2010年5月26日水曜日

究極のプライベート・バンクとは

日本では、プライベート・バンクは「カネ持ち相手に、業者の都合のいい(=儲かる)金融商品を売り付ける」という位置付けになっています。リーガル・エンティティが証券会社であれば仕組債、銀行であれば仕組み預金という形ですし、不動産に投資させることをプライベート・バンクと称している人たちもいるようです。
カネ持ちの人達がなにを求めているのか、また、そもそもすべての金融資産をさらけ出すのかという点については疑問点が多いのも事実ですが、本来あるべき姿というのは:
  • すべての資産運用について相談に乗り、適切な助言を与える
  • 必要に応じて、税理士や弁護士とも連携する
ということではないかと思っていまして、本当に日本の法制度でこれができないのかどうか悩んでいます。一番近いのは信託なのでしょうが、考えるだけで面倒臭そうですね。でも、投資ビークルがないからサービスが提供できないというのは本末転倒のような気がしていまして、本来的には、助言をして、その助言に対して対価が得られるのが筋なわけです。
確かに、日本人はサービスは無料だと思っているという傾向は変わらないと思いますが、こと運用に関しては、そろそろ「タダほど高いものはない」ということが浸透しつつあるような気がするのですが…。

ロングとショート

皆が疑問に思っていて、誰も答を言ってくれなくて、でもあまり声を大きく言えないこと。なぜネイキッド・ショートはダメで、その反対はいいのでしょう? 値段が下がると思うのは悪で、値段が上がると思うのは善というのは、確かに、インフレとデフレとどちらが人類に壊滅的かという過去20年程度の歴史を見ればそうかもしれませんが、ハイパー・インフレの時代に戻るのはいいという理屈には納得できないように思います。
ネイキッド・ショートを禁止するのであれば、逆に、株式を購入する場合には、その資金が借りたものでないことを証明させる、ネイキッド・ロングも禁止させるべきだと思います。

ヨーロッパの銀行の資金調達

サブ・プライム後の金融危機に際して、多くの銀行が簿外でSIVと呼ばれる短期CP発行媒体を管理していて、そこの資金調達ニーズはすさまじいものがありました。誰が、どれだけ、いつドル資金を必要とするか分からないし、SIVを助けるとなると果たして体力が持つかどうか分からないという信用度に対する不安もあり、というのがお互いに疑心暗鬼を呼び、金融機関同士で資金を融通しあう市場がマヒすることとなりました。その結果として、たとえば、「これ以上隠すことはない」ことを示すためを含め大銀行がSIVを連結対象にした上で解体するといった措置も見られました。
現在ヨーロッパで起きていることはそれに近いと言えば近いのではないかと思っていまして、本源的にドルの預金を持っていないヨーロッパの銀行は、国際業務でドル資産を保有していますから、銀行間で調達せざるを得ないわけですが、誰が、いつ、どれだけの資金を必要とするか分からないので疑心暗鬼になっているんですね。しかも、ギリシャ問題もあって、各銀行の信用度もあまり信用できないとなると大変なんでしょうね。
市場で注目されているのは、ひとつはTEDスプレッド、もうひとつはLIBORとOISのスプレッドで、前者は、たとえば3か月の米国債(トレジャリー・ビルのT)と銀行間金利(ユーロ・ドルでED)の差ですから、これが開くということは、リスクのないおカネの値段と、銀行の倒産リスクとが分かるというものです。OISは翌日物金利の将来の予測と考えればよくて、さすがに明日は潰れないでしょうというのの積み重ねと、たとえば3か月後には銀行だって潰れるかもね、というのの差が現れてきます。
報道を見る限り、英独仏の大銀行もドル調達に苦労しているようで、そもそもユーロ・ドル市場が発達した原因となったアラブの資金はどこへ行ったのかしらという気がいたしますが、まだまだ注目のようです。

