以前から思っていることではあるのですが、インベストメント・グレードのデット(債券・債権)というのは、インベストメント・グレードであるがゆえにどうしても分析が甘くなって、結果、マージン・オブ・エラー(誤差の余地)が少なくなる投融資をしてしまう傾向が出てしまいます。結果論との謗りを甘受する前提で申し上げると、ABS-CDOやCDOスクエアードもそうですし、邦銀がおおやられしたSIVのキャピタル・ノート、ビスポークCDOにしても、そのように考えられます。
逆に言えば、もともとが投機的格付け、ジャンクとされる投資対象に幅広く資金をつぎ込もうと考えると、そもそもが危ないという前提でスタートしているだけに分析も慎重になりますし、また、しくじったらおおごとになるというデットの特性を分かりながら、かつ、しくじる可能性が相応に(すくなくとも統計上は)ありうることを分かって投融資しますから、マージン・オブ・エラーを充分に加味しながら進むことになります。結果として、分析能力が優れていれば、分散投資の効果もあるのでしょうし、それなりの投資リターンを上げることができるようにも思われます。
べつにこんなことは今に始まったことではないのですが、たまたま、ヨーロッパのソブリン・リスクの顕在化の話と、一方で、米国でブラックロック、ブラックストーン、ゴールドマンがレバレッジド・ローンを運用対象とする投信を設定しようとしているというニュースを見まして、あらためてこの感を強くしたものです。
ギリシャがついこないだまですべての格付け会社からインベストメント・グレードであったことに批判は多くないと思いますし、今回のS&Pの格下げ自体も批判されるべきではなかろうと思っていますが、ショック一発に弱く、しかも「投資適格の国の国債だぜぇー」という感覚のもと、マージン・オブ・エラーが少ない、つまり、分散投資をしないでギリシャ国債に投資していた人は多かったのではないかと思います。現在のJALの債券・債権を5~10%程度の利回りで多額に買う人はいないと思いますが、それは、危ないことが分かっているからで、相応の利回りで、かつ、少額であればスパイスとしては悪くないという感覚が一方ではあるでしょう。インベストメント・グレードは、どれだけ冷静な人でもなかなかそれが出来ないというところに怖さがあるのです。
ということを考えて日本の社債市場を見てみると、情けなくなりませんか? だって、スプレッドがほとんどなくてマージン・オブ・エラーを許さない債券しか取引できないんですよ。なかなか、まっとうなクレジット投資家(ならびに業者の側のクレジット専門家)が育たないわけです。
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