりますが、金利スワップが「将来の金利変動の予測が当たるか否かのみによって結果の有利不利が左右されるもの」で「基本的な構造ないし原理自体は単純」ということはそうだと思いますが、それは、「将来の1回の金利」を当てる場合のように思われます。実際には、金利スワップは固定金利と変動金利の交換が複数回行われますから、将来の変動金利の平均と固定金利との間で予測をしなくてはならず、「平均」という概念が出てくる以上、一般の人にはそれほど単純な取引であるようには思えません。

 法律的に専門的に見たときに、この判決によって今後すべての金利スワップ訴訟で金融機関が勝つのだというふうに判断されるべきものなのだとすると、上の二つの理由だけでも、ちょっと寂しいです。私自身はどちらかに肩入れしているわけではなく、金融商品は「まっとうな」判断をする人でないと取り組むべきではないと思っていて、まっとうな判断には結構な情報量が必要なはずなのに、それを有していない人がカジュアルに取り組んでいるケースも多々見られるのではないかという問題意識があるだけなのですが…。

 なので、以前ここでも書きましたが、顧客側の論点の整理があまり上手くなかったのではなく、汎用性は高くないと思いたいところです。だって、(よくされる議論みたいですが)解約清算金なんて概算は簡単ですし、先スタートとスポットスタートの差なんて上の論点と比べれば本質的ではないし、レートの妥当性も意思決定のための要素としての説明がなされたかがきちんと論点にされていないように思えませんか?

2013年3月7日木曜日

金利スワップの件、最高裁判決

知っている人は知っていた、福岡の金利スワップの最高裁判決が出てましたね。結論としては顧客側敗訴で、金融機関の側はほっと胸を撫で下ろしていることでしょう。

法律面では素人なのであまりエラそうなことは言えないのですが、この判決に汎用性があるのかというと、あまりそうでもないのかなというふうに(現状は)思っています。というのも、顧客側が、もともとの銀行の行為が不法行為になるといっている根拠は、契約締結の是非の判断を左右する可能性のある:

① 中途解約時において必要とされるかもしれない清算金の具体的な算定方法
② 先スタート型とスポットスタート型の利害得失
③ 固定金利の水準が金利上昇のリスクをヘッジする効果の点から妥当な範囲にあること

について説明していないからというのですが、①は簡単に計算できますし、②も「利害得失」と書くと難しいものの(少なくとも事案では)両方とも提案させて比較しているようです。②に関しては、顧客自らが目先の金利上昇がないと考えていたことまで事実認定されてしまっているようですから、なおさらです。で、金利スワップが至極単純な取引であるという印象を判事に与えることに成功したのでしょう、③も「自己責任よ」ということになっています。

想像ですが、①と②で銀行がひどい奴らだという説明を充分にしたつもりになって「こんなヒドい人達に僕たち騙されたんです」というノリが通用するという訴訟戦略だったんでしょうね。

どんな金融商品も、見た目は単純であっても実は奥が深く、デリバティブと名の付くものは単純な金利スワップでも真剣に考えると意思決定にはさまざまな知識が要求されます。それをきちんと理解してもらった上で、「ひどい」とか「騙された」ではなく、「本来であればこの程度の知識が要求されるべきである」「私にはこの程度の知識があった・この程度の知識しかなかった」「金融機関はこのギャップを埋める一定の義務があるのではないか」という議論が見たかったのですが、逆に言うと、その点については議論が尽くされたとは思えず、その意味では、民法の条文の解釈にずばっと切り込んだ判例ではなくて、特定の紛争にひとつ区切りをつけただけのようにも思え、まだまだ先は長いと思ってもいいのかと。

それにしても、最高裁が「少なくとも企業経営者であれば、その理解は一般に困難なものではない」と、企業経営者をすべて同列に扱っているのは結構衝撃ですよね。

2013年3月5日火曜日

格付けの価値

アメリカもトリプルAでないし、フランスもトリプルAでなければイギリスもトリプルAではない(少なくとも主要3格付け会社のすべてからは)。しかし、米仏英の信用度を本当の意味で疑問視している人がいるとも到底思えない。となると、格付けの意味とはどこにあるのでしょう。