2010年5月23日日曜日

みな分かっていることとは思いますが

貸金業法改正の完全施行が迫っていて、影響緩和策などがいろいろ出ているのですが、どうも議論が偏っているというか、腑に落ちないことがあります。それは、自己破産(民事再生でもいいのですが)に対する社会的な蔑視をやめさせることで、そのための手続きの簡素化というか、法律なのかカウンセリングなのかわかりませんが、もっと気軽に自己破産ができるようにしなくてはいけないと思うのです。
多重債務問題もそうですし、今回の総量規制もそうですが、要するに、借りられない金額を借りてはいかんということを、高い立場から法律という形でお上が仕切りましょうというコンセプトですよね。それはそれで日本的でいいとは思うのですが、そこには「借りたカネは返さなくてはならない」という道徳心が隠れていると思うのです。
もちろん、一般論としてはそれは正しいし、それがなければ契約社会が成り立ちませんから、民事訴訟や民事執行をつかってガンガンやってほしいわけですが、一方で、倒産法制がここまで整備されている中、法人、特に株式会社だけが借金踏み倒しOKというのはおかしいのではないかと感じています。倒産は、知識があって、高価な弁護士を他人のカネで雇える会社にやたら使い易く出来ていますが、本来の精神は、苦境に陥った債務者を、債権者平等の精神を以てすくってあげることが社会的にはプラスということがあるはずで、それは、債務者が個人の場合にこそ一層重要なような気もするのです。
なーんてことは、きっと私がいわなくても指揮者の方がいろいろなところで言っているはずなのですが、ちょっと言ってみたくなりました。

時代は新興国なのか

個人の資産運用について考えさせられることが最近多いのですが、目先の損得ではなくて、長期的に考えると、新興国って重要なのかもと思うようになっている自分に気づきました。もちろんひとつのきっかけはギリシャ問題であって、結局、先進国の人たちだってロクなことをしないとも言えるわけです。あとは、これは個人的には常々思っていることではありますが、やはり、人類の歴史上、低成長の先進国から、高成長(+人口増加)の国に資金が向かっていくのは当然なんだろうと。
もっとも、往々にして高成長国は法制度が相対的に脆弱であり、コーポレート・ガバナンスも先進国ほどではないという弱点があり、かつ、高インフレは通貨のリスクもあるし…。本来的には、そのような点をきちんとプロが判断してくれる投信が一番いいはずなのですが、投信は投信で金儲け主義がはびこっているので信用できないんですよね。
自分ではじめるか、というわけにもいかず、かといって納得できる商品が世の中にはなく、なかなか悩みは深いです。

ニューヨーク州知事選挙

スピッツァー氏が知事になる前は州の司法長官で、彼が例の高級コールガール事件で対象したあとを受けた副知事もスキャンダル絡みで再選を目指さないということで、民主党のほうはまず候補者選びからスタートするわけですが、昨日、現在の州司法長官で、お父さんも州知事だったクォモ氏が立候補を表明しましたね。民主党候補の指名選はまずまちがいなく大丈夫らしく、この11月の中間選挙に合わせて行われる知事選はクォモ氏対共和党候補となるようです。
米国では、さまざまな公職が選挙で決められ、選挙に際しては往々にして民主党か共和党かをはっきりさせ、対立候補が出てくるのが一般的です。これは、司法長官も例外でもなく、その意味では連邦の司法長官のように、選挙されるのではなくて指名されるのとは随分違う、もともとが政治的なポジションではあるんですね。
共和党の指名選を争っている有力候補のうち一人はラツィオ氏で、2000年(ブッシュ対ゴアの大統領選の年)に、ヒラリー・クリントンがNY州から連邦上院議員に立候補したときの共和党側の対立候補でした。久しぶりに見たら、それなりに年齢も召しているし、太ったんですかね? 自分は10年前と変わっていないと思っているのですが、他人から見ると同じ(随分変わったと思われている)なんでしょうね。

