2010年4月29日木曜日

インベストメント・グレードという怖さ

以前から思っていることではあるのですが、インベストメント・グレードのデット(債券・債権)というのは、インベストメント・グレードであるがゆえにどうしても分析が甘くなって、結果、マージン・オブ・エラー(誤差の余地)が少なくなる投融資をしてしまう傾向が出てしまいます。結果論との謗りを甘受する前提で申し上げると、ABS-CDOやCDOスクエアードもそうですし、邦銀がおおやられしたSIVのキャピタル・ノート、ビスポークCDOにしても、そのように考えられます。
逆に言えば、もともとが投機的格付け、ジャンクとされる投資対象に幅広く資金をつぎ込もうと考えると、そもそもが危ないという前提でスタートしているだけに分析も慎重になりますし、また、しくじったらおおごとになるというデットの特性を分かりながら、かつ、しくじる可能性が相応に(すくなくとも統計上は)ありうることを分かって投融資しますから、マージン・オブ・エラーを充分に加味しながら進むことになります。結果として、分析能力が優れていれば、分散投資の効果もあるのでしょうし、それなりの投資リターンを上げることができるようにも思われます。
べつにこんなことは今に始まったことではないのですが、たまたま、ヨーロッパのソブリン・リスクの顕在化の話と、一方で、米国でブラックロック、ブラックストーン、ゴールドマンがレバレッジド・ローンを運用対象とする投信を設定しようとしているというニュースを見まして、あらためてこの感を強くしたものです。
ギリシャがついこないだまですべての格付け会社からインベストメント・グレードであったことに批判は多くないと思いますし、今回のS&Pの格下げ自体も批判されるべきではなかろうと思っていますが、ショック一発に弱く、しかも「投資適格の国の国債だぜぇー」という感覚のもと、マージン・オブ・エラーが少ない、つまり、分散投資をしないでギリシャ国債に投資していた人は多かったのではないかと思います。現在のJALの債券・債権を5~10%程度の利回りで多額に買う人はいないと思いますが、それは、危ないことが分かっているからで、相応の利回りで、かつ、少額であればスパイスとしては悪くないという感覚が一方ではあるでしょう。インベストメント・グレードは、どれだけ冷静な人でもなかなかそれが出来ないというところに怖さがあるのです。
ということを考えて日本の社債市場を見てみると、情けなくなりませんか? だって、スプレッドがほとんどなくてマージン・オブ・エラーを許さない債券しか取引できないんですよ。なかなか、まっとうなクレジット投資家(ならびに業者の側のクレジット専門家)が育たないわけです。

激変緩和措置と消費者金融業界

ムーディーズさんが「証券化への影響はあまりありませんよ」というコメントを出していたので、改正貸金業法施行に伴う激変緩和措置なるものを金融庁のホームページで見てみました。なるほど、借り手保護としては面白いというか、カネが借りられなくなると困る人に気を遣っているのは分かります。曰く:
  • 一定の「要件を満たす借換えを総量規制の例外として位置づける」
  • 「資産の裏づけがある貸付けや、将来的なキャッシュフローにより返済能力がある貸付けについては、『適用除外』に変更」し、それが「リボルビング契約の場合には…リボルビング契約について求められる定期的な返済能力調査義務を解除する」
と。ふむふむという感じがいたしますが、直接的に消費者金融業界のプラスにはならないんでしょうね。結局のところ、消費者金融業界の根本的な問題点は金詰まりであって、金詰まりの原因は収益性の悪化であり、収益性の悪化は規制強化ですから、規制を一部緩めることがマイナスでないことは確かなのですが…。
既存債務者の借り換え(「おまとめ」?)に応じて上げるというビジネス・モデルもありうるのでしょうが、そんな体力もなさそうですし。
つまるところ、利息制限法を越えた利息であっても借りたい人、その利息でないと貸し手の側のリスク/リターンが合わない人というのはいるわけで、リスク・ベースの利息設定をきちんとした上で、どうしてもというのであれば、業者に補助金を出すしかないのでは?という気もいたします。

2010年4月28日水曜日

ギリシャの影響

以前も書きました(http://ryosuke1967.blogspot.com/2010/04/blog-post_23.html)が、ギリシャ共和国(「ヘレニック・リパブリック」と呼びましたが)は相応の円建て債券を発行しています。すべてが個人投資家に売られたわけではありませんが、証券会社などでは「ギリシャ『国債』」といって販売しているわけで、安全だと思っていた人は沢山いるのでしょう。
それよりも、リーマン・ショックならぬギリシャ・ショックで、世界の金融市場が再度パニックになる可能性はないのか? まだ確率は40%くらいだと思いますが、先週末よりは確率が高まっているとは言えますね。

