2014年11月29日土曜日

スタンダード・チャータード格下げ

イギリスの(って言うんですかね)スタンダード・チャータード銀が格下げになったというニュースが出ていたのですが、格下げそのものよりも、AA-だったというのにびっくりしました。

しかし、原油価格も下がっているし、大丈夫ですかね、世の中(金融の話ですが)。

2014年11月28日金曜日

債券を取引するには相手が必要

デリバティブや外国為替の場合には、まだ、なんとなく知っている人が多いようですが、債券の場合も、多くの取引は取引所ではなくて相対で行われています。で、デリバティブや外国為替の場合には取引対象が少ない(日本の場合、ドルを円でなんぼ、ユーロを円でなんぼという取引が大半)ので流動性は非常に高く、一般の金利スワップや通貨オプションのボラティリティについても同様なのですが、債券の場合は種類が非常に多く、一部を除くと決して流動性が高いとは言えません。特に、金融危機後は当局による「自己取引」の抑制策もあって、業者側が流動性の提供をするキャパが小さくなっているのも事実です。

業者側としては、規制を戻せばいいということになるでしょうが、当局のほうは逆だというのがFT紙に出てまして、いろいろなことが考えられるということのようですね。

国債を含め、たとえば、奇数年の12月20日と偶数年の6月20日を償還日とするもの以外は発行してはだめだということにして、すべてを取引所取引にすれば改善するのでは、と思ったりもしますがどうでしょうね。

金融商品と忠実義務

FT紙のコラムを見て思ったことですが…。

日本でも、業者は一定の忠実義務を負うのではないかという議論もないわけではないものの、一般論としてはそれは否定されていると思います。というのも、少なくとも法律という議論では、売主と買主という利益相反があるのは明らか、あるいは、取引さえあれば手数料がもらえるのだから顧客の利益を最優先するはずがない(少なくとも最良執行義務以外の分野では)ということなのだと思います。

ただ、「助言」を飯のタネにしている人はまた別ですよね!というのが話なわけで、昨今の保険販売屋さん(って、正確な言い方ではないのは承知で敢えていいますが)の議論がまさにそこにありますよね。

もっとも、街の保険屋さんが契約者に忠実義務を負っているわけではないことは、少し考えれば携帯電話屋さんと同じだという感じもいたします。しかし、それが理解できるのもリテラシーがあるからだけなのかも、と考えると、ちょっと寒いです。

2014年11月26日水曜日

サマータイムは和製英語?

サーカスという人たちのヒット曲の話ではなく…。

和製英語に気を付けようという話のときに、よく「サマータイムは通じない」って習いませんでした? 確かに、アメリカではデイライト・セイビング・タイム(しまった、今調べたらsaving単数なんですね…)ですよね。でも、イギリスではサマータイムと言いますよね。

という話を、さっき、『TVの「朝刊チェック」にNYタイムス東京支局長「ありえない」』という記事を見つけて思い出しました。イギリスだと、BBCの朝のニュースでふつうに新聞記事の紹介しているのになぁーって。

レバレッジド・ローンは危ないのか

調査によれば、今年の大型LBO融資は、いろいろな側面からリスクが高めだと言えるとか。融資額のEBITDA(収益性)倍率とか、コベナント・ライト(財務特約が甘い)の比率が高いといった要素が挙げられています。

一方、ではデフォルトの確率が高いのかというと必ずしもそうではないらしく、「利息は払える」というストラクチャーが多いとか。それも、PIKトグルとかそういった類のものがあるからと想像できますが、それはさておき「会社はコベナンツ違反でデフォルトするのではなく、カネが払えないからデフォルトするのだ」ということであれば、なるほど、確かに、デフォルトはしにくいのかもしれません。

もっとも、早期にデフォルトさせたほうが社会的にはプラスなのかも、というのがたとえば破産法とかの考えかたなわけですから、ちょっと、ちょっとなぁーという感じもいたしますが。

2014年11月25日火曜日

プライベート・エクイティと投資家

プライベート・エクイティ会社は、キャリード・インタレストといって成功報酬部分がものすごく大きいフィー体系になっているわけですが、そもそも論として、他人のおカネを運用しているという点では出資者(=投資家)が不可欠です。ところが、最近、大手の投資家は、PEファンドに投資しながら、PEと競争関係にもなるようになっています。これは案件を見ていれば明らかで、大手PE投資会社が、ソブリン・ウェルス・ファンドや年金基金と組んで企業買収をする例が増えています。この記事(ブログですかね)によれば、かつてはPE投資会社同士が組んで大型案件の買収に取り組んでいたところ、最近は、SWFは年金を連れてくることになっているのだとか。ふむふむ…。

欧米の事業債市場

米国で事業債の市況があまり芳しくないという話がWSJ紙に出ています。ひとつの要因は米金融政策の変化によるものと思われ、あとは、原油価格の下落によって米ジャンク債市場の16%(!)を占める同セクターの影響が出ていると。

ついこないだまでは、欧米の事業債市場の動き(国債との信用スプレッドですね)はほぼ同じだったのが、ここにきて米国だけが不芳というのがキナ臭いというのが結論のようです。しかし、そもそも米国の事業債市場が不芳というニュース自体、日本ではほとんど流れず、同じ発行者・債務者を対象にしているバンクローン投信の発行は続いてますね。

リスク文化

金融危機を防ぐのは自己資本比率ではなくてリスク文化だ!という話がFT紙に出てました。「計測は大変だけど、だからといって重要性が薄いわけではない」と。

でも、これっていろいろなことに言えるというか、恣意性の排除がものすごく難しいですよね。たとえば、金融商品の勧誘・販売姿勢について顧客保護をどこまで徹底しているかというのは、多分にポリシー(紙になんと書いてあるか)よりも態度の問題なわけで…。

2014年11月22日土曜日

フィッチが日本の銀行の格付けを確認

っていうニュースを見たら、タイミング的に、選挙とか、政権の経済運営の影響とか考えちゃいますよね?