2010年5月20日木曜日

フリーコノミクス的な考察

東京体育館のプリペイド・カードには3,000円で3,500円分になるのと、5,000円で5,900円分になるのとがあります。正規と言いますか、一見(いちげん)さん料金は600円(プールの場合、2時間)なので、3,000円のプリペイド・カードを買うと、1回あたりの料金は、600円/回×3,000円÷3,500円≒514円29銭/回となります。同様に、5,000円のプリペイド・カードだと、600円/回×5,000円÷5,900円=508円47銭です。
この価格設定を見ると、3,000円分のプリペイド・カードは買ってほしいが、5,000円分のプリペイド・カードと3,000円分のプリペイド・カードはほぼ中立というか、どうでもいいと思っているように思えます。考えかたにはいくつかありますが、たとえば:
  • 3,000円の投資で500円儲かる → 儲け率は16.7%(500円÷3,000円)
  • 2,000円の追加投資で、さらに400円儲かる → 儲け率は20%(400円÷2,000円)
と、確かに動機付けとしては強いものの、既に16.7%のリターンを得ている人に対しては動意が弱いのではないかと思います。ま、そんな複雑な考えかたをしなくても1回600円が1回514円になると思えば安くなったと思いますが、1回514円が1回508円になったところで、安くなったとは思えないですよね。
おそらくですが、3,000円のプリペイド・カードを買うような人は、その時点でリピーターになることを確実視していて、さらに価格を下げることでより多く来てもらうメリットがプール側にないのでしょう。プールは典型的な装置産業といいますか、変動費がほとんどないビジネスですから、営業日は客が10人だろうが100人だろうがかかるコストは同じわけで、カネ払ってくれる人はみなありがたいのですが、どうせ来る人にサービスする必要はないということなんでしょうね。
なお、東京体育館には、ジム同様月会費で使い放題というプランもあるのですが、そうなると月5,800円です。プリペイド・カードで単価を514円29銭、または、508円47銭まで下げていると、12回以上泳がないとモトが取れない。うーん、このあたりの価格設定も不思議というか、是非、背景を聞いてみたいものです。

もっと勉強しておけばよかった

大学では一応経済学部ではあったのですが、講義にはほとんど出席せず、よく卒業だきたもんだといまだに思っているのですが、おそらくそれもあって、たまに「単位足りない、卒業(もしくは進級)できない」という夢をよく見るのでしょう。
それはさておき、インフレにはコスト・プッシュとディマンド・プルがあるみたいなことを習ったことがあって、実際に世の中に出てみると実はインフレはマネタリーな現象だなぁーと思っているわけですが、ブラジルの経済成長率が年率10%とかになっていて、供給が追い付かず、インフレ懸念があるとか。
日本の場合もそうだったのですが、経済が成長しているときに「インフレの芽を事前に摘む」と言って中央銀行が利上げできるかというと、実際には相当むずかしいというか、特に、ディマンド・プルの場合はそうだと思います。中央銀行が効果的なのは、あるいは活動すべきなのは、マネタリーなインフレのときだけなんだろうなぁーと。
ただ、マネタリーなインフレとはなんじゃいということを感覚的にではなく、アカデミックに説明できないのが、劣等生の悲しさというわけでして…。

2010年5月18日火曜日

恐怖指標

VIXというのはボラティリティ・インデックスのことで、要するに、S&P500のインプライド・ボラティリティの先物なのですが、ギリシャ問題がなかなか解決しなさそうだということで、またこれが上昇しているようです。
レバレッジド・ローンの世界では、個別銘柄のリスクではなくて、βのリスクと言いますか、個々のデフォルト・リスクの関係のないところで価格が動くことがありますが、このリスクはVIXでヘッジできるのではないかと理論上は考えられています。
コストの問題を考えると、VIX先物を買うよりも、VIXのオプションを買うほうが効果的だと考える人のほうが多いように思います。