ギリシャ、ポルトガル

EU/IMFへの支援要請で一旦おさまるかに見えたギリシャ問題ですが、なかなかどうして。広い意味では、政治・経済的な統合をしないまま通貨(=金利)統合をしたことのツケではあるのですが、そんな根本的なことを言ったところで目先の問題の分析にはあまり役に立ちません。
考え方として「EU=中央政府」「構成国=地方公共団体」というアナロジーが正確かと思った時期もあるのですが、国というレベルで有権者から選ばれている人達と、地方公共団体とでは議会・政府のプライドや使命感が異なるわけで、言葉も、文化も、人種も、宗教も、「平均的に」見ると異なる国々が助け合うことを期待することは、理屈の世界ではともかく、有権者の感情を配慮しなくてはならない世界では、難しいのかもしれません。
アルゼンチン型の(ほぼほぼ)強制的な債務交換も視野に入れたほうがいいかもしれませんね。さもないと、特にドイツで世論が納得しなさそうです。となるとCDSのトリガーになって…というシナリオになりそうです。スプレッド的にはビスポークの合成CDOに入っていて不思議ではないですが、一般的にはソブリンは入らないのではという気もしています。
ポルトガルはどうか? EUも自分達を守る必要がある(結局、安全なのは、過去の例から見るとドイツだけ:イギリスは通貨統合していないので、別の議論)ため、ギリシャでとどめるのではないかと思いますが…。ショートで儲けたいのであれば、負債のGDP比率、公債費のGDP比率、そして、過去のスワップ取引でこれらの数字を誤魔化していないか、といったあたりに注目するのでしょう。

2010年4月27日火曜日

同業他社比較

4月も末が近付いてきて、決算発表が増えてきました。
決算発表は、決してエクイティの人達のためだけにあるのではなくて、実は私達デット側の人間にとっても極めて重要です。というのも、ある会社の業績がいいのか悪いのかを判断する上で同業他社との比較は不可欠で、一番容易な同業他社比較は上場会社の公表されている決算と比較することだからです。
つまり、本当は今日の今いまなど、銀行の審査担当者は決算短信のプリントアウトが机の上に山積みになっていなくてはいけないわけです。って、実際はなかなかやらないんですよねぇー、不思議です。

日本財政

昨日発売のAERA誌に多少コメントが掲載されてましたので(もっとも、他の著名な方々とご一緒してますからまったく目立ってませんが)(記事の概要はhttp://www.aera-net.jp/summary/100425_001613.html)、言葉足らずの部分を含めて整理を。
私が日本財政は破綻しないと思う理由は大きく分けて二つあります。
ひとつは「実質破綻を名目で逃げる」、つまり、ハイパーかどうかは別にして、インフレ状態にして実質債務を減らすという手があると思っているわけです。そんなものは形を変えた破綻なわけですが、名目的には逃げられるわけですね。なので、同誌に出ていた「あといくら借金できるか」という議論については、インフレを無視しているので、どこまで意味があるのか、という考えもあります。
もうひとつは、そうは言っても日本人が自分の国が財政破綻するのを指を加えてみているとは思えない(思いたくない)というものです。最後には情緒に理屈が勝って、増税を政策として上げる政党に投票するはずだと考えています。
後者については、実は相当危険な賭けだということは分かっていて、国民の政治無関心、政党の機能停止、首相の指導力、など、悲観的になる要素はいっぱいあるのですが、だからこそ、我々の世代が、若い人たちや自分の子供達にきちんと伝えるべきことを伝えるのが重要だと思うのです。

金利リスクとストラクチャード・ファイナンス

ストラクチャード・ファイナンスに限ったことではないのですが、カネ貸しというのは、本質的には金利リスクを取るべきではありません。金利リスクはマーケット・リスクであって、(市場性、つまり、動きからの損益発生が期待される場合を除く)クレジット・リスクとごちゃ混ぜにすべきではないからです。
しかし、世の中そんな純粋なことばかり言っていられないのも確かです。避けなくてはいけないのは「この程度のリスク、とっちゃおうや」と、往々にして素人が結論付けることで、玄人が吟味の結果リスクを取ることにしたのならともかく、素人(しかも、そういう人に限ってクレジット・リスクの分析もいい加減だったりする)がそういうことをすべきではありません。ま、そういう組織はいずれなんらかの形で痛い目に遭うのでしょうが。
ということを、フィッチの、ストラクチャード・ファイナンス格付けに伴う金利リスクの考えかたについてのリリース(http://www.fitchratings.com/creditdesk/press_releases/detail.cfm?print=1&pr_id=574036)を見て思いました。