実際はそうではなく、発表のタイミングもたまたまだったみたいですけれど。

2014年11月15日土曜日

市場の過熱~クレジット投資編

機会があるたびに申し上げていることではあるのですが、債券投資というのは、本質的にオプションの売りの性格を有しています。儲かってもそこそこ、損をするときはとことんというものです。なるほど、マイナス金利が出てきたので、儲かってもそこそこというのは理論的には言えないというのはあるので相対的な話でしかありませんが、たとえば、10年国債の利回りが0.5%だとすると、どれだけ儲かっても、この国債を保有していることによる利益は額面の5%(0.5%/年×10年)が最大です。一方、利回りが2%になれば、単純計算ですが、額面の15%の損をすることになります。「儲かってもそこそこ、損をするときはとことん」というのは分かりやすいものの言いかたでしかありませんが、別の言いかたをすると「利益と損失とで、損失のほうに偏っている」となるでしょうか。

これはクレジット投資でも同じです。クレジット投資の場合、投資の対象は金利そのものではなく、無リスク金利(たとえば国債利回り)との差です。10年で利回り1.2%という社債があれば、国債の利回りが0.5%だとすると、投資の対象は両者の差である0.7%というわけです。この差の部分についても利益と損失の間に偏りがあることはあきらかで、社債の発行会社が倒産しない場合にのみ、最大の利益である7%が得られますが、倒産したら損失は大きいわけです。

ところで、他の市場と同じようにクレジット市場も過熱します。不動産関連と異なり、金融危機時も企業の信用度は相対的に安定していたこともあり、また、米国では事業用不動産に限れば金融危機前の水準に回復しているという背景もあり、企業に対する融資はまさに過熱状態ということのようです。

私は、専門がクレジット分野なので、こういうときこそ銘柄選択の見せ所だとも考えるのですが、いかんせん、市場が過熱しているときには、銘柄選択=投資しない銘柄がある=おかしい、という議論になりやすく、真面目な人ほど苦労しているという状況が容易に想像できます。

それにしても、こんな状況でも、喜んでジャンク債投信を買ったり、バンクローン投信を買ったりする人がいるわけで、それが個人投資家なのだとすると販売している側が売っているからなのですが、この辺の状況、理解しないで販売することってどうなんでしょうかね。

プライベート・エクイティと長期安定保有

ヨーロッパのプライベート・エクイティ大手スポンサーのひとつCVCが、一般的なPEファンドではなく、長期保有による安定的なリターンを目指したファンドの組成をしているという話がFT紙に出てました。

もともと、年金基金のような、長期的な資金を有している人の投資先としてPEファンドは向いているのでしょうけれど、その投資先が短期(とはいっても5年くらいでしょうけれど)の投資回収ばかり気にしているというのは、エコシステムとして不自然というのは確かなんでしょう。ソブリン・ウェルス・ファンドとなると、あるカネを増やしたいという目的しかないわけでしょうから、投資ホライズンは一層長く、このような投資形態にも意味があるということですね。

2014年11月13日木曜日

日本のプライベート・エクイティ

WSJ紙の「プライベート・エクイティ・ピート」欄に、日本でのPE投資は盛り上がりを見せているようだが、LP(投資家ですね)のノリがいまいちというのが出てました。ま、これを見るまで、カーライルがSBIモーゲージを買収したことを知らなかったというのはどうなのよ、と自責の念もあるわけですが…

それにしても、TPGの日本の責任者の方がお辞めになって、自らファンドを立ち上げようとなさっている話は相当な話題なんですね。ま、先進国の中ではPE投資活動が相当低調なのは間違いないわけで、もう少しなんとかなってほしいですね。私の専門はクレジットなので、クレジット投資ももっと活発になってほしいのですが、それはちょっと無理そうです。

2014年11月4日火曜日

黒田総裁の会見を見て

株高もびっくりしましたけれど、それよりも円安ですかね。こんなすごい動きかたは初めてではないにしても、久しぶりに見たような気がします。

必要があって黒田総裁の会見の冒頭部分を見ていたのですが、わかる人にはわかるものの、わからない人にはチンプンカンプンかも、と少し思いました。おっしゃっていることは、要するに:

① デフレは諸悪の根源である
② デフレの原因はデフレ期待である
③ デフレ期待の反対はインフレ期待である
④ 日本にインフレ期待を植え付けなくてはならない
⑤ 日本ではインフレ期待が持続するためにはインフレにならなくてはならない
⑥ 消費税増税後の若干の景気停滞と原油価格安で、(実際の)インフレ率が(総裁の望むほど)高くない
⑦ モノの価格が上がるような手を打たなくてはならない

ということですかね。で、④、⑤の説明として、アメリカではインフレ期待として2%のアンカーがある(世の中の人が、中・長期的には当然のように物価上昇を期待していて、それ(予想値)が2%を下回らない)一方で、日本にはそのようなものがないというか、長期・慢性的なデフレによって深層心理としてデフレ期待が形成されてしまっているから、実際のインフレを見ない限りはインフレ期待を形成できないという考えのようです。

ま、そうなんでしょうね。というか、まず①を声高に言ってくれる日銀総裁が今までいなかったこと自体が問題なんでしょうけれど。