2014年11月15日土曜日

市場の過熱~クレジット投資編

機会があるたびに申し上げていることではあるのですが、債券投資というのは、本質的にオプションの売りの性格を有しています。儲かってもそこそこ、損をするときはとことんというものです。なるほど、マイナス金利が出てきたので、儲かってもそこそこというのは理論的には言えないというのはあるので相対的な話でしかありませんが、たとえば、10年国債の利回りが0.5%だとすると、どれだけ儲かっても、この国債を保有していることによる利益は額面の5%(0.5%/年×10年)が最大です。一方、利回りが2%になれば、単純計算ですが、額面の15%の損をすることになります。「儲かってもそこそこ、損をするときはとことん」というのは分かりやすいものの言いかたでしかありませんが、別の言いかたをすると「利益と損失とで、損失のほうに偏っている」となるでしょうか。

これはクレジット投資でも同じです。クレジット投資の場合、投資の対象は金利そのものではなく、無リスク金利(たとえば国債利回り)との差です。10年で利回り1.2%という社債があれば、国債の利回りが0.5%だとすると、投資の対象は両者の差である0.7%というわけです。この差の部分についても利益と損失の間に偏りがあることはあきらかで、社債の発行会社が倒産しない場合にのみ、最大の利益である7%が得られますが、倒産したら損失は大きいわけです。

ところで、他の市場と同じようにクレジット市場も過熱します。不動産関連と異なり、金融危機時も企業の信用度は相対的に安定していたこともあり、また、米国では事業用不動産に限れば金融危機前の水準に回復しているという背景もあり、企業に対する融資はまさに過熱状態ということのようです。

私は、専門がクレジット分野なので、こういうときこそ銘柄選択の見せ所だとも考えるのですが、いかんせん、市場が過熱しているときには、銘柄選択=投資しない銘柄がある=おかしい、という議論になりやすく、真面目な人ほど苦労しているという状況が容易に想像できます。

それにしても、こんな状況でも、喜んでジャンク債投信を買ったり、バンクローン投信を買ったりする人がいるわけで、それが個人投資家なのだとすると販売している側が売っているからなのですが、この辺の状況、理解しないで販売することってどうなんでしょうかね。

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