2010年4月23日金曜日

また為替ヘッジの被害

以前、同じことを書きました(http://ryosuke1967.blogspot.com/2010/04/blog-post.html)が、また、ヘッジの損失が一因となったような倒産が発生(http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3262.html)しています。
業界の人が言う「輸入」、つまり、ドル高をヘッジする人たちというのは、ドルが安く(円が高く)なれば、その分、ヘッジ取引単独で見れば損をするのは当然なのですが、それは特損であって、原価も下がっているはずでからチャラパーになるべきです。特損が効いてくるのは、損益計算書上の数字、または、差損益を反映した貸借対照表の自己資本で、特に自己資本が棄損して債務超過になると、これは形式上はまずい。しかし、あくまでも形式上の話なので、取引先、とくに取引金融機関はこれを気にするべきではない。
というのは理屈なのですが、実際には、為替の取引をメインとだけやっている中小企業というのはなく、むしろ、メイン以外とやろうとする人達も多いわけですが、そういうヤンチャをしていると、生殺与奪を握っているメインからしっぺ返しを食うわけですな。
それがいいとは決して思えないのですが、とかく、資金繰りの切れ目はそのまま企業の存亡につながりますから、なかなか、力のあるメインとの付き合いは変えられないという呪縛、どうしたらいいんでしょう。

消費者金融証券化

S&Pさんの「Performance Watch: Update For Cashing And Consumer Loan-Backed ABS Transactions In Japan」というのを見ていて、確かに、現象面だけから見ると「さほど変わっていない」というトーンにあまり違和感はないのですが:
  • 傾向値として専業とカード・キャッシングとの間のデフォルト率のかい離幅が広がっている
ことはやはり気にすべきかと。その上で、元本返済率を見ると:
  • 専業のほうは一貫して低下傾向
  • カード・キャッシングのほうは上昇から安定化
であり、専業のほうの借り手が元本を返済しない(できない)状況が悪化しているように思われます。この原因は簡単で:
  • 専業は既存顧客に対する追加融資率が下がり続けている
  • カード・キャッシングのほうは上昇から安定化
しているからです。
なにが起きているのか? 原因はともかく:
  1. 専業は追加融資をしていない
  2. その結果、債務者は、追加融資を原資とした返済(同一社か、消費者金融会社タライ回しかは別として、セクター内での借換)ができなくなっている
  3. 借り換えられなくてデフォルトしている
ということが見て取れます。
このあたりのところを踏まえて、アコムさんやプロミスさんの格付けや社債利回りも注視する必要があるんですよね。

ギリシャの円建て債券

昨年6月の有価証券報告書によると:

  • 95年発行、2015年償還 200億円
  • 96年発行、2016年償還 300億円+400億円×2=1100億円
  • 97年発行、2017年償還 300億円+500億円×2=1300億円
  • 99年発行、2019年償還 250億円
  • 00年発行、2010年償還 400億円
といったところが、200『6』年12月31日現在、残高が残っている模様です。ブルームバーグでもあれば、もう少し詳しいことがわかるのですが、そうでなくても充分に恐ろしい状況です。
ところで、有価証券報告書の虚偽記載は金融商品取引法違反になると思うのですが、ギリシャは大丈夫? ソブリン・イミュニティ?

2010年4月22日木曜日

パナソニック2ノッチ格下げ(フィッチ)

三洋電機の株式取得が原因ですか…。ムーディーズがAa3、S&PがA+のところを、AからBBB+とは…。フィッチやるなぁー、とは思いますが、ちょっと無謀ではというのが第一印象です。
ただ、私自身、三洋電機のも、パナソニックのも、きちんと財務分析をしたことがないので印象でしかありませんけれど。

トヨタの格下げ

ムーディーズのトヨタさんの格下げはどう考えるべきか? 個人的には遅すぎたと思っています。なるほど、トヨタさんのような偉大な会社を格下げするのに躊躇する気持ちは分かるのですが、やるなら数か月前でないと情報としての意味を持たないと思うのですが…。
もっとも、それをやるためには、格付けされる側も大人にならなくてはならないわけで、このあたりが、格付け手数料をもらうビジネス・モデルの限界というか、情報料として投資家からカネを取らないことの限界なんでしょうね。
デンソーさんの格下げについては、「トヨタ・シーリング」と考えるのでしょう。それ以外に(実際には)あまり意味があるとは思っていませんが(個人的には、ですよ)。

<後日談 2010年4月23日午後10時14分>
格下げの直後にムーディーズが電話会議を開催しており、その録音を聞きました。結論から言うと「前より悪化している→格下げ」ということのようで、このあたり、Aa1からAa2という気安さもあるのではないかと勘繰ってしまいます。もちろん、背後では膨大な分析がなされているようで、米国での退職給付債務とか、米国の販売金融子会社が負っている残価リスクについても質問にしっかり答えてらしたので、流石という感はいたしますが…。

