2012年12月9日日曜日

ヘッジに相場観は必要ない?

 デリバティブに関する誤解のひとつに、ヘッジとして行われた取引には相場観が入る余地がないというのがあります。たとえば、変動金利の上昇をヘッジするためにユーザー側が「固定金利支払/変動金利受取」という金利スワップをした場合、この固定金利の水準が市場でのスワップ・レートと比較して高いことというのは、ヘッジとして取り組んでいる限りはユーザー側に不利な材料ではないというのです。

 単純に考えれば、例えば、5年の金利スワップで固定金利が2%だとすると、この取引をする経済的な合理性は、変動金利側の今後5年間の平均が2%を上回る(上述の固定金利支払の場合)場合です。しかし、金融機関側は、金利が変動しなくなることがヘッジの本質であるため、そのような(平均が2%を上回るという予想・期待)をユーザーが持っているかどうかは関係ないというわけです。

 この議論がおかしいのは、じゃあ、固定金利が10%でも15%でもいいではないかということですよね。金利がどこまで上昇するかは誰にも分かりませんから、10%や15%を超えないといことにも意味があるはずです。しかし、多くの人は「そこまでは金利が上昇することはないだろう」と考えて、10%や15%の固定金利の金利スワップに取り組むことはありません。たとえば2%という固定金利を払う金利スワップを「やってもいいかな」と思う理由は、10%にはならないかもしれないけれど、2%にだったらなるかもしれないと思うからです。これが相場観でないのだとしたら、なにが相場観だか分かりません。

 業界に長いこといると、面白い(片腹痛い)屁理屈はいっぱい見ることができますよね。

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