2010年5月17日月曜日

ドコモ ワンタイム保険

金融に携わる人間として恥ずかしいのですが、ドコモと東京海上(って、正確には東京海上日動火災ですか)の業務提携の一環で、要するに、iモードから1回こっきりの掛け捨ての保険に入れるんだそうです。保険って、契約手続きがまどろっこしいのでついおろそかにしがちで、その分、入るときには短期・掛け捨てがもったいなくて、長期にしてしまって、かつ、長期だからというのでつい積立型を選びがちですが、ほんらいは、1回1回の航海に際して金持ちが引き受けてあげたリスクというのから始まっている(んですよね?)わけで、保険の本来の姿は1事象(=1回こっきり)掛け捨てですよね。
dwmailといい、iPhoneのものすごい攻勢に遭っているからなのでしょうが、最近のドコモのサービス、目が離せません。
ま、それより、これを機会に掛け捨て保険がもっと身近になって、若い人達にも保険の重要性を分かってもらえるようになればいいのにと思います。東京海上さんもそこが狙いなんだと思います。
それにしても、保険契約者がドコモで、被保険者が私たちというか、携帯の持ち主っていうことは、ドコモの立場は保険業法上なににあたるのかしら? 時間があるときに調べてみましょう。

ヨーロッパすべてに波及すると言ったのは私だけ

同じくAERA誌で、ギリシャ問題がほとんどのヨーロッパ諸国に波及すると答えたのを掲載していただきました。ユーロのことを「ドラクマーク」(ギリシャの旧通貨であるドラクマと独マルクを合わせた造語)というしゃれが英語メディアではさかんですが、要するに:
  • ギリシャを支えるために、他の国の財政状況がおかしくなる
  • 自分の国の財政がギリシャを支えるのが対有権者上耐えられなくなり、各国通貨に逆戻りする
というふたつのシナリオのどちらもありうると思っていまして、それがあの回答なのです。いずれにしても、ユーロという通貨が安くなることは必至ではないかなぁーと。
でも、ドル円は重要だけれども、ユーロ円は直接は重要ではないという意見もあるんですね。勉強になりました。

不動産についての言いわけ

AERA誌をご覧になって憤慨なさったかたに、宣伝をこめて。
あのコメントには「ハイパー・インフレになったら」という大前提がありまして、ハイパー・インフレになると経済が混乱してモノの価値の「価値」というところにすら疑義が生じ始めますから、そうなってくると「有事のゴールド」現象として、皆が欲しがるであろうものに需要が集中するであろうということも言いたかったのです。PERが高い株は、結局高くあり続けるというのに似た感覚といいますか、価格=人気であるとすると、理不尽なものほど混乱期に強いと言い換えてもいいかもしれません。
先日第1稿を書き終えた単行本(6月末か7月末にでる見込みです)でも書いたのですが、自分の住む家という意味では、どんな場所でも住めば都ですから、借金が返せて、払ったおカネの価値があって、ずうっと住みたい場所であれば、どこでもいいんだと思ってますよ、ホント。

2010年5月15日土曜日

格付け

米国で、格付け会社の規制案が金融改革法案に盛り込まれる可能性が出てきています。特定の証券に対する格付けを、どの格付け会社が付与すべきかについて、政府機関が決めるとか。実際問題として機能するとは思えないという論調が支配的ですが、当該修正案は上院で結構な賛成を集めたので、もしかするともしかするかもという懸念も出ています。
識者指摘のように、3大格付け会社は理由もなく大きくなったわけではなく、一応、survival of the fittestの結果なのでしょうから、ここでこのような規制ができた結果、独立系の格付け会社が果たしてその役割を果たせるのかは疑問です。ただ、その一方で、個人的には独立系のピュアな、つまり、高い格付けを付与しないとおカネがもらえないとか、そういう利益相反がない人達の格付けが受け容れられる「世の中」にはなってほしいと思っています。
そう、そういう「世の中」になることが重要なんですね。昨日付けのFT紙のLEX欄にもあるとおり、実際には、投資家の側で、独立系の意見にカネを払おうという人達はいないし、さらにいうと、(これは、私もいろいろなところで指摘していますが)投資家の側だって、実は甘い格付けが欲しいんです。そうでない限り、日本に2つも格付け会社があって、甘い格付けを出し続けているはずはないわけです。
「あそこの格付け会社の格付けは、実際には甘い」ということを皆が知っていて、かつその格付け会社の符号を使い続けるというのは、格付けの本来の目的を考えると道理に合わないですよね?
私が、金融の世界と関係のないところで、知人や家族とよく言うことで「政治家の質は有権者の質を越えられない」、つまり、どんな人が首相になり、どんな政策になっても、結局は自業自得でしかないという持論があるのですが、それに近い話なのです、格付けって。