ソフトバンク格上げ

やれウィルコムだ、レコード・レーベルだ、と言っているこの時期にどうかという気もしますが、S&Pがソフトバンクの格付けをBBからBB+(ダブルBプラス)に上げています。以前、頼まれて真剣に中身を検討したことがあって、それこそ、同社のだけでなく、KDDIさん、NTTドコモさんと、すべての決算発表会、アナリスト説明会のビデオも見ました。結論的には、携帯が安定的にキャッシュ・フローを生み出していること、設備投資がさほど必要でないこと(もちろん必要ですけど、フリー・キャッシュ・フローを大きく損ねるほどは必要ではない)、あたりがポイントなのと、あとは、経営陣(孫さんですね)が、フリー・キャッシュ・フロー水準と、純負債削減水準を「コミット」していることあたりがポイントで、この会社の信用リスクは許容範囲ではないかと思いました。とはいえ、おそらく結論自体はKDDIさんについてもNTTドコモさんについても当時は同じで(KDDIさんについてはJ:COMさんの件の前でしたので)したけれど。
このあたりの銘柄の分析について、格付け会社さんに依存しなくてはならない金融機関は情けないですが、結局、S&PのBB+はS&P的にはジャンクなわけで、ということは、社債に投資する人は日本の格付け会社の格付け見ているっていうことですよね。このあたりが、クレジット市場のプロとしては忸怩たる思いがするわけです。

2010年4月21日水曜日

英会話のジオス

英会話のジオスが、帝国データバンクによると「準自己破産」申請(http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3261.html)とか。自己破産とは債務者自ら(この場合であれば株式会社ジオスという法人ですか)が破産を申請することですし、債権者が破産を申し立てることもできるわけですが、今回は、破産法19条1項2号に基づく取締役による申し立てということなのでしょう。従業員が従業員としての立場で破産を申し立てるわけにはいかないのではないかと思っていまして、その意味では債権者として(破産法18条1項)なのかしら?と思っていますが…。債権者であれば同法18条2項、取締役であれば19条3号により、「破産手続開始の原因となる事実を疎明しなければならない」みたいですけど。
同社は上場していない(ですよね?)ので、財務内容に関しては申し上げられませんが、以前にノバの決算書の内容は見たことがあるので、ご興味があるかたは(と、また宣伝になるわけですが)拙著「決算書のワナ-危ない会社の見破り方-」(扶桑社)(http://www.fusosha.co.jp/book/2008/05828.php)もご参照ください。

INGの不動産運営会社とクリードの不動産私募ファンド

ING不動産投資顧問がクリードのファンド運営を受託したというニュース、結構探してやっと見つけました、プレス・リリース(http://www.ingreim.com/reim/press/news/99_2010/20100419_CREP.jsp)。これをみる限りでは、関東財務局長(金商)第485号の「ING(註:全角です)不動産投資顧問株式会社」が受託したかどうか確認はできませんが、さすがに日本の不動産を対象に「ファンド運営を受託」したのですから、金商法上の投資助言・投資運用する会社がやっているのでは、と思います…。
もっとも、別のニュース(http://www.investmentnews.com/article/20100418/REG/304189976)によると、INGは不動産運用ビジネスの売却を考えているようで、ブラック・ロックが候補として挙がっているとか。コーポレート・ファイナンス、ストラクチャード・ファイナンス、不動産ファイナンスという3つの流れというか、不動産ファイナンスがストラクチャード・ファイナンスの一部であるという考えは世の中的にはもう古いのかもしれませんね。

2010年4月19日月曜日

拙著の宣伝(便乗)

今般の米国での訴訟ネタを見ていて、もう一度、そもそもなんでこんなことになったのか、あるいは、投資銀行の人達というのはどういうメンタリティを持っているのかといったあたりに焦点が当たってもいいのかなぁーと思いました。
そんな方々のために(ここから宣伝です):
がご参考になるのではないでしょうか?
前者については、今は昔といいますか、外資がどのように稼いだかという話を書いたのですが、特に批判的ではなく、冷静に、かつ、日本人とは視点が異なるという点に焦点を当てたつもりです。
後者は、逆に、金融市場来し方行く末を意識したもので、サブプライム問題の背景などについて、執筆当時までの事象を基に書いたものです。
お時間があれば是非是非(と宣伝でした)。
宣伝ついでですが、盟友の山下章太氏が「金融マンのための実践デリバティブ講座」(中央経済社)(http://shop2.genesis-ec.com/search/item.asp?shopcd=17262&item=978-4-502-67560-7)という新刊を発表しています。拙著の何冊かとかぶりますが、そんなケチなことは気にせず、ついでに宣伝させていただきました。