という疑問を、今日見ていたニュース・リリースで思いました。ひとつ(ふたつですが)はR&Iので、フランスの格付けをAAAに据え置いたというのとベルギーの格付けをAA+に据え置いたものの方向性をネガティブから安定的に変更したというのです。日本の格付け会社は、日本語で日本の投資家向けに情報を提供することに意味があるのは分かるのですが、この情報って、誰かの役に立っているのでしょうか? 敢えて誰かの役に立っているのだとすると、ヨーロッパの国債を組み入れる投資信託(定義として素人投資家相手)の説明に際して「組み入れ資産の格付けは最低でもダブルAプラスです」という証券会社(や運用会社)のためでしょうか…。不思議です。

もうひとつは、JCRが発表したノリタケの格付けの件で、いままでAだったのをA-に引き下げるとのこと。理由はつまるところ、今度の3月の決算が赤字になりそうなのと、今後もすっごく儲かる感じがしないからなんだそうです。しかし、ノリタケの信用度を真剣に分析しようという気が起きるひと自体、本来は相当なプロであるべきですよね。もっとも、これは日本の社債市場の問題なのかもしれませんが…。

ま、格付け会社もビジネスなので、話題になること自体望ましいのかも、と言ったら穿った見すぎなのでしょうが。

2013年3月3日日曜日

資産運用会社と銀行

私自身は、トータルではナローバンクの支持者であって、銀行は決済業務に集中し、融資は専業の会社がやればいいと思っています。ただ、リスクなくおカネを預けておける場所としての銀行の社会的な意義は明らかであって、集まったおカネは使わなくてはいけませんから、純粋なナローバンクというのはなかなか成立しづらいのでしょう。もちろん、集まった預金はすべて国債にするというビジネスモデルもありますが…。

で、金融危機以降、完全なナローバンクではなくてもナローバンクに近い銀行業というのがひとつ提唱されているわけで、それまで銀行がやっていたことの一部は資産運用会社が担うべき、あるいは、実際に担っています。大企業向け融資だとまだ分かりやすい一方、結局、中小企業向け融資にはノウハウがなく、しかし大企業向け融資なら社債を買うのと同じわけで、なかなか悩ましいところです。

で、結局はわかりやすい不動産融資にいっちゃうよね、というのがFT紙に出ていて、日本でもそうですが、なんだかんだいって不動産なんですよね、やっぱり。

2013年3月2日土曜日

アルゼンチンと「パリ・パス」

パリ・パスっていうのは、要するに「他と一緒よ」という意味のラテン語で、金融界では返済の順位が同じとか、Aに払ったらBにも払うっていう意味で用いるわけですが、アルゼンチンの話というのは、まさに、債務交換に応じた人と応じなかった人とがパリ・パスじゃん、NY州法では、っていう話のようです。

ということで、FTのアルファビルというブログでは「パリ・パスの惨劇」といった感じでひとつのカテゴリーになってます。既に日本の投資家のほとんどは債務交換に応じているのではないかと思いますが、まだの人がいたら注目ですね。

ユーロ/円の為替レートを見れば、米株の方向が分かる

というのがWSJ紙のブログの内容でして、ユーロが対円で上昇するということは世の中でリスク許容度が増していることを表していて、つまり、米国の株式上昇と機を一にするそうです。

で、(ここからが重要なようですが)イタリアの総選挙の結果などもあってユーロ/円がチャート的に重要な支持線を下回ってきており、これが、今後の米株下落を示唆しているのではないかということのようです。相関係数が0.73というのが重要なだけではなく、過去、ユーロ/円と株価とで反応が異なった場合、正しかったのはユーロ/円だったらしいです。

別に、私が信じているわけではないのですが。

世界最古の銀行

モンテ・デイ・パスキが、過去のデリバティブ損失について、当時の経営陣と、関連する投資銀行に対して民事訴訟を提起したそうです。

NYT紙にある程度詳しい話が出ていますが、それを見る限り、客の損失隠しの目的は投資銀行側には明らかですよね。客の側が「いや、取締役会も監査法人もOKっていってるから」と言ったら、それをどこまで疑うべきかは困っちゃいますけれど…。

イギリス・クローナ?