2010年5月12日水曜日

住宅資金非課税限度額

住宅資金のためであれば贈与税が安いあるいはかからないというのは知っていたのですが、あらためて調べる機会があったので、今回の税制改正と併せて見てみると:
  • 直系尊属1人1500万円まで無税(原則)
  • ただし、来年だけにもらうのであれば1人1000万円まで
ということですかね。それにしても、1500万円ですか…。両親祖父母がすべて生きていたら9000万円。夫婦で1億8000万円ですね。子供がいたら、自分の親(=子供の祖父母)を使えばいいので、要は、親が金持ちだったら、自分が住むでっかい家を買えって、そういうことなのでしょうか。庶民であることがますますみじめになっていきます。

英新首相

結局、少数与党ではなくて、連立与党ということですね。キャメロン氏は官邸前の演説に際して「ハング・パーラメント」という表現を用いていましたが、報道を見る限り、リブデムから3名入閣、クレッグ氏が副首相就任ということですから、少なくとも当面は安定与党と考えるべきなのでしょう。
それにしても、キャメロン氏はまだ誕生日(10月)が来ていないので43歳ですよ。ブレア氏も充分若かったですが、それでも44歳になる直前ですよね。いやいや。Wikipediaによると、キャメロン氏はウィリアム4世の子孫だとか。
オバマ大統領は48歳ですか、今。日本はいつそんな国になるのかしら…。若い人が選挙行かないんだから、永遠にそうはならないのかもしれませんが。

格下げのタイミング

このタイミングが悪いと言っているわけでもないし、格付けというビジネスが楽だというつもりもありません。また、報道≠公開情報、では正確性の上ではないので、それに依存することも危険です。
新生銀行の格付けにつき、昨日、ムーディーズがA3からBaa1というのには気付いていたのですが、フィッチがBBBからBB+にまで下げていたんですね。今、インターネットで見た限りには「新生」「ジャンク」という検索でヒットするニュースはありませんが、今後、どうなるでしょう。
で、確かに決算数字の確定を待っているべきだったという理屈は分かります。しかし、格下げが昨日だったということは、昨日中には預金した人、金融債を買った人、などがいるわけですよね。自己責任と言えばもちろんそれまでですし、繰り返しになりますが、拙速な格下げなどできるはずはないのですが、本件については、もっと早くてもよかったのではないかというように思っています。
今確認できる限り、S&PはBBB+安定的、R&IはBBB+安定的、JCRはBBB+ネガティブと、ウォッチ・ステータスでもないようです。今日・明日でしょうか? また、「所詮フィッチ」ではあるのですが、報道されたときの反応にも注目です。
なお、フィッチのこの格付けだと、新生さんがカウンター・パーティになっているデリバティブが組み込まれているストラクチャード・ファイナンス案件のフィッチによる格付けにも影響が出るような気がします。時間があれば、あとでクライテリアを確認しておこうと思います。もっとも、フィッチが格付けを付与したストファイ案件がどの程度あるのかは別の話ですが。