プロ対プロじゃないのかしら…

ゴールドマンに対するSECの訴状(http://www.sec.gov/litigation/complaints/2010/comp21489.pdf)を読んでみました。いろいろなところで取り上げられていますし、いろいろな解釈がありうるのでしょうが、私が見たところ:
  • パラグラフ45 『ポールソンが空売り側で銘柄選択をしていることを知っていたら、ACAは同CDOの銘柄選択エージェントには就任しなかった』
  • パラグラフ59 『ポールソン側が空売り側で関与することを知っていたら、IKBは当該証券を購入しなかった』
  • パラグラフ62 『ポールソン側が空売り側で関与することを知っていたら、モノライン(保証会社)としてのACAは、当該CDOのスーパーシニアのラップ(保証)を合意しなかった可能性が極めて高い』
ため、ポールソン側の関与を開示しなかったことが違法だということなのでしょう。
うーん、パッと見、Yes-Noで答えられる質問に虚偽の回答をしたわけではなさそうなので、プロ同士の取引であれば、すべての情報を開示することを期待するほうがおかしいのではないかという気がします。というのも、売り手と買い手との利害が相反するのは当然であり、たとえば、(ほんとにたとえばですよ)ソロス氏が円を売っているというニュースを聞いたところで、すべての投機家が円の売り手に回るわけではなく、ひとつの材料でしかありません。しかも、その材料が正しかったとしても、通常は守秘義務で、業者の側が顧客の取引を他人に開示するはずもありません。こんなことを言い始めたら、セカンダリーの取引などあり得ないではないかというのが、市場関係の取引経験を持っている人間の感想のはずです。
しかし、シンセティックABS-CDO(あるいはシンセティックCDOスクエアードやそれ以上でも同じですが)は、可能性として、既存の投資家や投資銀行の〝ヘッジ〟が裏側にあるという可能性も否定できないのは確かです。実際、あの銘柄数のポートフォリオを見て、すぐに「ひとりの投資家がすべての銘柄をショートしようと思っている」と思える投資家は少数で、誰かのヘッジのためと思うほうが自然なくらいでしょう。銘柄のトランシェがトリプルBに偏っているとしても、デルタ・ヘッジかもしれませんし(←それこそ「コリレーション取引ですが、それはまたいずれ)。
現段階での資料だけから判断した私の考えは、銘柄数、裏付け資産(トリプルB格のRMBS)の特殊性、という2点から、確かに、ポールソン側の関与が開示されていたら、結果としてあの取引は成立していなかったのではないかというものです。ただ、それを言い訳にできるんだとすると、「プロ」の投資家なんて存在せんわなーという気もしますし、それについてはそれについてで言いたいことは沢山ありますが…。

2010年4月18日日曜日

日本のクレジット市場

buzzでもさんざん書いたのですが、SECはゴールドマンを民事訴訟の被告として提訴したのではないかと思っています。一定の資料も入手したので、解説記事をここでと思っていたのですが、なかなか他のことをやっていて手が回らず、もう少し時間をかけてじっくり見てみたいと思います。
今回のGSの件で話題になったCDOも直接かどうかはともかく、少なくとも類似の商品は間違いなく日本の投資家にも販売された(=日本の投資家が購入した)はずなのですが、日本のクレジット市場を過去21年間見てきて、「いつかは」と思う変化がなかなか起きずにもどかしく感じることがよくあります。
特に悲しいのは、ジャンク債市場が育たないことです。ご案内のとおり、ジャンク債とは投資適格未満/投機的格付けの債券(主として社債)のことで、80年代後半にドレクセルの…という歴史はともかく、格付け的には、少なくとも定義としては、S&PのBBB-未満(BB+以下)、ムーディーズのBaa3未満(Ba1以下)ということになります。日本では、批判を恐れずに大胆な単純化をすると、R&IのA-未満(BBB+以下)になろうかと思います(JCRさんについてもA-未満/BBB+以下と言いたいところですが、市場に与えるインパクトという意味で、フィッチ同様、今回はちょっと考慮外としておきます)。
で、R&IのトリプルB格の社債が頻繁に取引されているかと言うと、ま、もともと、日本での社債の取引は「アポイントメント・オンリー」などと揶揄されたこともあるぐらい、市場と呼ぶのがはばかられるほどなのですが(そうは言ってもCDSがありますが)、これがR&IのトリプルBになってくるとほとんどないし、取引される利回り水準も、シングルAから突然スプレッドの水準が切りあがります。これは、まさにジャンク債取引の典型でもあるのですが、日本人特有の予定調和的資本主義の中では、ジャンク債は投資適格でない、つまり投資不適格であり、投資不適格な債券がそもそも取引されるのはおかしいので、実質的にはジャンク債であっても、投資適格の債券というセクターの中のクレジットの強くない銘柄群ということになるのでしょう。
それはさておき、では、R&IのトリプルB格の会社が悪い会社なのかというと、これが必ずしもそうではないわけで、そのあたりもジャンク債の発行会社と似ているのですが、多くの会社は利益を上げようと思って業務を行っていますが、往々にして、利益というのは利息をマイナス計上してからでないと計算されませんから、結局、利益を上げるということは利息を払うのと同義に近く、ということは、多くの会社は借金を返そうと思って業務を続けています。多くの会社はツブれないというのが本来の姿なわけです。
ところが、日本的な予定調和の中にいると、トリプルB格の会社自体が少ない(←実質ジャンクであることを皆が知っているので、投資適格のトリプルB格なのに、トリプルB格なら不要という人が多いのかもしれません)ので、結局、トリプルB格の会社は実は本当に危ない会社だけになりかねない危険をはらんでいます。
自己矛盾を起こしかねない議論なのですが、そうは言っても、トリプルB格の会社も財務分析をしてみるとそれなりにいい会社もあります。それは当たり前で、銀行や信金・信組が融資をしている先というのは、往々にして、R&Iが格付けを附与すればきっとダブルBとかシングルBにしかならない(規模が小さくて格付けになじまないことが多い)わけで、金融機関が融資している先が全部潰れていてはたいへんなので、実は潰れない先も多いわけです。
「他人(=格付け会社)は危ないと言っているけれども、自分達の分析能力を以ってすれば十二分に倒産リスクの回避は可能である」と言い切りながら積極的に日本の社債市場に打って出る、そんな人達の出現はいつになるのでしょう。
なお、同じことはストラクチャード・クレジットの世界でも若干言え、分析できないものはやるなという結論は変わりません。ただ、ストラクチャード・クレジットの世界では、ジャンクに手を出す人は実はそれなりに多く、それは(結果としては傲慢な誤解ではありましたが)、分析能力に自信があった現れと言えます(もしくは、格付け会社のダブルBやシングルBを、ストラクチャード・クレジットについては過信した、つまり、「潰れるとは言っていない」ことに過度な依存をしたのかもしれません)。

