ものすごく単純に「株価が上がる株で運用します」という投信があるとします。この投信は、今日、投資家から100というおカネを集め、たとえば5年間運用するということにしておけば、それなりに意味があります。100というおカネで上がりそうな株を買い、上がったところで株を売却し、あとはそのおカネを預金しておけばいいからです(本当は、その段階で投資家におカネを返すほうが良心的ですが…)。ちなみに、追加でおカネが入ってこない投資信託は単位型といいます。単位型であれば、オープン・エンド(解約できるタイプ)であっても許容範囲であって、株価が上がった段階で解約してくれるのであれば、別に問題はありません。
しかし、この投信は、追加型になると実際に機能することはほぼ不可能です。というのも、100のおカネがたとえば思惑どおり110になったとします。単位型であれば追加のおカネは入ってきませんが、追加型だとここで追加のおカネが入ってきます。「株価が上がる株で運用する」ということを標榜すると、ここで入ってきたおカネも儲けさせなくてはいけません。ということは、この時点から見て株価が上がる株を買わなくてはいけないのです。追加型の場合はこのサイクルが毎営業日後とに繰り返されますから、極端な話、「明日上がる株」を毎日買わなくてはならないということになります。当初の設定時に株価が上がる株だったとしても、これ以上上がらないと思ったら売らなくてはいけないわけです。
追加型の投資信託で「株価が上がる株で運用する」というのは「これ以上は上がらないと思ったら」、極端な話、翌営業日に株価が下がると思ったら、売却しなくてはいけません。そして、売却した手取金で、株価が上がり続ける(少なくとも明日の株価は上がる)株を買わなくてはいけないわけです。人間の能力としてそんなことが可能だとは思えません。実際、投資信託はヘッジ・ファンドではないので、銘柄の入れ替えや売買をそんなに頻繁には行わないのが一般的です。ということは、仮に「株価が上がる株で運用する」という投資信託があったとしても、それを信じてはいけないという結論になります。
これは、ベンチマークを上回ることを運用目的とする場合でも同じです。TOPIXを上回る株で運用するということは、TOPIXを上回り続ける株で運用しない限り看板通りではなくなるわけです。仮にTOPIX対比で割安な株式を見つけることができたとしても、割安が修正されたら、あるいは割安が修正されて割高になることが予想されたとしたら割高のピークのところで売却しない限り、前営業日と比較して相対的な株価が下がった場合(割高さが弱まったり、割安さが増幅されたり)、長期的には正しくても、以前から保有している受益者から見るとパフォーマンスの悪化になるわけです。
もともと私は銘柄選択は不可能という立場なのですが、仮に銘柄選択が一般論として可能であったとしても、追加型の場合には毎営業日正しくないと本当の意味では銘柄選択の効果がないことになるので、やっぱり、投資信託はどうなんだろうなと思いたくなります。
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