2010年5月11日火曜日

旭硝子Q1決算

絶好調! 電子・ディスプレー事業で売上が7割増、利益4倍ですか。知らなかったんですけど、液晶モニターとか液晶テレビの我々が触れる表面って、ガラスなんですってね。日本電気硝子さんも決算好調だったし。
他に同業は、米国のコーニングと、あと、日本で小さな会社がひとつあるだけと聞いています。液晶需要がなくなるとは(しばらくは)思えないし、見通し明るいですかね。
税金があるので第1四半期のキャッシュ・フロー計算書はあまりあてにならないのですが、前期に設備投資額が多かったせいか、今回は少なめで、フリーCFも充分に出ています。

J-REIT

FCレジデンシャル投資法人というところが、今朝の開示資料によると、増資停止の仮処分を食らったみたいですね。詳細は分かりませんが、同投資法人はもともとレバレッジが低い(借入が少ない)わけで、増資によってレバレッジを下げる必然性がないことは財務諸表を見れば瞭然です。ということは、なにか別の意図があって増資をしようとしたのかもしれず(増資先はそれを示唆しているようには見えます)、仮処分申請となり、認められたのでしょうか。
投資法人側は、今日中に保全異議を申し立て、その申し立て自体に対する決定が今日中にでることを予想しているとのこと。この手の裁判ですべての内容を公開することは難しいのかもしれませんが、でも、公開してほしいですね、なにが起きているのか。

<12日(水)朝>
追記です。今朝ほどの開示資料で、仮処分が認可されたと出てました。で、増資中止だそうです。大手REITではないのであまり注目されてませんが。

<12日夜>
ファンドクリエーション自体の増資(第三者割当)は、滞りなくすすんだようです。いちごアセットトラストから1億1275万円が払い込まれたと。

2010年5月10日月曜日

衣食足りて礼節を知る

「カネを出した分の価値」という表現は、ブルジョワめいているというか、金持ちみたいな発想ですよね。しかし、多くの場合「コスト・パフォーマンス」と言い換えられるはずで、要するに、100円であっても、価値のないおカネは使いたくないということなのではないでしょうか? 逆に言えば、5万円であっても、10万円であっても、コスト・パフォーマンスが合えば、つまり、「払ったおカネの価値があれば」それは使うということなのでしょう。
ただ、難しいのは「衣食足りて礼節を知る」というのと同じ感覚で、使える絶対額があるからこそ、コスト・パフォーマンスなんてことが言えるということなのでしょう。つまり、自転車の数万円であればコスト・パフォーマンスを考えられても、100万円の乗用車ですら買えない庶民は、数百万円の車のコスト・パフォーマンスなんていうことは想像すらしないですし、500万円の車のコスト・パフォーマンスを気にしている人であっても、プライベート・ジェットとファースト・クラスに乗り続けることと、どちらのコスト・パフォーマンスがいいかなどと想像しない人のほうが多いでしょう。
「衣食足りて礼節を知る」という言葉は、実は「衣食が足りないと、礼節など構っていられない」という事実の裏返しなわけですが、コスト・パフォーマンスもそうなんですかね? と、普段の買い物はまず百均にいく庶民(=私です)は思うのでした。