2010年4月15日木曜日

レバレッジド・ファイナンス

たいていの企業は、自らの存続がかかっているため生き残りに必死です。ということは、必然的に、融資(借入)を返済しようとします。
これは、LBOと呼ばれる、企業を借金過多にする場合も同じで、株主(ファンド)の側がどのように考えるかはともかく(とは言え、ブラック・スワンを読めば瞭然ですが)、会社の側は一所懸命に事業を継続し、借金を返そうとするほうが普通です。
つまり、格付け会社がなんと言おうと、債務者企業の側には融資を返済するインセンティブは極めて強く、レバレッジド・ファイナンスには充分に分散投資の効果が期待できると言えます。むしろ、投資適格企業のほうが、(ブラック・スワン的に)ネガティブなサプライズの程度が大きく、ポートフォリオの効果が期待しにくい上に、そもそもが投資適格であるがゆえに、投資家の側もマージン・オブ・エラー(誤差の範囲)がせまく、それが一層状況を悪化させる可能性があります。
ということを常々考えているわけですが、今日、米国から来たレバレッジド・ファイナンスの専門家の人達と会食をしていて、その思いを改めて強くしたのでした。

2010年4月14日水曜日

不動産と金融

ウォール・ストリート・ジャーナル紙(ごめんなさい、日本語版は見ていないので、出ているかどうか分かりません)に、モルガン・スタンレーが不動産ファンドで多額の損失を出した旨、報道されています。若干スキャンダラスな内容もないわけではないものの、市場関係者からすれば、バブル(と呼ぶのは、実は抵抗があるのですが)の絶頂期に買った物件の価格が下がっているので、売却したり、させられたり(=差し押さえに遭う、と考えてほぼ間違いないです:ノン・リコース融資の説明をする紙幅はないので)の結果、投資家から集めた資金88億ドルのうち54億ドルを失うことになるかもしれないという内容そのものには違和感はありませんね。
クレジットの世界の人間からすると、むしろ、不動産価格の下落幅が、金融機関の担保不動産の価値にどのように影響しているのかしら、ということのほうが興味があります。新生銀行さんの大幅な引当増の報道が今朝(14日)もありましたが、他はどうですかね。
ところで紙幅は「しふく」と読むのですが、このようなネット上の文章でも紙幅なのでしょうか? また、至福、私服、私腹と、会話の中で咄嗟に判断できるか疑問です。

冠婚葬祭

報道を見るだけではなんとも言えないのですが、一関にある冠婚葬祭会館業の会社が自己破産とか。地方で冠婚葬祭をやっているときくと「当然、互助会だろう」と思うのですが、どうもそんな感じでもないようで、だとすると、冠婚のほうは高級貸しホール業ですね。
葬祭のほうは、いざ利用するときには気が動転していることが多く、しかも(業者の側から信用度高いと思われない限り)原則現金払いですから、きちんと利用者さえいればそこそこビジネスになるので、冠婚のほうがうまくいかなかったのであろうという想像は働きますが…。

2010年4月13日火曜日

営業マインドと金融

今日、都内で打ち合わせに向かう途中、えっらく若い女性から「名刺交換させて下さい」と声をかけられました。はっはぁーというか、噂では聞いたことがあるので「なにかの研修なの?」と尋ねたらその通りでした。営業力と度胸はイコールではないけれども度胸があるに越したことはないわけで、間違った研修ではないですね。
しかし、バランスシートを使ってクレジット・リスクをとる業務には、このような態度は向かないと考えるべきです。クレジット・リスクはとりあえず入り口があればいいという種類のものではなく、入ったら出られない、これまで入れてしまったものをぶち壊すというリスクを常に抱えている(だから面白かったりするのですが)わけで、そんな業務に猪突猛進の人を就かせるわけにはいかないのです。
もちろん、新規案件がなくてはならない種類の業務、たとえば銀行融資であれば、新規開拓系の営業の人は必要です。しかし、本質的に営業=フロント=業務の中心、審査/分析=バック/ミドル=つまらん仕事、というカルチャーはあってはいかんのでしょうね。
もちろん、このあたりの議論が、アングロ・サクソン系の銀行/投資銀行における報酬制度の話ともつながっているわけです。