FT紙のブログによると、英ポンドはまだまだ下がる余地があるとか。通貨安は輸出にプラスですから、それほど悪い話でもないわけですが、「イギリスでインフレを心配する必要はまだない」というのは、昔を知る人間からすると隔世の感がありますよね。ま、それはアメリカも同じことなのですが。

で、日本でハイパー・インフレを心配する人がいるのは理解できないというのは、言い過ぎなのでしょうか?

アルゼンチン(続き)

あんまりちゃんとフォローしていないのですが、FT紙のブログによると、アルゼンチンは3月29日までに、ホールドアウト(過去2回の債務交換に応募しなかった債券を持っている債権者)に対してどのような支払いをする気があるのかNYの裁判所に提出しなくてはならないそうです。

アルゼンチンは、法廷で、「進んでホールドアウトに支払うことはない」と言ったようですが、一方で、NYの裁判所としては、ホールドアウトに払わない限り債務交換に応じた人にも払っちゃダメよという話のようですから、債務交換後の債券もデフォルトになるということでCDSの料率(保証料)が跳ね上がったとか。

3月31日が新(=債務交換に応じた)債券の利払日ということで、まだまだ目が離せないらしいです。

「金融市場は操作されている」?

スコット・アダムスというディルバートものの漫画家のブログが面白くていつも見ているのですが、彼によれば、アメリカの株式は今年中に20%下落するとか。金持ちが自分たちの利益のために市場を動かしているのだから、それを予想しておけばいいということのようです。

私自身は、ニュースのないところにニュースをつくるという彼の考えかたにはあまり賛成できませんし、誰かが市場を動かそうとしているというのもあまりにも出来すぎた話だとは思っていますが、〝一般の人〟から見ると、こういう話のほうが面白いんでしょうね。

<3月3日追加>
Huffington Postでも、アダムス氏のコメントが紹介されてます。

2013年3月1日金曜日

平成13年10月25日最一判・集民203-285

子供のとき、金曜日は7時までそろばん塾があって、家に帰ると年齢で5つ、学年で6つ下の弟が「宇宙鉄人キョーダイン」を見ていることが多かったのですが、兄の権限でキャンディ・キャンディを見ていました。著作権で有名な裁判になっているとはつゆ知らずだったのですが、機会があって判決を見てみました。

金融の人間が知的財産権などという法律的には高度で難しい問題に対する知見を持っているわけではないのですが、判決を見ていて思ったのは、(賛成するかどうかは別の問題として)少なくとも理屈の上では、キャンディ・キャンディというキャラクターは絵だけで成立しているわけではなく、原作があってこそあの絵に意味があってキャンディ・キャンディとして認識されているということが言えるのでしょう。であれば、絵を描いた人が、その絵をキャンディ・キャンディだと称して自分だけが利用できるとするのはおかしいというのが結論なのかと思いました。

単なる戯言ですが…。

財政赤字なんて気にするな!という話

ま、クルーグマン教授ですから当然そういう発言・解釈になるわけですが、最新のNYT紙への投稿で、先日のハンフリー・ホーキンス証言でのバーナンキ議長の発言は、まさに「財政支出(赤字)削減なんてナンセンスって読むのよ」という話です。

もちろん、日本の場合、既にGDPの2倍の債務残高があるわけで米国とは異なりますし、政権批判のひとつとしてできる議論としては、景気回復→投資機会の増大→国債からの資金逃避、というのも考えられますが、これまでなにやってもダメだったんだから、パーッとやりましょうよ、日本もって感じでもいいのではと思う今日この頃です。ここにきてFT紙が、現在の日本市場は期待だけで実態を伴っていないという論を展開してますから、日銀たたきだけではなく、ちゃんと政策面でも支えてほしいものです。