インフレと中央リニア新幹線

確かに、日本って過去20年近く、インフレなかったですよね。JRの初乗り料金なんてほとんど変わらないですし、目立って値上がりしたのってタバコぐらいですか? 缶コーヒーの定価は上がってますし、確かに、自動販売機やコンビニで買わざるをえないときもありますが、ドラッグ・ストアで飲み物の値段を見ると、目まいがするくらい安いです。テニスのラケットの値段も、テニス・シューズの値段も、変わっていないか下がっているくらいですし、ウェアなんて、Tシャツの価格は下がり続けているし、高機能性のスポーツ・ウェアって、買うところで買えば、冗談みたいな価格です。
ということを思ったひとつの理由は、今日(5月10日)、中央リニア新幹線の価格設定が話題になったという報道があったからで、リニア新幹線の東京・大阪間の価格は、のぞみよりも少し高くなって1万5000円程度とか。でも、2045年の話ですよ。そんな先の話を、現在の物価水準を基準にして、なにか意味があるのでしょうか?
インフレについては、「日本は国債をあといくらまで発行できるのか」という議論も同じです。なるほど、今日、明日の話であれば、現在の物価水準を基準にして金額を語ることに意味はあるでしょう。でも、数年後なんて、ハイパー・インフレで貨幣価値が10分の1になってるかもしれないじゃないですか。10倍のインフレになっていたら、国債の残高は10倍までOKなわけですよ。
ま、そもそもデフレを放置してきた政策担当者は誰だ?という話と、一方で、デフレによって恩恵を受けている人もいるというこなのでしょうが。

アコーディア減収増益

減収にもかかわらず営業段階で増益ということは、要するに営業経費が削減できているということですよね。規模でやっていけてるのはもはや2社しかないのでしょうが、たいしたものです。
いわゆるフリー・キャッシュ・フロー(営業CF-投資CF)が二期連続でマイナスで、前期はその分を借入で賄っていますが、今期は手ガネを使っていて、その分、手元現金は少なくなっています。投資CFに200億円近く使う会社の手元現金が46億円というのはちょっと少ない気がしますが、この営業CFがあれば、カネは借りたいときには借りられるという算段なんでしょうね。
全般的には、見た目は好調、しかし、フリーCFが不安というところですが、最近の倒産事例を見ると、フリーCFよりも見た目の数字(特に、債務超過か否か)を注目する傾向があるようですから、しばらくは安全そうですね。
銀行のそのような態度が正しいとは思っていませんが。

2010年5月7日金曜日

英国総選挙

ある程度は覚悟していたものの、誰も過半数を取れないというのは結構嫌なものですね。記憶にあるわけではないのですが、前回のhung parliamentのときはすぐに総選挙になったわけで、今回もそうなるのだとすると、せっかくEU内の非ユーロ国というユニークな地位が、不透明感というマイナス材料で打ち消されてしまうかもしれません。
もっとも、1974年当時とは異なり、英国病ということもないのでしょうし、また、日本(そしておそらくは他の国も多かれ少なかれ)同様、官僚機構はしっかりしているでしょうから、政治的な意思決定が必要でな部分についてはあまり心配はいらないのでしょう。
もっとも、こういう時期だからこそ財政政策に指導力が必要というのも事実ですね。ここ数日間は英国政局から目が離せないかもしれません。

2010年5月6日木曜日

投資用アパート

ちょうど今、居住用不動産の本を書いているところでして、その中で「投資用マンション」というセクターについても少し調べたのですが、世の中には、投資用マンションでは飽き足らず、投資用アパートなるものを買う人もいるようです。一般的には、アパート投資というのは、土地持ちがハウスメーカーからの提案にのって、カネを借りて上物を建てるというのが相場なのですが、投資用アパートでは、ハウスメーカーではなくいわばデベロッパーが登場してきて、土地を仕入れ、上物を(自ら)建てた上で、投資家に売るという仕組みです。投資用マンションのアパート版と考えればいいでしょう。そこで名前を聞く会社のひとつ、コマーシャル・アール・イーが民事再生法の適用を申請したとのこと。半年ほど前にひそかに債務超過になったときからちょっと心配はしていたのですが…。
報道を見るだけではなんとも言えないのですが、債務超過によって銀行が愛想を尽かしたというところではないかと思いまして、債務超過そのものは企業の借金返済能力と直接の関係はないんだがなぁー、と言いたくもなりますが、続報で確認いたしましょう。