2010年4月12日月曜日

繰り延べ税金資産の証券化

FTによると、BIS規制の改訂に伴って自己資本としての扱いが認められなくなる「繰り延べ税金資産」につき、投資銀行が「売却しませんか」と営業に回っているとか。
繰り延べ税金資産の資産性は、あたりまえのことですが:(1) 繰り延べている期間内(日本では一般的に7年間)に、それだけの税金負債が発生する(だけの利益を生み出す)か? (2) そもそも永続的に利益を生み出すか という不確実性にさらされており、それがゆえに(詳しくは見ていませんが)BIS規制上問題になっているわけですが、その不確実性(=リスク)を誰かにとらせてしまえばよいわけです。証券化の基本的な考えかたですね。証券化は英語でいうとセキュリタイゼーション(securitisation/securitization)ですが、ま、このあたりですとむしろマネタイゼーション(monetisation/monetization)、つまり、「現金化」「現在価値の実現」ということになるのでしょう。
同じ記事に、年金負債についても同様の手法が検討されていると書いてありましたが、これは、半年ぐらい前に英国でロンジェビティ(「寿命」というよりも「余命」というニュアンスでしょうか)市場を形成しようという話があって、それにつながる話ですよね。
このあたりの、クロス・ファンクショナルな金融プロダクトの開発については、日本はどうしても後手後手に回るというか、アングロ・サクソン系は確かにセクショナリズムはあるのですが、いざというときには上層部同士が協力し合って新商品を作りだす素地を持ってますね。

2010年4月11日日曜日

実質金利と名目金利

以前から書こう書こうと思って忘れていました。拙著のひとつをご覧になった読者の方のブログで、私が「金利の高い国の通貨は安くなりやすい」と言っておきながら「実質金利の高い国の通貨は強くなりやすい」と同じ本の別の場所で述べていて、これは矛盾だというご指摘をしてらっしゃいました。
この議論は多分にアカデミックで、なかなか難しいのですが、一般的に、なんの条件も付けずに「金利」と言った場合は『名目金利』のことを指しまして、観察できる金利のことです。LIBORやTIBOR、スワップ金利、国債利回り、銀行預金の利率、すべて、観察できますから名目金利です。
名目金利は、通貨の購買力を保つための期待インフレ率の部分と、通貨の融通性の対価である『実質金利』とからなります。
インフレ率が高い国の通貨が安くなりやすいのは購買力平価仮説が正しいとすると理屈の上では正しく、一方、期待インフレ率が高いと名目金利が高くなります。これが「金利の高い国の通貨は安くなりやすい」ことの根拠です。名目金利が高い国は、往々にして期待インフレ率が高くて実質金利は実は低いことがあるので、見た目の金利の高さに踊らされないようにすることも大事ですねというのがメッセージなのです。
一方、実質金利が高いというのは、期待インフレを加味しても、まだおカネが増えることを意味します。インフレ調整後もおカネが増えるのであれば、皆がそちらにおカネを持っていくはずです。先進国間で短期金利の上下の期待によって資金が国境をまたいで移動しますが、そのひとつの理由が、期待インフレ率が変わらないのに名目金利だけが動くことにより、結果として実質金利が上がることがあるからなのです。
と、ここまでの理屈は簡単(引き算だけ)なのですが、厄介なのは、名目金利は「期待」インフレ率と実質金利とからなることで、運用成績が出るときには、インフレ率は期待ではなくて物価上昇は既に終わってしまっているのです。つまり、仮に期待インフレ率が高くても、結果として実際のインフレ率が低ければ、最終的な実質金利(=おカネを消費しないで貯蓄・運用に回した成果としての購買力の上昇)は高くなる可能性があります。
このあたりの議論が理解できないと、インフレ・ターゲットの話とか、もろもろの金融政策の話が一部ぼやけてくるんですね。とは言え、誰かが正解を持っている訳ではないのですが…。

2010年4月8日木曜日

投機とはなにか

成功するかどうか分からないけれど賭けてみようというのが、投機の定義であろうと思います。ということは、資本主義というのはすべからく投機家によって運営されてきたはずであり、自分の生活を良くするために利益を上げたい、利益を上げるためには世の中のためになる、世の中で受け容れられるモノやサービスを提供しなくてはならないという考えがあるからこそ、技術革新や斬新なアイデアが生まれるのでしょう。
などということは私が言うまでもないのですが、クレジット市場のみならず、金融市場に携わる純粋主義者としては、日経に報道されている「財政リスク扱う金融商品、一部取引禁止、欧州委が検討、委員長、投機、正当化できぬ。」あたりの一連の動きは納得できないんですよね。
どこかで線引きが必要そうなのはなんとなく分かっていて、その線は純粋主義者が思っているよりも厳しいところに来そうなのもしょうがないとも思ってはいるものの…。

