2013年3月7日木曜日

金利スワップの件、最高裁判決

知っている人は知っていた、福岡の金利スワップの最高裁判決が出てましたね。結論としては顧客側敗訴で、金融機関の側はほっと胸を撫で下ろしていることでしょう。

法律面では素人なのであまりエラそうなことは言えないのですが、この判決に汎用性があるのかというと、あまりそうでもないのかなというふうに(現状は)思っています。というのも、顧客側が、もともとの銀行の行為が不法行為になるといっている根拠は、契約締結の是非の判断を左右する可能性のある:

① 中途解約時において必要とされるかもしれない清算金の具体的な算定方法
② 先スタート型とスポットスタート型の利害得失
③ 固定金利の水準が金利上昇のリスクをヘッジする効果の点から妥当な範囲にあること

について説明していないからというのですが、①は簡単に計算できますし、②も「利害得失」と書くと難しいものの(少なくとも事案では)両方とも提案させて比較しているようです。②に関しては、顧客自らが目先の金利上昇がないと考えていたことまで事実認定されてしまっているようですから、なおさらです。で、金利スワップが至極単純な取引であるという印象を判事に与えることに成功したのでしょう、③も「自己責任よ」ということになっています。

想像ですが、①と②で銀行がひどい奴らだという説明を充分にしたつもりになって「こんなヒドい人達に僕たち騙されたんです」というノリが通用するという訴訟戦略だったんでしょうね。

どんな金融商品も、見た目は単純であっても実は奥が深く、デリバティブと名の付くものは単純な金利スワップでも真剣に考えると意思決定にはさまざまな知識が要求されます。それをきちんと理解してもらった上で、「ひどい」とか「騙された」ではなく、「本来であればこの程度の知識が要求されるべきである」「私にはこの程度の知識があった・この程度の知識しかなかった」「金融機関はこのギャップを埋める一定の義務があるのではないか」という議論が見たかったのですが、逆に言うと、その点については議論が尽くされたとは思えず、その意味では、民法の条文の解釈にずばっと切り込んだ判例ではなくて、特定の紛争にひとつ区切りをつけただけのようにも思え、まだまだ先は長いと思ってもいいのかと。

それにしても、最高裁が「少なくとも企業経営者であれば、その理解は一般に困難なものではない」と、企業経営者をすべて同列に扱っているのは結構衝撃ですよね。

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