2010年5月3日月曜日

ギリシャの私的整理

今日のいろいろな報道を見ていて「なにか、どこかで見たことのある話だなぁー」という感が抜けなかったのですが、今やっと思い当たりました。今回、国とかユーロとかIMFとかが絡んでいるので複雑な話のように見えますが、結局、起きていることって、ここ10年以上日本で日常茶飯事的に見られる(事業再生があるかどうかはともかくとして)私的整理と同じ構図、もっと正確に言うと、ここ2~3年増えた、プライベート・エクイティ会社と銀行の交渉と同じではないかと思っています。
ギリシャが会社、ギリシャ国民は従業員、IMFやEU加盟国は株主、ギリシャ国債を保有している人たちは銀行や社債権者ですね。矮小化して喩えると、ギリシャという会社が赤字垂れ流しになって、借金が返せなくなったのだけれど、潰れてしまっては困るという意味では債権者も株主も同意しているので、債権者が株主にプレッシャーをかけてカネを出させ、株主としてはその見返りにリストラを強要していると。給与や福利厚生をカットして、元利払いや配当に回す原資を確保しなくてはならないということです。
今現在の個人的な感触としては、今回のは長期的にはうまくいかないのではないかと思っていまして、というのも、社会的使命のないものを作っている会社のターンアラウンドが極めて困難なのと同様、競争力があって魅力的な社会を構築して財政基盤を安定化させることはとても難しいからです。ですから、まずコスト・カットに手を付けるわけで、このあたり、事業がうまくいかなくなったプライベート・エクイティ案件に似ていますが、それも限界がありますよね。
ギリシャ国民の資質について語れるほど詳しくはないので、その意味で今回の試みの成否を占うのは僭越ですが、少なくとも企業とのアナロジーで考えると、一筋縄ではいかんわなと。潜在成長性が高いのに外的ショックでやられた韓国の話とはわけが違うと思います。
日本史で習ったものを改めて確認したのですが、日本がIMF14条国から8条国に移行したのは 昭和39年4月とのこと。

2010年5月2日日曜日

バランス・シートを使うということ

ウォール・ストリート・ジャーナル紙の「ディール・ジャーナル」というブログに「そうは言っても、たいしたもんだ、ゴールドマン」というのが出てました(http://blogs.wsj.com/deals/2010/04/30/give-goldman-sachs-some-credit/)。他の金融機関と比較すると、会社のとっているリスクの詳細と、それに対する対処法に関する本当のトップ経営陣の関与度合いがすごいというのが内容です。
金融機関は多かれ少なかれ自らのバランス・シートをリスクにさらしながら業務を行っているわけですが、ということは、常に、重要な意思決定をしなくてはならないわけです。金額の多寡という話はあるにせよ、そして、トップがそもそもどのようなキャリア・パスを経てそこにたどり着いたかの差はあるにせよ、やはり、リスクに敏感というか、バランス・シートを使うビジネスであれば、バランス・シートに対する経営陣の感応度は重要ですよね。
これは投資銀行というよりも、むしろ、より本質的にバランス・シートをリスクにさらしている商業銀行のトップに一層必要な資質であろうとも思います。

2010年5月1日土曜日

ゴールデン・ウィーク

ゴールデン・ウィークということで日本の政局は一休みのようですが、帰省して、一般紙だけを読む生活をしていると、普段よりも政治のことが気になります。たまたま、アエラ誌にもコメンテーターの一人として端役ながら日本財政破綻についての意見が掲載された週であったこともあるのですが、この国の将来大丈夫なんだろうかということが気になり、ギリシャ問題や、英国首相の失言などを見ていたりすると、やはり、国の顔は首相で、好むと好まざるとのかかわらず、首相を通じて国民が判断されるところは否定できなかろうと思っています。
政治課題山積みな中、日本の格付けがどこまでもつのか、注目ですね。
救いは、(言葉の問題もあって)他の諸外国の先進国ほど日本のことがよく知られていない→外国人は日本のことを分かっていると思わない→首相の発言も割り引いて考える→日本駐在の人の意見を重視する、というプロセスで、欧米格付け会社の方々が3社とも相対的に冷静なことでしょうか。