2010年4月7日水曜日

ゴルフ場

過去に格付けを附与したゴルフ場案件でパフォーマンスが安定的に推移しているとムーディーズがコメントを出しています。業界はよくないけど、うまい人がやれば儲かるという、当たり前と言えば当たり前の話ではあるのですが、銀行にとっては耳の痛い話ではないでしょうか? 業界が悪いから貸さないというのはカネ貸しにとっては簡単な決断ですが、その中からツブれない先を見つけてこられるのが腕というものですよね。
それにしても、こんなレポートでまとめるほど沢山案件があったんですかね、ムーディーズさんは? 外資系2社はなんらかの形で格付けを取るような動きもあったんでしょうが、他にはどこでしょう? それとも、実はこの2社だけの話なのかしら…。

稀代のユーティリティ・プレーヤー

奇跡を願うしかなかったことは分かっていたとは言え、残念でなりません。社会人たるもの、常に、どんな状況でも役に立つということが本望なわけで、特に昨年のキャッチャーがいなくなったときに登場したときの格好好さといったら。ご冥福をお祈り申し上げます。

マーテロCDPC

ムーディーズの格付けニュースを見ていたら、マーテロという新しいCDPCに格付けが附されてました。CDPC=クレジット・デリバティブ・プロダクツ・カンパニーで、要するに、CDOの技術を利用した小規模なモノラインなわけですが、あれだけCDOが叩かれ、モノラインがボロボロになってよくできるわな、という時期からもう1年経過していますから、逆にビジネス・チャンスと見たのでしょう。
世の中にニーズがあるのかどうか、うーん、そこがよく分からないところで、リリースを見る限りはポートフォリオのシニア・リスクを取ることが狙いとか。しかし、規制資本の軽減についてはCDS全般的に随分と厳しくなることが予想されますし、一体どうするのでしょう?

2010年4月6日火曜日

国際分散投資

経済が発展してしまった国が、経済がこれから発展する国に投資をすることは当たり前のはずなのですが、これがなかなかうまくいかない。なぜなら、マクロで見て正しいからといってミクロ(個々の企業)が成長していないかというと決してそうではないからです。大金持ちが、一攫千金を、なくなってもいいカネで投資をするには面白いのでしょうが、そうでない限り、個人投資家が資産の多くを用いて途上国のエクイティや通貨に投資をしてパトロンになってやる必要はないわけです。一方、マクロとしては正しいので、そこはなんとかしてあげたいわけで、一人ひとりは少額、しかし、投信という形で資金を向かわせてあげるのが正しい態度なんでしょうね。
と、英国で総選挙の日程が決まり(5月6日)、オーストラリアが再利上げに踏み切ったことを見て、考えました。オーストラリア、住んでみたいなぁー。
なお、国際分散投資についての考えかたを含めた個人投資家の資産形成についての考えかたについては、そのうち某誌に出るはずなので、その際は報告します。クレジットの専門家とか自称しておきながら、個人投資家に社債を推奨していなかったりするわけですが…。

デリバティブとセントラル・クリアリング

日本でも金利スワップ(とiTraxx Japan)を清算機関に移行するという方向が当局から出ていますが、WSJによると、米国で、ファニーメイ、フレディマックの両社につき、金利スワップをセントラル・クリアリングに持っていけという方向になっているようです。
金利スワップは単純で、勝ち負けが分かりやすいので、金融危機の際に言われた「透明性」の向上にどこまで寄与するかは不明だと個人的には思っています(それは、トランシェのないiTraxx Japanも同じですが)けれど、初めの一歩だと考えましょうということなのかもしれません。

2010年4月3日土曜日

ヘッジ取引

金額が大きくないので大きな報道もされませんが、帝国データバンクによると「大手コンビニエンスストアのおにぎり・弁当のプライベートブランド製造」をしていた『新東京インターナショナル株式会社』という会社が民事再生の適用を申請したそうです(http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3252.html)。
正否は帝国さんを信じるとして、倒産の原因となったのが通貨オプションとのこと。曰く「為替リスクをヘッジするために行った通貨オプション取引において、近年の急速な円高を受けて今期のみで5億円以上、これまでの累計で10億円以上の損失が発生。さらに今後数年間、損失計上が見込まれていた。」とのこと。
ヘッジ取引はうまくいくこともあればそうでないこともあるわけで、マーク・トゥ・マーケットの損失を決算書に反映させることが必ずしも正しいとは思いません。察するに、取引金融機関は、当該〝損失〟による債務超過かなんかを見て、取引解消の口実に使ったんでしょうね。過去の決算書を見ていないのでなんとも言えませんが、「2005年に買収した子会社を通じて冷凍寿司販売事業の海外進出を目指していたが、計画が頓挫し数千万円規模の損失が発生。」のところが、銀行の逆鱗に触れたということなのでしょう。
だって、輸入の人が為替ヘッジで含み損抱えているのは、銀行にそそのかされてヘッジしていたら当然ですよね。