2010年4月19日月曜日

プロ対プロじゃないのかしら…

ゴールドマンに対するSECの訴状(http://www.sec.gov/litigation/complaints/2010/comp21489.pdf)を読んでみました。いろいろなところで取り上げられていますし、いろいろな解釈がありうるのでしょうが、私が見たところ:
  • パラグラフ45 『ポールソンが空売り側で銘柄選択をしていることを知っていたら、ACAは同CDOの銘柄選択エージェントには就任しなかった』
  • パラグラフ59 『ポールソン側が空売り側で関与することを知っていたら、IKBは当該証券を購入しなかった』
  • パラグラフ62 『ポールソン側が空売り側で関与することを知っていたら、モノライン(保証会社)としてのACAは、当該CDOのスーパーシニアのラップ(保証)を合意しなかった可能性が極めて高い』
ため、ポールソン側の関与を開示しなかったことが違法だということなのでしょう。
うーん、パッと見、Yes-Noで答えられる質問に虚偽の回答をしたわけではなさそうなので、プロ同士の取引であれば、すべての情報を開示することを期待するほうがおかしいのではないかという気がします。というのも、売り手と買い手との利害が相反するのは当然であり、たとえば、(ほんとにたとえばですよ)ソロス氏が円を売っているというニュースを聞いたところで、すべての投機家が円の売り手に回るわけではなく、ひとつの材料でしかありません。しかも、その材料が正しかったとしても、通常は守秘義務で、業者の側が顧客の取引を他人に開示するはずもありません。こんなことを言い始めたら、セカンダリーの取引などあり得ないではないかというのが、市場関係の取引経験を持っている人間の感想のはずです。
しかし、シンセティックABS-CDO(あるいはシンセティックCDOスクエアードやそれ以上でも同じですが)は、可能性として、既存の投資家や投資銀行の〝ヘッジ〟が裏側にあるという可能性も否定できないのは確かです。実際、あの銘柄数のポートフォリオを見て、すぐに「ひとりの投資家がすべての銘柄をショートしようと思っている」と思える投資家は少数で、誰かのヘッジのためと思うほうが自然なくらいでしょう。銘柄のトランシェがトリプルBに偏っているとしても、デルタ・ヘッジかもしれませんし(←それこそ「コリレーション取引ですが、それはまたいずれ)。
現段階での資料だけから判断した私の考えは、銘柄数、裏付け資産(トリプルB格のRMBS)の特殊性、という2点から、確かに、ポールソン側の関与が開示されていたら、結果としてあの取引は成立していなかったのではないかというものです。ただ、それを言い訳にできるんだとすると、「プロ」の投資家なんて存在せんわなーという気もしますし、それについてはそれについてで言いたいことは沢山ありますが…。

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